『Leica SL2-S』で撮る魅惑の中望遠『Carl Zeiss Sonnar T* 85mm F2 ZM』
2023年02月28日
今回ご紹介するレンズは『Carl Zeiss Sonnar T* 85mm F2 ZM』です。2006年~2011年の5年間生産されたレンズで鏡筒側面には「Made in Germany」の刻印が。実は数あるZMレンズの中で『Distagon T* 15mm F2.8 ZM』とこのレンズだけがドイツ製。生産終了となった今、マップカメラではプレミアムコレクションに属する希少な存在になっています。6群6枚構成。貼り合わせレンズを持たずそれぞれが独立したレンズの集合体で重厚感がまたたまりません。『Sonnar T* 50mm F1.5 ZM』を筆頭に素晴らしい銘玉がありますが、ツァイス伝統の85mm。モノクロでもカラーでも極上の写りを堪能できる一本です。ぜひご覧ください。
冒頭のカットはF2.8に絞ったカット。その一つまみの絞りだけで周辺減光が著しく改善されます。画全体が引き締まるような解像感も素晴らしいです。
照明の光に沿うように蕾の輪郭を捉えます。短い撮影距離にくわえ開放絞りで撮影してもこれだけ写るのですから驚きを隠せません。
プラナーなどと比較すれば硬めに写る印象のあるゾナーですが、このレンズの描写を見るとポートレートを撮りたくなります。窓から射し込む光の強弱と優しくも繊細な解像力。被写体を引き立たせる立体感とボケの美しさはまさに絶品です。
ここから何枚かモノクロのカットもご紹介いたします。Leica SL2-Sのフィルムモード「モノクロ」と『Carl Zeiss Sonnar T* 85mm F2 ZM』の組み合わせは壁に描かれた模様の細かなトーンの違いもしっかりと描きます。照明はなく、窓と私が立つ入り口からの光だけで照らされる世界。開放絞りの減光がより雰囲気を引き立ててくれました。
椅子の肘掛けに合ったピントは芯がありつつも、シャープ過ぎない艶めかしい写り。テーブルや座のボケ感のバランスも含めて、芸術作品のような仕上がりです。
暮れかけで光の乏しい竹林で、目に留まった少し色の違う竹。僅かに帯びた光を『Carl Zeiss Sonnar T* 85mm F2 ZM』は期待以上の写りで応えてくれました。まさに主役を主役たらしめるレンズだと思います。
今回は『Lens shade 85mm(Sonnar T* 85mm F2 ZM用)』を付けられたのでレンズのベストコンディションで撮影できたのではないかと思います。驚いたのは『Carl Zeiss Sonnar T* 85mm F2 ZM』に関する情報の少なさ。ネット上でも公式でも確認できないまさに「存在自体が幻」になってしまいそうなレンズだということです。理由としてはブライトフレームが関係しているのかな、と思いますが『Leica SL2-S』などのEVFでピントを確認できる組み合わせなら存分に楽しむことが出来ます。そういう意味でも理想的な組み合わせかもしれません。『Batis 85mm F1.8』とはまたタイプの違う、艶めかしく甘美な写り。数十年間の厳しい使用にも耐え得るよう設計されたZMシリーズですから末長く付き合えます。もし出会う機会に巡り合えたときにはぜひ手に取ってみていただきたい逸品です。