なんでもっとはやく動きださなかったのか、と自分を責めることの多い季節です。
この日も何を撮ろうかふらふら歩いているうちにあっという間に陽が落ち始めました。
少し焦る気持ちで上野駅周辺を散策する筆者が持ち出していたのは、SONY α7ⅢとCONTAX Planar T*50mm F1.4 AE。
ずっと使ってみたかったオールドレンズはCONTAXのものを選びました。
CONTAX Planar T*50mm F1.4 にはAEとMMの2種類が存在しています。AEの方が古く、MMの方が新しい。後者はプログラムモードやシャッタ―優先モードに対応し、絞りの形が変わりました。
そわそわしながら出会った”いい感じ”のカーブ。
語彙がないと言えばそれまでですが、「なんかいい感じ」という感覚を大切にしたくて日頃からよく写真に収めることがあります。
あと数歩このカーブに沿って歩いたらより濃く夕焼けが見えそうな期待感を持ちつつ、このくらいの位置で見る風景も何だかいい感じなのです。
ピント面、少し甘いですがそれもこの期間帯のぼんやりとした空気感を表現してくれてるように感じます。
不穏な風が吹き、これから一事件おきそうな予感のするボケ味。
あたりも暗くなりはじめ人通りも少なく、ちょっと怖いかもしれない、と感じながらファインダーを覗いていたのを思い出します。
これが手裏剣ボケか!
開放から少し絞ると現れる手裏剣ボケです。今回筆者がMMではなくAEのレンズを選んだのはこのボケを見てみたかったというのが大きな理由のひとつでした。
この手裏剣ボケが出ることからMMと比較したときにこちら選ばない方の多い印象もありますが、筆者はしっかりと楽しみました。
角は丸みを帯びて、武器として誰かを傷つけることはあまりなさそうな可愛らしい手裏剣です。
大噴水を囲うように咲いていたチューリップ。
チューリップに似合うのは晴れの日や春の空気だと思っていましたが、薄暗い夕方との若干の違和感も神秘的です。
なにより、溶けるようになめらかな水面の質感に「これはすごく好きなレンズだ」と感じました。
ファインダー越しに見ると、何気ないベンチがいつもより魅力的に見えるので不思議です。
奥に佇む東京国立博物館の灯りと相まって、艶々と輝いて見えます。
すっかり夜も更けてしまいました。また少し歩いて上から線路周辺を撮ってみます。
雰囲気たっぷりの柔らかい描写が多かったので、想像以上のシャープさに見たくないものまで見えてしまいそうで少しドキドキさせられました。
夜の始まりを告げるような近未来的な雰囲気まで捉えてくれるレンズ。また違う可能性を知って、この日はもう暗いので帰路につくことにします。
いかがだったでしょうか。
この季節、特に暗くなる時間帯は寒さからせかせかと街を歩いてしまうことがほとんどですがマニュアルフォーカスでじっくりと冬の景色を楽しむのも悪くありません。
こんなときだけはいつものんびりしてしまう自分を責めずにいようと思います。
初めて使うオールドレンズ、CONTAX Planar T*50mm F1.4 AEを選んでよかった。
みなさんもぜひお試しください。