923:軽快で爽快『LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF AF E-Mount』
2024年03月14日
LAOWAを立ち上げたVenus Optics社の創立10周年を記念した、シリーズ初となるオートフォーカス機能搭載レンズ『LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF』が発表されました。フルサイズで使える10mmの超広角かつ、ディストーション(歪み)を極限まで抑えた「ZERO-D(ゼロ-ディストーション)」設計。LAOWAの広角レンズとして最広角となるZERO-D仕様のレンズです(※キヤノンRFマウント、Lマウントはマニュアルフォーカスとなります)。STMステッピングモーターの採用により、駆動音も静かで素早くフォーカスを合わせることが可能です。開放値もF2.8と明るく、風景・建築・星景写真などどんなシーンにも使えます。しかも約420gと軽量のため、ジンバル撮影やドローン撮影にも最適。77mmの円形フィルターを装着可能で、より簡単に撮影したいイメージを実現できます。超広角に加えて、明るいF値、AFも使えるコンパクトな一本。手に入れやすいプライスに抑えてくれているのはとても嬉しい。10周年だから10mmなのでしょうか。真偽はさておき、どんな写りをするのか撮影にいってきました。10mm単焦点で何が撮れるのか、参考になれば幸いです。
まずは筆者お気に入りの一枚からご紹介。長い直線の道を正面にして中央の消失点を意識しながら撮影しました。F8,F11まで絞るまでもなく、少し絞っただけでビシっとシャープな解像感です。明暗差もしっかり描き分けてくれています。
さすがは「ZERO-D(ゼロ-ディストーション)」仕様。目立った歪みはほぼゼロです。線も綺麗に出ていますがF22まで絞り込んでみましたが、F11くらいがピークな気がします。
絞り羽根が5枚のため10点の光芒が現れます。絞り開放の柔らかい印象も良いですが、絞った時のシャープ感と光芒が鮮鋭感を引き立てます。
10mmの超広角ともなると、ツルツルした素材の少しの反射だけで面白い画が見つかることがあります。このカットも歩いていて偶然見つけることが出来ました。超広角で世界を見ると発見の連続です。
開放絞りだと光の質が柔らかいので、逆光でもあまりキツい感じが出ません。前ボケとして枝木を入れてメインの被写体と太陽の位置を見ながら撮影しました。超広角でメインの被写体を中央からズラしてしまうと歪みが気になってしまったりするのですが、このくらいであれば違和感なく撮れるようです。背景のビルも思っていた以上に歪みが少ないです。
広角でありながら最短撮影距離はわずか12cm。被写体を強調しながらも遠近感のある、マクロレンズのような撮影も可能です。順光だとレンズ自身が影になってしまうほどもっと寄ることが出来ます。光の位置を気にする必要はありますが、ピンポイントに被写体を立てて撮影するのも面白そうです。
厚い雲がかかってきたので、モノクロに切り替えました。絞ると周辺まで非常に高い解像感です。画像をクリックすると長辺8,000ピクセルでご覧いただけますので良ければご覧ください。
画面中心の被写体が奥まった位置にある場合、それを囲むような形で周辺が配置されていると迫力が出ます。縦構図にすることでよりその位置関係を強調させました。
先ほどの写真と同じようなことを今回は横構図で撮影してみます。少し広めくらいの階段ですが、斜めから手前が大きく見えるように、奥に収縮していくように写すと壮大とまではいかずともスケール感が増します。超広角だからこその表現です。
ループ状の橋を交差してみるとまるで某RPGゲームのモンスターみたいなフォルムに出来たのが嬉しかったので記念に撮影しました、青春の一部です。一度訪れた場所でも超広角なら新しい発見が見つかるので楽しいです。
橋と橋の隙間からモノレールが通っていく時を見計らって撮影しました。ぐねりと曲がる橋や水面の映り込み、光芒が面白い1枚になりました。10点の光芒が良いアクセントになっています。
軽快で爽快
一つ注意しなくてはいけないのはオートフォーカス機能を搭載したマウントはソニーFEマウントとニコンZマウントの2機種で、キヤノンRFマウント、Lマウントはマニュアル仕様となりますのでお気を付けください。個人的にLAOWAの超広角レンズのなかで最も印象に残っているのが「LAOWA 9mm F5.6 W-DREAMER」というマニュアルフォーカスのレンズだったのですが超広角における1mmの違いを差し引いても「ZERO-D(ゼロ-ディストーション)」設計であるということとオートフォーカスに対応しているというポイントが非常に魅力的な一本でした。軽量なので面白く写るものはないかと探しながら歩いても苦になりません。長時間露光の際にはミニ三脚の「Manfrotto PIXI EVO」で固定して撮影しました。コンパクトなのでアクセサリーの幅も広がります。最近の光学技術の進歩はすさまじいものがあり、全てを兼ね備えたプロフェッショナルな超広角レンズが出ていますが、なかなか手が出しにくいというのもあると思います。今回LAOWAが開発したこの『10mm F2.8 ZERO-D FF』は手に入れやすいうえに超広角に求める水準を満たしてくれているとても魅力的なレンズだと思います。一部マニュアル仕様とはいえ、多くのマウントで使えるというのも良いです。超広角、軽快に始めてみませんか。
Photo by MAP CAMERA Staff