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336:『FUJIFILM X-Pro2』

2016年03月03日


FUJIFILM X-Pro2

絞り:F11/ シャッタースピード:1/105秒 / ISO:200/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF14mm F2.8 R / 【Veivia】


FUJIFILM X-Pro2

X-Pro1ユーザーからは長い長い4年間だったと思います。今回Kasyapaは待望のX-Pro1後継機種『FUJIFILM X-Pro2』のご紹介です。FUJIFILMがミラーレスカメラシステムを展開し始めた4年前、3本の新設計マウントレンズと共に発表されたのが先代のX-Pro1でした。心臓部とも言えるXシリーズのセンサーは、スーパーハニカムCCDに変わる新開発の「X-Trans CMOS」を搭載し、APS-Cサイズセンサーながらフルサイズセンサーに負けないダイナミックレンジと高解像度を引き出してくれます。それに加え高性能なレンズと独自の色表現は「フジの新しいカメラは写りがいい」と瞬く間に写真愛好家の間に広がっていきました。しかしながら初号機とも言える「X-Pro1」は画質は高評価を得ながらもAF性能や操作系にまだまだ課題が感じられるカメラでした。度重なるファームアップを得て別物と言えるくらい性能面を進化させましたが、やはりユーザーが期待していたのは後継モデル。X-T1を横目で見ながら待ちに待って、ついに登場したのが今回の『X-Pro2』なのです。

ちょっとX-Pro1の説明に熱が入りましたが、実は筆者もX-Pro1ユーザーで「X-Pro2」の登場を待ち望んでいた一人でした。
今回のレポートは「X-Pro1ユーザーが感じたX-Pro2」という目線で話を進めて行きたいと思います。では写真を見ていきましょう。

まずはもっとも大きな変更点である2400万画素へ進化した『X-Trans CMOSIII』の実力から。画素数以上の解像感が得られる独自のセンサー構造は2400万画素ながら一般的なべイヤー機の3600万画素に匹敵する画質を実現しています。なんというか、先代より解像感の切れ味が2,3段上がったように感じられます、線描写の細密度は別物と言っていいレベルでしょう。正面のビルの映り込みにこちらまで引き込まれそうな迫力を感じられます。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F1.2/ シャッタースピード:1/850秒 / ISO:200/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF56mm F1.2 R APD / 【クラシッククローム】

私がXシリーズを使う理由の一つに画作りが繊細なところがあります。X-Pro2もグレーの階調がものすごく綺麗に出るので、ハイキーでもローキーでも質感と空気感が感じられる写真に仕上がげることが可能です。また使用した『XF56mm F1.2 R APD』もいいレンズですね。F1.2という開放でもピント面の解像力が非常に高いのですが、写真全体の画作りはしっとりとした印象になります。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/220秒 / ISO:400/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF35mm F1.4 R / 【クラシッククローム】

よく富士フイルムのカメラは撮って出しがキレイと言われますが、まさにその通りで今回の試写はすべてJPEGで撮影しました。シャドー部の中にある解像感もさることながら、正面にでんっ!そびえるローマ建築のような柱にご注目。白ともグレーとも言えない微妙な色調にざらりとした石の質感が感じられる素晴らしい描写力です。毎度思うのですが、富士フイルムのカメラはハニカムCCD時代から白い被写体を撮らせたら右に出る物はいないと感じることが多いですね。色の作り方も流石です。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F1.2/ シャッタースピード:1/400秒 / ISO:200/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF56mm F1.2 R APD / 【PROVIA】

電球が吊り下げられた花のブーケ。画素数が上がったことで画が硬くなるのでは?と心配したのですが、ピント面の解像力は上がっても滑らかな画作りに安心しました。

さて、画質ばかりではなく操作系の話も少ししましょう。この写真も含め今回の試写では光学ファインダーにEVFの小窓を出した「エレクトロニックレンジファインダー」を使用して撮影を行いました。
先代では光学ファインダーでピントの確認ができず「撮ってみたら後ピンだった」という経験をされたユーザーも多かったと思います。X-Pro2は位相差AFも入ったインテリジェントハイブリッドAFを採用しているため、まず初期動作から素早く正確にピントを合わせてくれます。それに加えて、右下のEVFでピントチェックができますから、光学ファインダーを使用した時のヒット率が格段に良くなりました。また、マウントアダプターをつけると実質EVFモードでしかピントを詰められなかったところが、X-Pro2では光学ファインダーが使用できるのも嬉しいところ。先代のネガな要素をとことん改善して進化したのがX-Pro2と言えるでしょう。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F11/ シャッタースピード:1/480秒 / ISO:800/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF14mm F2.8 R / 【Veivia】

日中だったのですが、あえてISO800にまで上げてダイナミックレンジ設定を400%に。Velviaモードだったためシャドーが締まり気味になっていますが、写真中央右側にあるハイライト部に注目です。本機は2400万画素という数値ですが、画素ピッチで言えば5000万画素クラスのフルサイズのようなもの。他のカメラでは左右のビルの輪郭線ごと白飛びしそうな状況でも、X-Pro2は驚きの粘りを見せてくれました。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/340秒 / ISO:200/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF56mm F1.2 R APD / 【PRO Neg.Hi】

