今回の試写レンズ『HandeVision IBELUX 40mm F0.85』と言われてもピンとくる方は少ないかもしれません。
HandeVision(ハンディビジョン)というブランドは、マウントアダプターで有名なKIPONの上海伝視撮影とドイツのIB/Eオプティックスが協力し誕生したレンズブランドです。
そのスペックは驚かずにはいられない『F0.85』という明るさ。これはライカ・ノクティルックスやフォクトレンダー・ノクトンシリーズの『F0.95』を超え、現在市販されているカメラレンズとしては最も明るいレンズとなります。 どのような写りとボケ味を見せてくれるのか。驚異の明るさを誇る本レンズを携え早速試写へ出かけてきました。
開放での室内撮影から。さすがにソフトな印象は受けますが、F0.85という数値を考えればコントラストも高く、滲みもよく抑えられた描写です。そしてAPS-C機の40mmという焦点域では今までにない深いボケ味が特徴です。
試写にはFUJIFILM X−T1を使用しましたが、絞り開放での昼間の撮影は1/4000というシャッタースピードでは露出オーバーになってしまうシーンもいくつかありました。 そして1枚目に掲載した写真のように開放付近で光が直接入り込むと強烈なフレアが発生します。個人的にはこれらを味として使用してみたいと思いましたが、屋外での撮影にはNDフィルターを使用したり光の向きを意識するなど少し工夫が必要かもしれません。
レンズの使用感についてですが、本レンズは電子接点無しのマニュアルレンズとなります。
薄いピントを合わせる為のヘリコイドと絞り環は、個体差かもしれませんが他のマニュアルレンズに比べ少し軽い印象がしました。 そして何より手にしたときの大きさとずっしりとした重量感。本レンズは全長が128mm、重量が1.2kgあります。 この重さと長さが意味する事は、多くの光学ガラスと大きさを用いらなければこの『F0.85』という明るさを実現できなかったということでしょう。
使いやすかった絞り値はF1.4かF2.0。そのくらいからピントの芯が出始める感じで、写真の中にボケ味とピント面のメリハリがつきます。 F1.4だとピント面にもまだうっすらフレアが残る感じで個人的に好みの描写でした。
F2.8での撮影。森の中にあるメリーゴーランドを撮影しました。角の部分のハイライトが少し飛んでいますがピント面とボケ味は良いバランスです。
F5.6での撮影。このくらい絞れば安定感のある写真になります。ハロウィーン用のとても大きなカボチャがたくさんありました。
F8での撮影。四隅は甘さが見られますが中央解像力はなかなかのものです。
絞り開放の少し柔らかい感じはモノクロとの相性が非常に良いと思います。カラーで見た時と違うレンズの印象を受けます。
使い方次第でこのレンズの味を生かした独特の世界観が出せるかもしれません。
『F0.85』と聞いた時もっとクセの強いレンズかと思いましたが、絞り開放からレンズの特性が掴みやすく使いやすいレンズでした。 APS-Cミラーレス機に装着すると大きさ・重さはありますが、他のレンズでは味わえないボケ味を楽しめます。 開放からシャープに写るレンズとは少し違うこの個性と明るさは、写真を撮る者に新たな作品を生み出すヒントを与えてくれるかもしれません。
Photo by MAP CAMERA Staff