LEICA Summarex 8.5cm F1.5 + LEICA SL2
2020年09月04日
『ライカ SL2』とオールドライカレンズで写す。今回は1943年に発売されたハイスピードレンズ『ズマレックス L85mm F1.5』です。
当時としては非常に明るく、戦中の偵察用途として生産されたとのこと。初期型は黒鏡胴のモデルで、戦後今回使用したクロームメッキになったということです。開放絞りの時だけ現れるリング状の虹のゴースト、柔らかく滲みを帯びた写り、階調性に優れたトーンの出方がとても魅力的です。
木漏れ日に向かい「玉ボケ」を狙ってみました。左上の「玉ボケ」に包まれた小さな葉っぱは開放絞りにも関わらずシャープな像を結んでいます。
淡い滲みが光と陰の絶妙なコントラストをしっとりと描きます。朝や夕方の光を開放絞りで撮りたくなるレンズです。
トーンのグラデーションがとても繊細に描かれるので、モノクロームで世界を覗き込みたくなります。
前後の距離感や立体感が融け合った1枚。ふんわりと滲む写りは撮るたびに癖になります。
低いコントラスト、渋めの発色。夜間の少ない光量でも撮れるハイスピードレンズだからこその世界です。
交差する人影が重なったシルエットの世界。明暗差の激しいシーンでも、このレンズなら白が滲むだろうと思えたからこその1枚です。
光に透けた髪の毛の描写がとても美しいです。開放絞りだけの独特な描写。
開放絞りで撮ったときの全体的な滲みが嘘のように、たった0.5の絞りだけで像の結合が飛躍的に向上します。周辺に収差は残りますが、現代にも通じるようなヌケの良さと立体感です。
こちらは1枚めのシーンの別カットですが、開放絞りで現れたリング状のゴーストがなくなります。こういった変化も踏まえ開放絞りで撮るのか、どのように写したいのか、コントロールするのが楽しくも悩ましいレンズです。
こちらはF4まで絞った一枚。硬質な被写体の質感も、1枚1枚異なる岩のコントラストもしっかりと描写しています。オールドレンズの素振りを全く感じさせない素晴らしい解像力です。
夕陽が差し込む背景の硬い光と、前面の滲みが残る水面の描写の違いが印象的だった1枚。実は意図せずAPS-Cサイズにクロップしてしまった1枚ですが、高画素機の『ライカ SL2』との組み合わせなら使い方の一つとしては良いかもしれないと思いました。
最高の王
現在ライカの歴史において85mmという焦点距離も「ズマレックス」という銘もこの一本のみ。しかも総生産数は4,342本のみというとても稀少なレンズです。5群7枚という贅沢なレンズを使った白銀の鏡筒と、ネジ込み式の凝った仕様のレンズフードの外観はラテン語で「王」という意味を持つ「rex」の名にふさわしい造り。軟調なトーンから硬調なトーンまでこなす最高の写りは、ぜひ一度体験してみていただきたい一本です。
Photo by MAP CAMERA Staff