少し明るめなイメージで建設現場を撮影。クレーンの立体感もすごいですが、鉄骨にかかっているネットの網目を緻密に描写しているのがわかります。
X-Pro2はハイキーな撮影もいいですね。広いダイナミックレンジのおかげで空の青色はうっすらと残し、クレーンの白も飛ぶことがありません。


FUJIFILM X-Pro2

絞り:F4/ シャッタースピード:1/100秒 / ISO:800/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF14mm F2.8 R / 【PROVIA】


FUJIFILM X-Pro2

X-Pro2より新たに加わったフィルムシミュレーション『ACROS』。オリジナルはISO100の超微粒子モノクロフィルムですが、それをデジタルで再現したのがデジタルACROSということになります。その特性についてFUJIFILMの担当者へお話を伺ったところ「デジタルでできる最高のモノクロ表現を目指しました」と期待を持てるコメントをいただきました。そしてなんと高感度ノイズとは別に粒状感も組み込まれていて、フィルムのように明暗度によって粒状感の出方も違うとの事。もともとXシリーズのモノクロは質感が高かっただけに、さらにこだわって作られた『ACROS』はどんな表現を見せてくれるのか。メーカー担当者から「高感度での粒状感を味わって欲しい」という事も聞いていたので、X-Pro2を携え夜間のスナップへ向かいました。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F2/ シャッタースピード:1/1250秒 / ISO:3200/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF35mm F1.4 R / 【ACROS】

数カット撮って確認すると、思わずニヤリとするほどの質感表現。「これはヤバいね」と一人つぶやいてしまいました。今まで様々なデジタルカメラのモノクロモードを試してきましたが、これほどまでに「モノクロ写真」を感じるカメラはありませんでした。海外メーカーにはモノクロ専用のすごいデジタル機もありますが、あれはRAW現像ありきで写真をつくり込む機種であって、このカットはJPEG撮って出しです。階調表現が素晴らしいだけでなく、粒状感が写真としてのリアリティをさらに引き立てているように感じます。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F2/ シャッタースピード:1/300秒 / ISO:3200/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF35mm F1.4 R / 【ACROS】

これだけ高感度に強く、質感が出るとなると夜間のスナップがとても楽しくなります。それにはカメラのレスポンスも求められると思いますが、X-Pro2はそこも飛躍的に向上しました。まず電源を入れてからの立ち上がりの速さは一眼レフ張り。シャッタータイムラグも、レリーズ後のブラックアウトもとても短くなったことで、スナップ撮影をしてストレスを感じる事が全くありません。また、新たに追加されたフォーカスレバーもすごくいいですね。親指が自然に置ける位置にあるため、迷う事なく感覚的に操作する事ができます。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F1.4/ シャッタースピード:1/4000秒 / ISO:6400/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF35mm F1.4 R / 【ACROS】

ディスプレイの光源を撮ったちょっとイメージカットっぽい写真ですが、ハイライトからシャドウにかけての粒状感をみていただけたらと。

「瞬間を切り取る」なんて言葉をカメラや写真の世界ではよく耳にしますが、X-Pro2はまさにそういったカメラです。ステルスのように目立たないボディは場に溶け込み、ここぞという瞬間にさっと構えて撮る事ができる。また、構えている姿も威圧感がないので場の空気感をそのままに写真を撮る事が可能です。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F4/ シャッタースピード:1/13秒 / ISO:6400/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF35mm F1.4 R / 【ACROS】

今の時代、おそらく手ぶれ補正の要望もあったと思いますが、使用するとやはりこのボディサイズと重さがベストだと感じます。X-Pro2は高感度が強い事に加えレリーズショックも感じられないので低速シャッターでもしっかり撮れます。また、シャッター音と感触が気持ちいいんです。これは開発の時にチューニングして作ったのだと思いますが、フィルムレンジファインダー機のような感触が得られる絶妙なシャッターです。



FUJIFILM X-Pro2

絞り:F2/ シャッタースピード:1/180秒 / ISO:1600/ 使用機材:FUJIFILM X-Pro2 + XF18mm F2 R / 【ACROS】

電車の中からレンズをXF18mm F2 Rに変えてでの撮影。Xシリーズは単焦点レンズが豊富なのも魅力的ですよね。特にX-Pro2のようなレンジファインダースタイルには単焦点レンズが似合います。


FUJIFILM X-Pro2

『FUJIFILM X-Pro2』は性能だけでなく、感触も質感も素晴らしいカメラでした。筆者の愛機がX-Pro1という事もあり、多少過大評価になっているかもしれませんが、X-Pro1を使用していて「こうだったらもっといいのに」と思うところをすべてクリアした機種と言っていいでしょう。また、モノクロ写真派の方には是非デジタルACROSを体験していただきたいですね、デジタルでここまでできるんだと思えるほど素晴らしい質感表現です。現在は各メーカーから様々なミラーレス機が登場していますが、X-Pro2は独自性に満ちただけでなく性能も非常に高い一台です。X-Pro1からの買い替えを悩まれている方もいらっしゃるかと思いますが、私からは「もっと写真を撮るのが好きになりますよ」というのがX-Pro2を使った感想です。

今回は試写と同時期にメーカー担当者へインタビューを行ない、記事にまとめました。X-Pro2の開発の裏話や色の秘密、フルサイズへの可能性も聞いてきましたので是非ご覧ください。

Photo by MAP CAMERA Staff

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