【Leica】Mを愉しむ ~M11でレンズを愉しむ~#4 Summaron M28mm F5.6
きたる2月20日、MapCamera本館1階のLeica Boutique MapCamera Shinjuku が9周年を迎えます。
これもひとえに皆様の厚いご愛顧があったればこそ、心より御礼申し上げます。
9周年を迎えるにあたって、今回ライカブティックでは「愉しむ」をコンセプトに様々なイベントをご用意いたしました。
毎年ご好評いただいているスタッフによる連載ブログですが、今回は『Mを愉しむ』というテーマのもと、「M11でレンズを愉しむ」と「M10シリーズを愉しむ」という豪華2本立てで進行させていただきます。
今回のLeica Boutique MapCamera Shinjuku 9周年を祝福するかのような絶妙なタイミング、1月21日に発売を開始したLeica M11。
M型デジタル待望の新製品とあって、ライカファンは勿論、多くのカメラファンから大きな注目を受けての登場でした。
そこで今回マップカメラスタッフが持ち回りで試写。そのインプレッションを各々の観点で語らせていただきます。
最新鋭機 M11に組み合わせたいレンズを各自でチョイス。その描写を皆様にお届けします。
時代を彩る銘レンズたちが、6000万画素という超高画素・高精細なカメラを通してどんな表現を見せてくれるのか、是非お愉しみください。
今こそ深遠なるライカの世界に…
・・・
M型ライカを手にすると、きれいな自然の風景よりも、つい古さを感じるような街並みに身を置きたくなります。
憧れのライカ使い達が昔のパリや東京の人並みにまぎれ、その一瞬を切り取った写真を飽かずに見てきたからかもしれません。
そこで今回撮影地に選んだのは浅草です。
仲見世の雑多な感じすらするお土産物屋の店先や、一本通りを外れた小道の古びた風情など、古き良き時代の情景が撮れそうな気がしたからです。
高精細なM11で昭和感漂うレトロな街並みを撮影すると、さてどうなるか? そんな興味もありました。
頭を悩ませたのは、装着するレンズの選択。
第一に腕の問題があるのですが、それに加え最近眼も… M10に50mm以上のレンズを装着するときはビゾフレックスが必携アイテムとなってしまいました。
今回は残念ながらビゾフレックス2の用意はなく、6000万画素という超高画素機でのピント合わせに全く自信のない私は、広角28㎜レンズをお供にすることにしました。
ライカの現行28mmレンズには、明るい順にSummilux M28mm F1.4 ASPH.、Summicron M28mm F2.0 ASPH.、Elmarit M28mm F2.8 ASPH.、Summaron M28mm F5.6 という4本が用意されています。
なんて豪華なラインナップ!
いずれ劣らぬ銘玉ですが、果たしてどれほど描写の違いがあるのか? 以前から気になっているところでした。
今回はその中から最も明るいF値を誇るSummilux と、逆に最も暗いSummaronの2本を持ち出しました。明るさにして4段の差があるレンズです。
いざ浅草へ。混雑を避けるため、平日を選びました。
こちらの写真はSummaron M28mm F5.6で撮影したもの。
さすがに画面一番右下、看板の文字のピントは甘くなりましたが、それ以外はすべて鮮鋭な写り。
さらに色乗りもこのレンズならでは。特に大提灯の赤は鮮やかでありながら派手な印象は与えず、落ち着いたしっとり感すら感じます。
もともと1955年から1963年までスクリューマウントのレンズとして製造されていたSummaron 28mm。
絞り開放から緻密な描写表現をする銘レンズとして、ライカファンに広く認知されていました。
今回のSummaron M28mm F5.6は、その銘玉の構成を変更することなく忠実に再現した復刻版。独特のコンパクトなフォルムと相まって人気の高いレンズです。
雷門の前で撮影していてふと気がついたのですが、前回撮影に訪れたのは数年前のこと。
その頃の浅草は外国人観光客であふれんばかりで、ここ雷門前は特にその最たるもの。行きかうことばも外国語ばかり、日本語が全く聞こえないような状況でした。
それが今は… たった数年でこうまで変わるものかと、感慨深いものがありました。
そして仲見世通りへ。
Leica M11 + Summaron M28mm F5.6
明暗差のある情景でしたが、手前の提灯が適度な明るさに、そして明るい通りも奥の暗い店中も画を残してくれました。
提灯に破れたものがあるのは後で画像を見て気づきました。
撮影しながら店並びに違和感を… 「なんか小洒落た店が多くない?」
前に訪れた時は、ペラペラの浴衣を着て不可思議な鉢巻を巻いたマネキンが店先に立つ、ちょっと怪しげなお土産物屋さんが軒を連ねていたのですが…
外国人観光客の代わりに通りを闊歩するのは、シニア世代ではなく、意外にも若者のグループが目立ちます。
それに合わせ食べ歩きのできるような揚げ物や串物を売る小綺麗なお店がずらりと。
ところどころに散見するシャッターを下ろした店が、以前土産物屋さんがあったと思しき所か…
長く当たり前のように続いていたものが、こんなにも短期間で変わってしまうとは…
そんなわけで、私が狙っていた情景はここにはないようです。先を急ぎましょう。
Leica M11 + Summaron M28mm F5.6
Summaronの描写力が見たくて、撮影を予定していた1枚。
青空に盛大に周辺光量落ちが出ましたが、それがかえって中央の門の存在感をドラマチックに浮きだたせています。
そして画の圧倒的な緻密さたるや。PC画面上でどこまで拡大しても甘くならず、瓦1枚1枚まで認識できます。
全長2cmにも満たない小さなレンズがこの描写、恐ろしい限りです。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
ここでSummiluxに。まずは開放での撮影。
やはり開放ではSummaronの緻密さには及ばない… と思いきや、かなりの描写です。違いが明らかになるものと想定していただけに、正直困った…
