みなさま、山は好きですか?
私は登るのも撮るのも好きです。
山岳写真の歴史を振り返ると、専ら大判フィルムや中判フィルムでの撮影が主とされてきました。
今も昔もセンサーの大きさがモノを言い、センサーが大きければ大きいほどより多くの情報を一枚の写真に収められるからです。
現代でもそれは変わらず、スタジオ撮影や建築写真の第一線では中判デジタル機が活躍しています。
最初は登山記録を残す為にカメラを持って山に登っていましたが、いつしか「より美しい写真を残したい」という思いが芽生え、使い勝手の良いSONY αシリーズを使用してきました。
今回は機会に恵まれ、PHASE ONE IQ3 100MPと共に奥秩父山系に登ってきました。
そして本日8月11日は国民の休日「山の日」です。
まだまだ蒸し暑い日が続きますが、雲上の写真を見て気持ちだけでも涼やかになっていただければ幸いです。
F2.8 SS1/80 ISO100
夜明けと雲海を撮るため夜のうちに大弛峠にアクセスし仮眠をとります。
アラームに起こされ、登山靴に足を入れザックを背負い起床から10分で出発。日の出は待ってくれません。
今回はPHASE ONE IQ3 100MP + AF80mm F2.8 + 645DFと一緒に登山。カメラを撮るカメラ兼予備機としてSONY α7RⅢも持っていますが、結局使ったのはサムネイルの1カットのみでした。
ヘッデンを頼りに木道を突き進みます。つい最近まで筆者はヘッデンを外国語だと思っていたのですが、懐中電灯をカイデンと呼んでいた名残でヘッドライトをヘッドに付ける電灯、略してヘッデンと呼ぶようになったらしいです。
F11 SS1/3 ISO50
なんとか雲海を見ることができました。
雲海は太陽が昇る直前の最も気温が低い時間帯が一番綺麗です。太陽が昇り気温が上がってしまうと散り散りになってしまいます。
IQ3 100MPは2014年に発売されたデジタルバックです。2014年と言えばSONY α7IIが発売された年でもあります。
8年前と言われると随分昔の事のようですが、それだけ経った今でもIQ3の中古相場は100万円以上します。
次世代機が出るたびに値崩れの心配をしなくて良い、ある種の価値の不変性を求めれらる方に最適な選択肢かもしれません。
描写に関してはもう言う事はないでしょう。完璧、その一言に尽きます。
F11 SS0.6 ISO50
北奥仙丈ケ岳からなんとなしに撮影した一枚ですが、帰宅後現像した時にあまりの緻密さに笑ってしまいました。
木の一本一本に焦点をあてたような緻密な画、それでいて夜明け空のグラデーションは美しく。
何年前の製品だからどうこう言えるようなものではなく、そもそも一般的なカメラとはステージが違うのだと実感できます。
F2.8 SS1/80 ISO50
登山道ではいつでも三脚を立てられるわけではありません。
時にガレた岩場、時に細い獣道を進む登山では手持ち撮影を強いられることがあります。
F値開放でSSは1/焦点距離は確保したい。でもISOを上げたら画質が劣化してしまう。三脚は使えない。どうしたらいいのか。
アンダーのまま撮影して帰宅後に露出を持ち上げればよいのです。
上が撮って出し現像、下は露出・シャドー・ハイライトの三項目を調整したものです。
圧倒的な編集耐性をもったⅡQ-L Rawであれば絶対に潰れているだろうと諦めていた所から色情報を引っ張り出せます。
F2.8 SS1/320 ISO50
下界の蒸し暑さを忘れ、涼やかな風とさわやかな晴天を感じながら進みます。
北奥仙丈ケ岳と国師ヶ岳から雲海を見たので、一度大弛峠に戻り金峰山を目指します。
明け方は一面に広がっていた雲海も散ってしまい、山々の間を漂っています。
F16 SS1/13 ISO50
ガレた岩場もなんのその。
深呼吸をするたび新鮮で冷たい空気で胸が満たされます。
ただ気温が低いだけではない、ただ湿度が低いだけではない、山特有の空気です。
F2.8 SS1/1000 ISO50
夏山では山頂に近付くと雰囲気で分かります。
急に植物の背が低くなり、視界から自分より背の高いものが消え、空が広くなるような錯覚がしたらもうすぐ山頂です。
登山は楽しくも辛くもあるのでずっと続けていたいし早く終わらせたい、そんな矛盾があります。
登っている最中はしんどくて早く山頂に着いてくれと思っていても、いざ山頂を目前にするともっとずっと登っていたいと考えてしまうのはワガママでしょうか。
コースタイムの6割程度で進み2割の時間を撮影に充てる。合計でコースタイムの8割程度。
どうしても撮影の度にザックを下してカメラバッグを出し、カメラバッグからカメラを出し、時に三脚を立て撮影するとなると時間が掛かります。
αなら胸のベルトにpeak designのキャプチャーで吊っているので、歩きながら撮影することも可能で山行のテンポが悪くなることはありません。そういったところは使う人を選ぶカメラだと思います。
F16 SS1/80 ISO50
山頂目前のケルン。
どこの誰が積んだか分からない道標に導かれ、最後にもうひと踏ん張りで山頂です。
絞っても絞っても判の大きさゆえに出てしまうボケが好きです。
一見すると普通の写真ですが、よくよく見ていくとピントピークの解像力が異常に高く、ボケが非常になだらかです。
F11 SS1/80 ISO50
今回撮影した中で最も気に入った一枚です。
手前の森の木々の立体感、盛り上がった岩の質感、なだらかにボケる背景、気温が上がってきたことにより若干の霞みを帯びる空気。
それら全てを破綻なく表現してくれるデジタルバックとレンズにただただ感謝するしかない、そう感じました。
F2.8 SS1/1250 ISO50
そんなことを言っている間に山頂です。
IQ3 100MPは少しオーバー気味に撮影するとフィルムライクな色味が出てきてくれるので、立体感も相まって本当に645判のフィルムで撮ったようです。
この特性を現代的に手直しするには現像でかなり手を入れねばならず、普通に写ってほしいときは少しアンダー目に撮影するのがオススメです。
作例写真を見る限りトリクロマチックからは現代的な色味になっているようなので、見方によってはそういった楽しみ方をできる最後のデジタルバックかもしれません。
F2.8 SS1/2000 ISO50
最後は金峰山頂からもまだまだ続く奥秩父の峰々を。
周辺減光が写真用レンズとして”丁度良い”です。
単焦点は50mmしか使わない癖から今回AF80mm(フルサイズ換算約50mm)を使用しましたが、AF55mm(フルサイズ換算約35mm)を使用することでより山というフィールドの広さ・大きさを表現できるのではないかと感じました。
スナップは50、山は35とうまく使い分けていくのがよさそうです。もしくは望遠で圧縮したり、広角でダイナミックに写しても楽しいかもしれません。
今回はPHASE ONE IQ3 100MP達と共に奥秩父山系の北奥仙丈ケ岳・国師ヶ岳・金峰山に登りました。
圧倒的に美しい描写を楽しむことができましたが、私のように登山メインで、撮影は+αという方よりも、山岳写真のために登山をする方向けかなと思いました。
昨年度はバックカントリースキーにかまけ、しっかりとした登山ができていなかったので久々に登山らしい登山をして山に対する意欲がわいてきました。
夏山も折り返し後半戦へ。皆様、お体にお気をつけて登山をお楽しみください。
筆者のお手軽登山セットです。
軽量・コンパクト・高画質をお求めの方にお勧めです。