Go To トラベルキャンペーン、活用しております。もともと旅好きの人は勿論、交通費や宿泊費が嵩むことで二の足を踏んでいる人にとっても、旅をするには有難いキャンペーンなのではないでしょうか。もちろん自他を守るためのマナーは守りつつ、私も旅好きの一人として様々な都市の活性化に役立つことができるなら幸いです。
さて、前回の【紅葉編】に引き続き【BRONICA S2】と、レンズは【Nikkor-P 75mm F/2.8】を使用した作例を載せています。フィルムも前編と同じく【FUJIFILM PROVIA 100F】です。
今回はいよいよ星景の撮影をしていきましょう。
まず、今回の撮影に際して勉強した星景撮影についての知識を少しだけご紹介いたします。私自身もフィルムカメラで撮影することは初めてだったため、人に聞いたり、いろいろなwebサイトを眺めたりしながら断片的に知識を集め、なんとも見様見真似で撮影しました。デジタルカメラで撮影する時とは少しだけ勝手が違いますので、参考になれば幸いです。
少々長くなりますがお付き合いください。
まずは、フィルムでもデジタルでも必要な準備から。
- 星景撮影に必要なもの
・バルブ撮影ができるカメラ
・三脚
・無線やケーブルのレリーズ
・身の安全を守るライトや防寒装備(一番大事です)
バルブ撮影とは、シャッターボタンを押している間ずっとセンサーまたはフィルムに光を当て続ける事ができる機能です。暗い景色を写す際は長い間光を当てる必要があるので、この機能が付いたカメラが必要です。そして、その間カメラ自体が揺れてしまっては、写真がブレてしまうため、十分に固定できる三脚も必須です。また、カメラの揺れはシャッターを切るときにも発生するため、リモートでシャッターを切ることのできるリモコンや、ケーブルレリーズも必要となってきます。
フィルムカメラの場合はケーブルレリーズを使用する方法が一般的なようです。(使用できるものかどうかを準備の段階で一度試しておくことをお勧めします。撮影直前に使えないことが判明しても、おそらく現地調達は難しいものです。)
そして何より大切なのが身を守る装備と準備。いい写真を撮影し、人に見せるまでが星景撮影です。天気予報を必ずチェック、十分すぎるほどの防寒具を用意、撮影スポットの予備確認、場所によってはクマ除けの鈴や、当然近隣の方への配慮も必要です。暗ければ暗いほど魅力的な星景撮影ですが、その分様々なリスクも伴う事をどうか頭の片隅に入れておいてください。
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準備ができましたら、いざ撮影を行いましょう。
撮影するにあたって、フィルムカメラとデジタルカメラでは大きく分けて2つの点で大きく異なることがあります。
1つ目:相反則不軌の問題
理論上、写真の明るさは絞り値とシャッタースピードに正比例して決まるという法則があり、このことを相反則と言います。しかしフィルムカメラでの極端に長い露光では、同じ条件で撮影したデジタルカメラの写真より暗いものになってしまいます。このことを、相反則が乱れることから「相反則不軌」と言います。(超高速シャッターでも同じことが起こります)
たとえばデジタルカメラで10分間のシャッターを切れば星が写る環境の場合、フィルムカメラでは10分間では足りず、それ以上に長い時間シャッターを開いている必要があるという事になります。さらにその増やすべき露光時間も、その日の周辺環境や月の状況、気温、フィルムの種類でも異なってくるというものですからさあ大変。こればかりは経験してみないとどうにもならない世界のようです。
初チャレンジの私自身もこの法則を完全に理解できていません。
初めての挑戦、今後の糧にしたいと思います。
2つ目:星に合わせるピント
星は遠く離れた地点にあります。フォーカスは無限遠の位置でピントが合いますが、星景撮影ではその暗さ故、オートフォーカスで合わせることは難しいと思います。そのため必然的にマニュアルフォーカスでピント合わせを行うことになります。
