【HASSELBLAD】手の中に鮮明な思い出を収める
桜の季節が終わり、あっという間に気温が初夏のように上がってきました。
汗ばむ天気で重たい機材を持ち運ぶのが少しためらわれる中、
手の中に収まるほど持ち運びがしやすい中判デジタルカメラでお台場に出掛けて参りました。
撮影機材はHASSELBLADの『907X & CFV 100C』と純正レンズの『XCD 28mm F4 P』です。
1億画素の中判センサー搭載のカメラはいくつかありますが実は今回、筆者は初めて使用します。
レンズも普段50mmをメインに使っているため今回22mm相当(35mm判換算)のレンズを使うのもずいぶん久しぶりです。
撮影時に絞りの調整と露出補正をしていますが全てJPEG撮って出しになります。
画面中央奥に変わった形のビルが見えたので思わずシャッターを切りました。
絞りは小絞りボケによる解像感の低下の影響を考えたのと、広角レンズなので
被写体と距離をとればさほど絞らなくてもパンフォーカスになるためF11に抑えました。
日差しが強く画面にヒストグラムを表示しても黒つぶれしてるかもしれないと心配でしたが、
PCに写真を取り込んで明部から暗部までしっかりと描写していて驚きました。
木々や看板、ビルのガラス窓等を拡大するとどこまでもディティールがでてきます。
クマバチが夢中でツツジの花に受粉するため飛び回っていました。
『XCD 28mm F4 P』の最短撮影距離が22cmのため、絞りを開放にしてできる限り近づけば
広角レンズでも中判センサーの大きさの力で背景をボカし被写体を目立たせます。
100%等倍にするとクマバチの足や体に花粉が付いているのが分かり、ツツジの花びら1枚1枚のしっとりした質感が感じられます。
『907X & CFV 100C』はボタンが少なく操作がとてもシンプルです。
3.2インチの大きな液晶でピントを合わせたいところをタッチし、シャッターボタン周りの
ダイヤルで絞りを、907X右側面下部にある小さなボタンで露出を補正します。
筆者は基本的にISOオートで撮影していますが明るい日中のためベース感度のISO64になっていました。
あらかじめ画面設定でヒストグラムや水準器を液晶画面にオーバーレイ表示できるのも便利です。
普段、液晶固定式のカメラで撮影しているのでチルトモニターは構図の自由度が上がります。
上の2枚は画面を大きくチルトして撮影しました。
なかでも2枚目は『XCD 28mm F4 P』の逆光耐性を見るために撮影しました。
太陽と像の輝度差がかなりあるので撮影時は像が黒潰れしたと半ば諦めていましたが、
PCで見たら青銅の質感やディティールがばっちり残っていて感動しました。
太陽を包むきめ細やかな雲の質感が見事でレンズフードを付けておらず、ハレ切りもしていませんが
目立つゴーストやフレアもなく、肉眼で直接太陽を見るより綺麗に感じます。
4:3の中判センサーだと22mmの広角でも3:2の時より横に広がりすぎず、収まりが良く筆者は好みです。
何気なく撮った1枚が水や砂、空、構造物の質感を鮮明に記録し、その場の空気まで写真に残す。
中判センサーならではの広い階調やダイナミックレンジもリアルな描写に欠かせません。
コンパクトなボディとレンズでここまで写っていたのは舌を巻きました。
暑さの中、撮影に疲れ撮った写真を見返しているとふと思いました。
撮影情報をオフにして写真を指でスライドするとまるでブローニーのポジを見ているようだと。
コンパクトなカメラボディに使い勝手を考えた上でギリギリまで液晶モニターを大きくして、
かつ下部のボタンを文字にせず、〇や✖の記号にしたのは撮影したあと、余計な情報を視界に入れず
写真に集中して見る楽しさを味わってほしいという作り手の思いを筆者は感じました。