これまで近接撮影が苦手とされていたレンジファインダーを搭載したカメラでしたが、ライブビュー機能の進化等によりファインダーを介さずピント合わせが可能になったことで一眼カメラ用レンズ並みに寄れるレンズも増えてきました。そしてこれまで最短撮影距離が1mや70cmまでのものがほとんどだったレンジファインダー用レンズをミラーレスカメラでより幅広く楽しむべく生まれたヘリコイド付きのマウントアダプター。この2つを組み合わせたらどこまで近接が可能になるんだろう。ちょっとした興味から『SONY α7III』にヘリコイド付きアダプターを介して『Leica ズミルックス M35mm F1.4 ASPH. 11726』を装着してみました。ボケの綺麗なライカ最新レンズと限界を超えた近接撮影の描写をぜひご覧ください。
「α7IV」の登場により旧モデルとなってしまった『α7III』ですが、AF機能を使わないアダプター遊びなら十分すぎる性能です。何より嬉しいのがボディ内手ブレ補正機能。揺れるロープウェイからの撮影でも安心です。
昔は石の採掘場だった山の独特な断面も綺麗に捉えてくれました。
山頂では見る方向によっていろんな景色を楽しませてくれます。登ってきた方向とは逆の方向に目をやると辺りは霧に包まれていました。これを開放F1.4の柔らかな描写が相俟ってとても幻想的な画になりました。
ムクゲの花を見つけたので近接撮影に挑戦しました。まずは限界まで寄ってみようと思いピントリングもヘリコイドも限界まで伸ばした状態からピントが合う場所まで寄っていくというスタイルで撮影すると、レンズ前玉から10cm位まで寄ることができました。花びらの質感はもちろん霧に濡れた様子など細部までしっかり描写しています。これほどの迫力で被写体を捉えると本当に35mmの画角かと疑いたくなります。
別の花を見つけたのでもう一度近接撮影を。今回は花が小さかったので背景も意識しながらボケ具合をコントロールしてみました。F5.6まで絞ったのですが近接による大きなボケは凄いの一言。手前の一輪の立体感は半端ではありません。
山を降りると山頂の霞が嘘のような好天に。そして写真も天気に引っ張られる様にスッキリしたシャープな描写になりました。F4まで絞っても残る周辺減光が未だ終わらない夏の暑さを強く印象付けます。
軽量なミラーレスのボディには小さなライカレンズがとてもマッチします。海岸沿いを歩いてる最中も気がつけばカメラを構えていました。これもボディとレンズのバランスの良さがなせる技ではないでしょうか。
海風が気持ち良かったのでフェリーにも乗ってみました。
シャープさの中に少し柔らかさを纏う絞り開放の描写は小さな旅の記録にもノスタルジックな雰囲気を加えてくれます。
青空に白いマストが映えていたのでシャッターを切るとかなり強い周辺減光が生じて驚きました。
普段ライカボディで使用している際はあまり気にならなかったので6bitコードによる補正効果が大きいようです。マウントアダプターを介すとこの様な補正が一切かからないので、レンズ本来の描写が楽しめます。
山頂から見た際はさほど距離がないようにも見えた対岸までの距離ですが実際、海に出るとその広さを実感します。西に傾き始めた太陽が描く光の筋も少しづつ色づき始めており秋を感じられるようになりました。
千葉から対岸の神奈川へ。東京湾を挟んで全く変わる景色に驚きます。
整備された公園の花壇には早くも薔薇が咲いていました。これも近接で捉えると外の花びらを縁取る様なフリンジが発生。同じ近接撮影でもシーンによって様々な効果が得られる面白さがありました。
シャープさと柔らかを併せ持つライカの最新レンズ。無限遠側での安定した描写に対して近接側ではそのピント面の薄さに驚きます。さらにアダプターを介してもっと寄ることで様々な効果を楽しむことができました。
ライカ同士の組み合わせでは気づかなかった補正の有無での絵作りの違いなど、別マウントのカメラに付けることで見つかる発見もありました。
皆様もお気に入りレンズがあればマウントアダプターを使って別カメラで楽しんでみてはいかがですか。また違った一面を見せてくれるはずです。