その際、デジタルカメラであればライブビューやテスト撮影をすることでピントが合っているかどうかの判断ができますが、フィルムカメラではそう簡単に確認はできません。
そこで、準備の段階で使用するレンズの無限遠の場所を把握しておくのをお勧めします。レンズの種類によって、回し切ったところがちょうど無限遠のレンズと、少し戻したところで無限遠が出るレンズがありますので注意が必要です。無限側に回し切って撮影してしまったがために星のピントがずれていた…なんてことも経験したことがあります。
その他のピント合わせの方法として、フィルム装填前に裏蓋を開け、摺りガラスに撮像を写して確認する方法や、ナイフの刃を使って光の束を切って確認する方法などがあるようですが、暗い撮影環境下では非常に難しく、結局、あらかじめ確認していた無限遠の位置までヘリコイドを回して撮影しました。
この他にも、(デジタルカメラや、電子制御のカメラでは)バッテリーの持ちを気にしなければいけなかったり、動き続ける星を線のように伸ばさないよう撮影するには赤道儀が必要だったり、ソフトフィルターを使った方が綺麗に写ったり、と、気にするべきことは実はまだまだたくさんあります。しかし、少なくとも今回述べた撮影方法でこれからお見せする写真は撮影することが出来ました。
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お待たせいたしました、それでは写真を見ていきます。
現像を受け取り、ようやく不安が払拭されました。初めてにしてはよく撮れたのではないかと思います。リバーサルフィルムなのでライトに透かして撮像を確認することもでき、感動的な出来です。
【 FUJIFILM PROVIA 100F / 1000s / F2.8 】
撮影はすべて絞り開放で行い、何分でどの程度写すことが出来るか想像もつかなかったので、5分から20分ほどの露光時間で数枚を撮影しました。もっと多く撮影したかったのですが、いかんせん1枚にかける時間が長いため1泊2日では数枚しか撮ることが出来ませんでした。(夜中ずっと起きていればたくさん撮ることができますが、お宿にあった炬燵がそう簡単に逃がしてくれるはずもなく…)
【 FUJIFILM PROVIA 100F / 300s / F2.8 】
5分間のシャッターで撮影してもここまで星々は伸びてしまいます。ぼーっと眺めていると、星が動いていることなど肉眼ではまず体感することはできませんが、こうして撮影すると一目瞭然です。以前デジタルカメラで撮影した際も、1分間露光しているだけでも点ではなく短い線で写ってしまい、何度も試行錯誤したことを覚えています。
10秒や20秒では点に近い形で写る反面、画像は暗いものに。5分も10分も開いているのはなんだか不安…。かといって、気楽に待てる1分や2分では手ブレ程度に少しだけ流れてしまい、中途半端な感じ。「なんで1時間で15度の自転周期なんだ…」と地球を責めますが、一日が長くても短くても生きづらくなってしまうので我慢しましょう。
【 FUJIFILM PROVIA 100F / 900s / F2.8 】
毎年この時期は星を撮りに山間部へ出かけますが、そのたびに使用していたのは20mmから30㎜の広角域のレンズでした。星座や狙っている星があるわけではなく、星空が奇麗な風景を撮影することが目的だったため、空全体を出来る限り広く写さねばならない。という思いから広めのレンズを選択していました。また、広く写るレンズほど数十秒から1分程度の撮影では星の流れが気になりにくいという利点もありました。
しかし今回、換算約42mmという焦点距離での撮影に挑み、フレーミングに自由度が増したうえ、長時間露光による星の流れを綺麗に収めることができました。今後の撮影スタイルにも大きく影響を与えそうな経験です。
都心から数時間で行ける場所に、こんなにも綺麗な星空は広がっていました。
あともう1時間足を伸ばせばさらに綺麗な夜空が迎えてくれることでしょう。
きっとその近くには温泉もあるはずです。
慌ただしく過ぎゆく2020年。
カメラと着替えだけ持って、夜空と温泉をゆったり満喫しに行くのも良いかもしれません。