どうやらM11はこちらがこれくらいだろうと抱いていたレンズ性能に対するイメージの、さらに一段も二段も上を示してくれるようです。
敢えて詳細に見ると、左下の木の枝1本1歩や「浅草寺」と書かれた額の周囲に張られた鳥よけの網など、Summaronに及ばないところはあるものの、大きく拡大してわかる程度です。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
ではとばかりに、SummiluxをSummaronと同じF5.6まで絞ってみました。
手前の枝の描写はSummaronに引けを取りません。周辺光量落ちも軽減され、Summaronよりすっきりした印象。
ただ一つ一つのものの輪郭はSummaronの方がより鮮明に描写されているようにも感じます。
また赤の色乗りもSummaronの方がコッテリしています。その分被写体の重厚感が増しているような気がします。
すっきり抜けた爽快感を取るか、ドラマチックな重厚感を取るかといったところでしょうか。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
Leica M11 + Summaron M28mm F5.6
どうせなので、もう1カット。どちらもF5.6に合わせました。
ここでも先に述べた感じになっています。
Leica M11 + Summaron M28mm F5.6
ここまでくると目で見ている以上の鮮鋭度を感じます。
せっかくなのでおみくじ引いてみました。
なんと「大吉」! 撮影の成功が予感されます。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
平日ですが、着物姿の若者がやけに目立ちました。浅草寺、こんなに華やかだったかな…
後に続くかたちで私もお参りを。
お堂の中にも若い方たちが多く、お賽銭を投じた後にパンパンと柏手を… いえ、ここは「浅草寺」、お寺なんですが…
そうこうするうちに1時間以上が経過。バッテリー残量を確認すると、何と5%ほどしか消費していませんでした。
M10シリーズから変わった新型バッテリー、評判通りのもちの良さです。
ビゾフレックス2を装着した時の消費具合はいかがなものか、大変気になります。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
こういう撮影はSummiluxで。少し絞ったおかげで背景も自然なボケに。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
「鳩ポッポ」の歌碑の鳩を絞り開放で。
最初はファインダーでピント合わせを試みたのですが、中央で合わせた後構図をずらし勘でピントも動かすと… ダメでした。
フィルム時代はこれでもいけたのですが、6000万画素は甘くなかった… 背面液晶での撮影に切り替えました。
タイトル画の写真は2段ほど絞っています。M28mmの中でも、絞りによる描写の変化を最も愉しめるレンズです。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
陽の当たりが強く、眼で見た風景はもう少し白っぽいです。M11とSummiluxの組み合わせは、実際の色を教えてくれます。
境内を抜け花やしきへと向かうと、なんと改装による休園期間。それに合わせ周りのお店も軒並みお休みに。
おかしい、「大吉」じゃないのか… その後はひたすら街を彷徨い歩くことになりました。
Leica M11 + Summaron M28mm F5.6
番傘の赤と紫、提灯の赤と白、落ち着いた色乗りの良さがやはりSummaronの魅力。ピントの深さも感動ものです。
Leica M11 + Summaron M28mm F5.6
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
鮮やかさ、被写体の浮き上がり感を愉しみたいならSummilux。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
Leica M11 + Summaron M28mm F5.6
再び境内に戻ってきたところで空を見上げると飛行機雲が。
何ともドラマチックな周辺減光。そしてわかるでしょうか、飛行機が。ゴミではありません。
Leica M11 + Summaron M28mm F5.6
本当に着物姿の若い方の多いこと。私のイメージしていた浅草からは随分変わってしまいました。
そのうちTVなどで「若者の街、浅草」なんて紹介されるようになるかも…
いえいえ、まだ浅草にもディープな所はありました。帰りがけに思い出し、「浅草地下商店街」へ。銀座線の改札口があります。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
かなりの暗さ。ここはやっぱりSummiluxの出番です。
Leica M11 + Summilux M28mm F1.4 ASPH.
モノクロモードでも。締まりのある黒、そして豊かなグラデーション。地上でも使えばよかったと最後に後悔しました…
結構な長時間浅草を彷徨いましたが、M10-Rより130グラムも軽量化されたM11 ブラックペイントの恩恵を十分に感じることが出来ました。
細身の革ストラップを付け首から提げて歩くこと4時間余り。
コンパクトなSummaronは勿論ですが、広角Mレンズの中では大ぶりなSummiluxを装着していても首が痛いと感じることは全くありませんでした。
軽くなった分シャッターのショックが大きくなったかというとそんなこともなく、フィルムライカを思わせるような控えめな感触が手に心地よかったです。
またバッテリーのもちも非常によく、結局30%程度の減りで撮影を乗り切れました。
時間も疲労も気にせず撮影に打ち込める、まさにスナップシューティングを愉しむためのカメラだと感じました。
次回もお楽しみに。
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