6月8日、関東で梅雨入りが発表されました。
雨の景色や紫陽花をはじめとして梅雨ならではの写真が楽しめる季節です。
しかし、それと同時に疑問もわいてきます。
「雨の日、家でカメラと楽しむ方法はあるの?」
「外に出る時にカメラと一緒に持って行った方がいいアイテムは?」
6月から1か月、「梅雨どきQ&A」と称して
梅雨の季節ならではのお悩みに一つ一つお答えしていきます。
長い梅雨の季節、ふと疑問が頭をよぎった時にこちらのQ&Aを覗いてみてください。
…
Q10:大きいカメラは雨の日に向かない?
1年を通じて撮影を楽しみたいというカメラ好きにとって、梅雨のシーズンは最も悩ましい時期です。
傘を差しながらの無理な体勢での撮影。
それでも吹き込んでくる雨によって、大事なカメラが濡れてしまう。
どうしても画面が暗くなってしまい、地味な印象の画になってしまう。
何より自分が濡れてしまう…
結局家に閉じこもり、窓から恨めし気に雨空を見上げることに…
なぜか休みの日に天気が悪いことが多い私(決して雨男というわけではない……はず…)にとって、特に梅雨どきはストレスが溜まってしまいます。
今まではどうしても出掛けなければならない時にバッグに小さめのカメラを忍ばせ、時折ちょっと撮影する程度で欲求を満たしていたのですが、今回は違います!
私が今回撮影のお供に選んだのは、FUJIFILM GFX 50S IIとGF35-70mm F4.5-5.6 WRの組み合わせ。
中判フォーマットのカメラです。
35mmフルサイズセンサーの約1.7倍のセンサーを搭載したカメラ。当然ボディサイズも大きく重くなってしまう、と思いきや、質量約900gと各メーカーの35mm判フラッグシップ機よりもはるかに軽く、大きなグリップと相まって大変取り回しの良いカメラに仕上がっています。
そして強力な防塵・防滴仕様が施されていることも、雨の日の撮影にもってこいなところ。
組み合わせたGF35-70mm F4.5-5.6 WRは、もともとGFX 50S IIとキットで販売されているレンズ。35mm判換算で28-55mm相当と使いやすい画角のズームレンズです。
撮影しない時はレンズをコンパクトに収納できる沈胴構造を採用しているので、普段使っているカメラバッグにそのまま入れることができました。
そしてこちらも嬉しい防塵・防滴仕様!
フジフイルムのレンズは、XシリーズもGFXシリーズもレンズ名に「WR」の表記があると防塵・防滴仕様であることを表しています。
特にGFXシリーズは現行レンズ全てに「WR」が! どのレンズを装着しても雨の中でも安心して撮影を楽しめます。
さて、休日。いつも通りの雨模様… 妻に相談。
「雨の撮影ですか? なら、洗足池なんて良いんじゃないですか。水辺の方が雨降ってるの分かりやすいし、公園ならアジサイなんかも咲いてるんじゃないかしら。」
「なるほど、いいね。」
「ええ、じゃあ、行ってらっしゃい。お帰りは何時ごろ?」
(あっ、付いてきてはくれないのね…)
まぁ、仕方ないですかね、雨だし…
そんなわけで、一人でお出掛けです。
まずは試運転。最寄り駅まで行く途中でパチリ。
FUJIFILM GFX 50S II + GF35-70mm F4.5-5.6 WR
この時期の花と言えば真っ先にアジサイが思い浮かびますが、通りにヤマボウシが満開でした。
70mm F5.6での撮影、背景の人や建物が自然な感じでボケてくれました。
電車に乗る前に、駅ビル屋上にあるミニ遊園地に寄り道。
よく撮影に使わせてもらっています。天気が良ければ、平日でも小さな子どもを連れたママさんたちで賑わっていたりするのですが…
まぁ、雨ですからね…
こちらは広角側35mmで撮影。中判フォーマットのF5.6ですが被写界深度は深めで、画面をズームさせると手前から奥まで椅子についた水滴がはっきり確認できました。
中判カメラながら先に述べたようにグリップがしっかりしていて、縦位置の撮影でもバランスよくホールドできます。
小雨になってきました。
まずい、目的地に行く前に止んでしまう… いつもとは反対の焦りに、慌てて電車に乗り込みました。
東急池上線で蒲田駅より8つ目、洗足池駅の改札を出ると道路を挟んですぐ目の前に洗足池公園があります。
都内屈指の広さを有する洗足池、その周りをぐるっと遊歩道が囲み水辺を散策できるようになっています。
また池ではボートを借りて楽しむことも。手漕ぎのローボート、足で漕ぐサイクルボートとスワンボートが浮かんでいます。
