Resolutionの“R”が付けられたM型初の高画素モデルである『ライカ M10-R』。1950年代にその性能の高さと描写力で、世界のレンズ設計の標準を引き上げたとすら言われるLeica標準レンズ伝説の1本『Summicron 50mm F2.0』。世代を超えた組み合わせはどんな画を見せてくれるのか。早速撮影に出かけてきました。
停まっていたブルーのクルマが印象的でファインダーを覗いていたら、飛び込んできたアクアブルーの車との組み合わせに咄嗟にシャッターを切りました。ライカは「瞬間的に撮る」というアクションに最もタイムラグがないカメラだと思っています。柔らかさと滲みで丸みがありつつも、しっかりと金属質の光沢や質感を感じることが出来るズミクロンの描写。解像力の高さだけではない、品の良さを感じます。
開放でも描かれる美しい輪郭線。ピントの合焦した部分にも柔らかいフレアが乗り、その場で取り込んだ光の色は画全体に優しく拡がっていきます。「低いコントラスト」もこのレンズにとっては魅力的な個性です。
『ライカ M10 MONOCHROM』とセンサーベースを共有している『ライカ M10-R』と、当時からモノクローム撮影において愛用されたという『Summicron 50m F2.0』。この一枚の中の光陰のバリエーションの豊かさに驚かされました。シャドウのグラデーションの滑らかさにはため息ものです。
反射が多い中、エレベーターのドアの線を捉えました。最高のスナップシューターと言いつつも、ライブビュー撮影が出来るという点も『ライカ M10-R』の長所。ピント拡大も駆使すれば綿密なピント合わせも容易に行えます。と言いつつもファインダーの二重像が合わさった時の快感は、ただただ写欲を掻き立てられます。
数本のレンズをカバンに詰め込んで、休憩がてらにレンズ交換をしてまた撮影に臨む。ライカのコンパクトなシステムはまるでカメラが身体の一部になったかのような一体感が魅力です。ちなみにこのレンズは『ヘクトール L73mm F1.9』、次回はこちらで撮影した写真をご紹介いたします。
逆光のフレア、ゴーストはオールドレンズにとって語らずにはいられない個性。低コントラストだからこそ楽しめる写し方です。
カラーにおいても階調表現、影の透明感など惚れ惚れする写り。何気ない日常も物語の一節であることを改めて気づかされます。
ライカで写真を撮ると、空や鳥を撮ることが多くなります。空は最も光が遊んでいる場所だからかもしれません。
今回のカットでは唯一絞ったカット。絞ることで輪郭がキュッと締まりまさに現代に劣らない解像力を見せてくれます。ただ画自体が硬くなってしまう訳ではないのもこのレンズの魅力です。
今もなお愛される伝説の標準。
1950年代に発売された『Summicron 50mm F2.0』と現代の最新機種である『ライカ M10-R』との組み合わせにも関わらず全くの違和感を感じないライカの一貫したカメラデザイン。所有する喜びは現代もなお引き継がれています。『ライカ M10-R』の性能をフルに活用するのであれば、高性能な現代のMレンズを付けるのが正しい選択肢だと思います。しかし、このカメラの魅力は画素数だけではありません。さらに向上したディテールの描写力、より広くなったダイナミックレンジは柔らかな階調を持つオールドライカレンズの個性をさらに引き出してくれていると実感することができました。そして伝説の標準レンズとも言える初代ズミクロン50mmを「私の一本」と称するカメラマンが多いのも頷けます。ぜひこの写りを楽しんでいただきたいです。
Photo by MAP CAMERA Staff