【マップカメラ情報】マップカメラ限定 赤城耕一監修×kajunオリジナルカメラバッグができるまで 第2回
2009夏、工房にて
赤城耕一氏監修のカメラバッグは、これまでにも存在してきた。
しかし、革作家とのコラボレーションとなるとどうだろうか?
さらにそのカメラバッグが、一見ふつうのトートバッグでありながら、カメラファンの心をくすぐるディテールを有するとしたら……?
今回、僕が赤城さんのコラボレーションパートナーとして白羽の矢を立てたのは、シンプルかつ美しいものづくりで人気の革作家、kajunさんだ。彼女の作品サンプルを一目見るなり、赤城さんは即座にOKを出した。
そんなkajunさんは都心から離れた街でゆったりとした時間の流れのなか、1点1点丁寧な手作業で作品製作をつづけている。工場での大量生産とは異なる、昔ながらのやりかたを通じてこそ生まれるものがあるのだと、kajunさんの作品は教えてくれる。
この夏アトリエにおじゃまし、カメラバッグが実際につくられる現場を取材した。そこにあるのは、古き良き時代から受け継がれるものづくりの姿だった。
上の写真はバッグに使用する牛革と、革の厚さを0.1mm単位で測るノギスという道具。革漉き機で革を薄く漉く工程があり、
その時にこのノギスで厚さをチェックする。
「何枚もの革を縫い合わせるときに、革がぜんぶ厚いままだと厚すぎて縫えないし、逆に薄すぎると強度が弱くなるんです」
kajunさんはそう話して、革を漉くところを見せてくれた。
足踏みミシンにこだわる理由
革素材を縫うための工業用ミシンとして、現在すでに製造されていない足踏み式のものをあえて使用しているというkajunさん。独立する以前に勤めていた工房の頃から使い慣れていたため、このミシンを選んだそうだ。
ペダルを足で踏み、ミシンを動かす。そこに自分のペースができ、呼吸が生まれる。ゆっくり縫うときはミシン右側の輪を、写真のように手でまわして速さを調節する。
効率よりも優先すべきものが何かを見通しているからこそ、つくり手の感覚に忠実に寄り添うこの機械を選んだのではないだろうか?
「これに慣れているから、電動はかえって使いにくい」
というkajunさんの言葉は、どこかカメラ機材に通じるものを感じた。
つまりマニュアル、ということだ。
僕の実感に即していえば、愛用しているライカM3が思い浮かぶ。M3はもちろんフルマニュアルの機械式カメラだ。露出もピントも巻き上げも何もかも手動だ。そして、「これで慣れているから、AEもAFもかえって使いにくい」
と、やはり感じる。
その人その人にしっくりくる機械との関係がある。カメラでもミシンでも同じように。その意味を大切にするkajunさんの生み出すカメラバッグならば、古き良き機械式カメラを収めるのにふさわしいであろうとあらためて思えた。
また、今回こだわったポイントの一つに、バッグの持ち手がある。
スナップするために使いやすい長さは?肩から提げてカメラを取り出しやすくしたい。だが、長くしすぎてトートバッグとしての美しさをこわしたくない……。議論を交わし、ある長さに答えを見つけた。
写真はその持ち手の革を切り出しているところだ。
「持ち手は二重にして、表はバッグ本体と同じ革。裏は、やわらかい革でしなりのよいものにしました」とkajunさん。
ぜひ店頭で手にとってみて欲しい。上質なイタリアンレザーの美しさと、手にしなやかになじむスマートさ。細部の細部にまで配慮した革作家ならではの造り込みを感じることができるだろう。
*次回に続く
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(企画・執筆/白井明大 撮影/當麻妙)