TAMRON 28-75mm F2.8 DiIII RXD
今回のKasyapaでは、ソニーEマウント用フルサイズ対応標準ズームレンズ『TAMRON 28-75mm F2.8 DiIII RXD』をご紹介いたします。
発売前から供給不足のアナウンスがなされるほどの人気を誇る本レンズ。それもそのはず、10万円以下でF2.8通しの標準ズームレンズが手に入るのですから、注目が集まらない理由がありません。
実際に『SONY α7III』に装着してみたところ、α7シリーズのスタイリッシュな見た目によく合う洗練されたデザインであることはもちろん、ボディとレンズの重量のバランスが非常に良いことに感動しました。
そして、今までのFEレンズラインナップには無かった「28-75」という焦点距離も魅力のうちの一つです。特に私は普段標準~中望遠域を使うことがほとんどなので、より望遠域に特化しつつも軽量さを維持している本レンズの発売を心待ちにしていました。たかが5mm、されど5mmです。かゆいところに手が届く、とはまさにこのこと。24-70mmや28-70mmでは撮ることのできない、5mm先の世界を捉えることが出来るのです。
今回本レンズを携え向かった先は、富士山のお膝元である河口湖周辺です。
河口湖と富士山を一緒に収めたいと思い、初めてスワンボートに乗りました。意外と重労働でしたが、その甲斐あってか素晴らしい景色を写真に収めることができました。河口湖の水面の穏やかさから富士山の頂上に積もる雪の質感に至るまで、見事に描写してくれています。正直なところここまで写るとは思っておらず、本レンズには良い意味で裏切られました。
富士山を堪能した後に向かった先は、青木ヶ原樹海にある洞窟です。東京~山梨間は車で移動すると片道1時間半程とそれほど遠くはありません。ですが、樹海の静けさと天然の洞窟を目の当たりにすると、とんでもなく遠くまで来てしまったかのような錯覚に陥ります。
洞窟内の平均気温は3℃。天然の洞窟だけあって、ほとんど這いつくばらないと通れないような険しい道もありました。
暗い洞窟内で撮影をしていると、暗所でも迷わずピントを合わせてくれる本レンズのAF性能と、ISO5000でもノイズを感じさせない写りを見せてくれるα7IIIの高感度耐性の素晴らしさをひしひしと感じます。
はっきりとしたコントラスト、だけれども線は柔らかくどこか優しい雰囲気の写りをするというのが私の中でのTAMRONレンズのイメージでしたが、本レンズは今までのTAMRONレンズのイメージを覆すかのように隅々までシャープで鮮明です。目の前にある光景をより鮮やかに見せてくれる印象を受けました。
次に訪れたのは、近くにあった宝石の博物館です。広い室内の中にたくさんの宝石がディスプレイされていて、まさに夢のような空間でした。隣接したショーケースのうちのひとつにピントを合わせたのですが、TAMRON特有の被写体に吸い付くようなフォーカスの速さと精度の高さには毎回のことながら感動します。
更に足を延ばして今度はオルゴール博物館へ。こちらはとても珍しい、自動演奏の出来るバイオリンです。自動演奏の出来るピアノはよく見かけますが、バイオリンは初めて見ます。
本レンズのワイド端の最短撮影距離は0.19mで、テレ端の場合は0.39mまで近寄ることが可能です。風景やスナップだけでなく、物撮りでも大いに活躍してくれることでしょう。
バラの時期だったということもあり、館内にはたくさんのバラが咲いていました。
スポットライトのように眩しいくらい強い光が当たっていたので少し写りが心配でしたが、レンズ表面にタムロン独自のBBARコーティングが施されているおかげでご覧の通り逆光耐性も申し分ありません。
15時になると、人形の指揮に合わせて庭園の噴水が一斉に吹き出しました。気づいたときにはもう終わりかけで、本当に最後の最後の瞬間を捉えた1枚です。慌ててシャッターを切ったのですが、それを思わせない写りを見せてくれました。舞い上がる水しぶきの一粒まで逃しません。
コントラストの高いTAMRONレンズの描写と鮮やかなα7IIIの色表現のおかげで、バラの美しさがより一層際立ちます。
こちらの写真は幾重にも折り重なったバラの花びらにピントを合わせましたが、あまりの花びらの質感描写の素晴らしさにしばらく目が離せませんでした。
一通り写真を撮った帰り道に出会った、穴場撮影スポットです。
富士山が見える位置に面してはいませんが、近くには山しかなく、居るのは2人の釣り人だけ。そして、ちょうど日が沈むところに一筋の飛行機雲が。少しでもこの景色の美しさを伝えたいと思い、夢中でシャッターを切りました。
使用機材:SONY α7III + TAMRON 28-75mm F2.8 DiIII RXD
この写真を友人に見せたときに「どうやったらそんなとろけるような感じに水が撮れるの?」と聞かれました。私はただシャッターを切っているだけで、なんにもしていません。凄いのはこのカメラとレンズなのです。
非の打ちどころの無いレンズ
『TAMRON 28-75mm F2.8 DiIII RXD』いかがでしたでしょうか。
私は基本的に、旅行の時でもいつでも50mm1本か35mm1本しか持ち歩きません。それゆえにズームレンズを使うのはとても久しぶりのことでした。いつもと違う装備に最初は落ち着きませんでしたが、普段多くても1日に200枚くらいしか写真を撮らない私が、2日間でなんと1,000枚近くの写真を撮っていました。それだけこのレンズが楽しかったのです。 使えば使うほどにこのレンズの魅力に引き込まれていくのが自分でもよくわかりました。
そう思えるのも、単焦点レンズに勝るとも劣らない本レンズの描写性能があってこそ。更にそれに加えて本レンズは軽量・コンパクトで携帯性も抜群ですから、非の打ちどころがありません。ちょっと遠出して撮影に行ったり、旅行に行ったりする際にこれ以上にベストなレンズが思い当らないほどです。
非常に人気の高い本レンズですが、恐らくこの人気はずっと続くことでしょう。むしろ、品薄状態が解消されていろいろなところでレビューや口コミが投稿され始めてからさらに勢いが増すように思います。
レンズの性能の高さとレンズの大きさは必ずしも比例するものではない、ということを体現してくれた本レンズ。リーズナブルでコンパクトだとその性能を心配する方もいるかもしれません。ですが、そういう方にこそぜひ使っていただきたいレンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff