今回紹介するレンズは2024年7月17日発売の『Voigtlander COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM』。開放F値をF2.2にすることでマウント面からの全長を30mmの短さに抑えた標準レンズです。レンズ構成は異常部分分散ガラス3枚を含む6群7枚、レンズフードはストレートタイプとなっておりレンジファインダーカメラの距離計窓を遮ることのない形状になっています。距離計連動範囲は0.7mですが、最短撮影距離は0.5mを実現しています。マウントアダプターの使用による撮影も想定してあり、距離計連動式カメラの枠を超えて様々なプラットフォームでの撮影にも対応しているとのことです。実際に触ってみると確かにコンパクト。それでいてフォーカシングレバーは指がかりが良く、撮影していないときでもなんとなく動かしたくなるほどスムーズに動かせます。重量も135gしかなく、普段使いのレンズとしてピッタリな一本です。
室内でしたがホワイトバランスを晴天にして暖色寄りに、少し妖しい雰囲気にしました。開放絞りの周辺光量が落ちるのを活用して、中央の明るいところを際立てました。照明と天井の境目の立体感や装飾の細部までシャープな仕上がりです。
階ごとの手すりが段々に入るようにして、手前に入れたボケが邪魔にならないかを見てみました。個人的には好きな部類で要素として取り入れたい感じのボケでした。金属部や光を反射する艶のある手すり部分とそうでない(乾いた)ところとの描き分けがしっかりしているのも良いです。
開放絞りでは周辺光量落ちがありますがF2.8から少しずつ改善されます。許容できる範囲は個人によりますがF5.6まで絞れば、ほぼほぼ気にすることはなくなると思います。
驚くほどシャープな写り。なぜ驚くほどかというとこれが最短撮影距離で撮ったものだからです。普通は少しは滲んだりシャープさに影響が出たりするものですが、それを感じることがありませんでした。
とても明るく、パキッとした色を出してくれます。撮影当日はときおり小雨が降ってくるような薄曇りの天気。陽射しのようなわかりやすいハイライトはあまりなかったのですが、「Voigtlander COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM」はそんな環境でもその場のハイライトを抜き出すのがとても上手なレンズだと思いました。コントラストが高いという感じよりも、光を読む力に長けているという印象。個人的な感想ですが。
こちらもまた近接撮影。さきほどは面で撮ったので少し分かりづらかったかもしれませんが、やはりピント面はかなりシャープです。模様があるところのボケは少しクセがありますが基本的に素直なボケだと思います。
近接でも描写性能が良いことは十分わかったので、休憩のひとときを少し離したところから撮影したカットにしました。後ボケもきれいに溶けてくれるし、前ボケも自然な描写です。
さきほどハイライトを抜き出すのがうまいと言いましたが、その力を最も強く感じたのはこの時間帯でした。昼間から変わらずどんよりした空の夕暮れ時。撮れるものを見つけるのに難儀していたなかでの救いの一枚で、とても信頼を置ける存在になりました。
小さい、軽い。よく写る。
よく写る。という言葉には色んな描写性能が含まれていると思いますが、このレンズは「シンプルにシャープで端正な画が撮れる」のよく写るです。やはり多少はクラシカルな画が出てくると予想すると思うのですが、良い意味で裏切られました。ただシンプルによく写るということがこのレンズ最大の魅力ではないかと思います。難しいことは考えずに写真を撮る楽しさに浸りたい、そんなに撮りたいわけじゃないけれどカメラは持っていきたい。そんな息抜き用のレンズとしてもピッタリです。小さい、軽い。よく写るの『Voigtlander COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM』は撮影者に寄り添う良玉でした。ぜひマイ50mmレンズのラインナップの一員に。
Photo by MAP CAMERA Staff