歴史に刻まれる1台。それは突然の発表から始まりました。
今や“11”のナンバリングまで刻まれたM型ライカ。あえて赤いロゴバッジを外し、主張をしないという選択をした「P」(プロフェッショナル)がついに登場しました。今回はその外観だけでなくこれから先も進化し続けるデジタル社会において非常に有意義な意味を持つ機能が搭載されました。
デジタルカメラとして世界初、画像にメタデータを付与することで画像の真正性を担保し、著作権を保護する機能。その名も「Leica Content Credentials(ライカコンテンツクレデンシャル)」です。デジタル技術が普及してきた昨今、加工や偽造されたデジタルコンテンツが出回ったことで写真家・フォトグラファーにとって何より大事な「作品」の証明が難しく、その信憑性が揺らいでしまう可能性が出てきました。『M11-P』はその不安を解消し、作品の証明を示すことが出来る機能を搭載したのです。
「真正性の証明」。カメラの歴史そのものを歩んできたと言っても過言ではないライカが「写真」の証明を示す最初の一歩を踏み出した、ということに胸が熱くなるとともに敬意を表したいです。写真を撮る者にとっての「写真」の価値や意味を大切に扱える『M11-P』。フォトプレビューをぜひご覧ください。
わずか30cmという最短撮影距離で撮影可能な『アポズミクロン M35mm F2.0 ASPH.』。『M11』同様の6030万画素裏面照射型CMOSと画像処理エンジン・LEICA MAESTRO IIIの組み合わせは鮮やかな花の色を正確に写し出してくれます。ライブビューでのピント合わせも非常にスムーズです。
クラシックシリーズとして復活した『ノクティルックス M50mm F1.2 ASPH.』。暗くなってきてから使おうと思っていたのですが日中に絞って撮った画を見たくて一枚。周辺光量落ちの改善はもちろん、ビルの隅々までシャープな画で非常に驚きました。ある意味で『LEICA M11-P』の高画素との組み合わせだからこそ見えたもう一つの真価かもしれません。開放絞りの色気を楽しむだけではないのだと改めて実感します。
オールドレンズの滲みや特色もしっかりと見せる懐の深さも『LEICA M11-P』の魅力です。
2012年に発売されて10年の時が経った今もなお「究極の標準レンズ」と評され愛される『アポズミクロン M50mm F2.0 ASPH.』。開けて良し絞って良し、カラーでもモノクロでもこのレンズは素晴らしい写りを見せてくれます。
日が傾き出した時間帯、再び『ノクティルックス M50mm F1.2 ASPH.』に変えて撮影してきました。夕暮れ時の陽を浴びたガラス窓越しの車の座席、イメージしていた開放絞りの写りを良い意味で裏切ってくれました。オールドな柔らかさを醸しつつ、しっかりとピントの線が被写体を引き立ててくれています。
光が反射したフロントガラスの光沢感とピントのキレが実に素晴らしい。『ノクティルックス M50mm F1.2 ASPH.』の描写に改めて感動させられました。使い込んでいけばいくほどに印象が変わっていく、振り回されてしまうけれど夢中になってしまうそれはまさに魔性といっていいでしょう。
このトロンとした画も『ノクティルックス M50mm F1.2 ASPH.』の魅力の一つです。シャッター音の小さい『LEICA M11-P』はどんなシチュエーションでも人目を気にせず撮影することが出来ます。『M10-P』ではシャッター音の静音化という変更点がありましたが今回特に変更がなかったというのも『M11』で既に静かなシャッター音になっているからということだと思います。周りを気にせず撮影に没頭できるというのは間違いなく良いカメラの条件です。
歴史を刻み、歴史に残る
今回、背面の液晶が「サファイアガラス」に変更されていることが大きな変更点ですが、小さな変更点として液晶モニター上の刻印がM10-Pと同様に「LEICA CAMERA WETZLAR」の文字が省かれています。シンプルなデザインに仕上げるために極力の要素を削っている感じがして個人的にはとても好感を持ちました。こういった小さな一つ一つの要素もコンセプトに沿った造りなのだとポジティブに捉えてしまうほどに、筆者は今回の『M11-P』というカメラをリスペクトしてしまったわけなのですが、きっとこの思いは沢山のユーザーにとっても共感できるものではないでしょうか。これから先も続く写真の歴史を正確に刻み「写真の真正性」の証明を歴史上初めて行ったカメラ。何十年経った後も「このカメラ」がその始まりだったと語り続けられるということを想像するとやはり胸が熱くなります。歴史にその名を残す『M11-P』。ぜひともその手に。
Photo by MAP CAMERA Staff