少し前5月中旬の好天の日に訪れた時は、ローボートを借りて妻と。何十年ぶりの操縦にあたふた、危うく遭難しかけました…
今は雨が降ったり止んだり、勿論ボートを借りる人などいません。船着場に整然と並ぶ様子をボートハウス屋上の展望スペースから撮影しました。
約5140万画素のセンサーは、ボートについた雨粒や背景の木々の葉1枚1枚まで細密に描写しています。
雨雲の下での撮影ですから、当然画面は暗くなってしまいます。
ですが、その沈んだ色合いの中に明るい色味を持ってくると、より主題の存在感が増すような気がします。
暗部がベタっと潰れることなく再現されていて、画面を引き締めてくれていることも効果的。
晴天の下では表せない、雨の日ならではの撮影の楽しみ方かもしれません。
池の周囲を散策。ほとりに植えられた樹木の中に、幹全体が苔で覆われたものがありました。
かなり暗い場面、絞り優先オートでそのまま撮影したところやはりアンダーな感じになってしまいました。1段プラスに露出補正をかけ撮影したのが上の写真です。
感度もオートにしていましたが、あまり上がらないように設定していたのでISO320、シャッタースピードは1/30秒ほどでした。
中判フォーマットで1/30秒、手ブレも注意しなければいけない状況でしたが、その時は全く気にしていませんでした。
首から提げて歩き回ってもさほど苦にならない重量感に、いつしか35mm判カメラと変わらない感覚で撮影していました。
ブレずに撮影出来たのは、カメラに搭載された強力な手ブレ補正機構のおかげです。
フジフイルムカメラならではのフィルムシミュレーション モードは、標準的な「PROVIA」に。
それでもこの緑! さすがフジフイルムです!
さらに約5140万画素の解像力豊かな描写により、背景の中からこの1本がグッと浮き上がって存在しています。
ラインアップの中では安価なキットのズームレンズ、画面周辺の描写はもっと甘くなるだろうと予想していましたが、十分鑑賞に堪えられるものでした。
池月橋と呼ばれる三連の太鼓橋の所まで来ました。
いつしか雨は… 止んじゃった! どうしましょう…
まぁでも、まだいつ降ってもおかしくない空模様だし、テーマは梅雨どきの撮影だし… 気にせず撮影を続けることにしました。
橋のたもとに池に向かって突き出したカエデの枝が。それを橋の上から撮影すると、
背景が「無」になりました… 風がなく雨も止んだ水面、何も存在しない空間が広がります。
そんな寂寥感漂う情景に迷い込んできた1匹の鯉。
暗い背景に映える金色の姿が美しく、何枚もシャッターを切りました。
それまでよりもさらに絞り込んで撮影したところ、掛け軸の絵のようになりました。
カエデから水面にピントを移動させて。
開けた口の奥まで写っています。
橋の上から撮影していると、こちらをチラチラと見てきます。何度も目が合い、つい親近感が湧いてシャッターを切り続けました。
(まぁ向こうは、写真なんか撮ってないで、餌くれ! としか思ってないでしょうが…)
ひとしきり鯉と戯れた(?)後、再び鏡のようになった水面を。
近寄ってこなかったので、さっきの鯉とは別ものかと。写真右、水面に映るのは上空を飛んで行った鳩の群れです。
近くに浮いた筏から何やらカサコソと音がするので見ると…
蛇でした! 1.5mくらいはありそうな… 鱗模様まで細密に描写されていますって、きゃあ…
時々思い出したように雨粒が落ちてきます。
そうそう、こういう水辺の風景を撮りたかったんだと傘を差すのも忘れて撮影に没頭します。
昔は撮影中に雨が落ちてくると、慌ててカメラにハンカチなどを被せたものですが…
マニュアルフォーカスに切り替えて。
公園にはアジサイの他、ショウブも見頃でした。
レンズの最短撮影距離は35cm。ズームを駆使するとかなりのアップでも撮影出来ました。
気がつけば、公園だけで2時間以上はいたでしょうか。フル充電されていたはずのバッテリーも、残量が心許なくなってきました。
それでもカメラを提げた首が特に疲れることもなく… 雨の日にまさかこんなに撮影に夢中になれるとは思ってもいませんでした。
大きいカメラは雨の日に向かない?
結論:雨の日ほど、大きいカメラを! 薄暗い情景は大きなフォーマットで細密に撮ると、情緒豊かな画になります。
家に帰ると妻が出迎えてくれました。
「おかえりなさい。良い写真撮れました?」
「まぁまぁかな… 途中で雨が止んじゃって…」
「あら、それは残念でしたね。」
雨の日の撮影後は、カメラのお手入れをお忘れなく!
↓梅雨どきQ&Aバックナンバーはこちらから↓