FUJIFILMXF16-80mm F4 R OIS WR
焦点域で選ぶのか、明るさで選ぶのか、多くの方が直面するズームレンズ選びのテーマだと思います。フジフイルムのXFレンズで言えば、通称・大三元レンズに相当する『XF16-55mm F2.8 R LM WR』のF2.8通しズームがあり、焦点距離なら7.5倍のズーム域をカバーできる『XF18-135mm F3.5-5.6 R LM OIS WR』がラインアップされています。しかし欲を言うのであれば、他社製で言う24-105mm F4や、24-120mm F4のような使いやすい焦点域とF値通しを両立させた高性能ズームレンズが欲しいと思っていました。今回のKasyapaはまさにそのポジションを埋める5倍ズームレンズ『FUJIFILM XF16-80mm F4 R OIS WR』をご紹介いたします。
大き過ぎない鏡胴はX-T3に装着するとベストマッチと思えるレンズサイズ。最初に訪れたのは広角側が撮れるレンズを持ったなら一度は試し撮りしたくなる都内の有名スポットです。整然と並べられた白い丸テーブルと印象的なカーブを描く硝子窓から差し込む光が美しい空間。フルサイズ換算で20mmだと少し広過ぎ、35mmだとやや物足りないと感じるこの場所は、本レンズの広角端である換算24mmなら丁度良い画が撮れました。日差しが良く窓の影が浮かび上がるような天気・時間なら、モノクロでの撮影も狙ってみたいスポットです。
全身にデニムを身にまとったイタリアのベスパPXシリーズ。35mm付近で撮影すれば、無理なく被写体を主役にした画作りをすることができます。デニムの風合いを表現したいと思い、フィルムシミュレーションはVelvia(ビビッド)を選択し、その質感やグラデーションを強調してみました。また、ファーストカットは1/20秒、このカットは1/50秒でシャッターを切ったのですが、『XF16-80mm F4 R OIS WR』には世界最高の6.0段分の手ブレ補正機能が内蔵されていることもあって、ブレる心配もなく安定して撮影ができました。ボディ内に手ブレ補正機能を持たないX-T3やX-T30には心強いレンズです。
日差しが夕日に変わり始める時間帯、ふと見上げるとそこには怪しげな影が。未確認飛行物体の影でもアメコミヒーローの影でもなく、こちらはハロウィン装飾の影です。望遠端である80mmで撮影したのですが、ズームキットのXF18-55mm F2.8-4 R LM OISではこのような迫力で切り取れなかったことでしょう。あとちょっとの望遠域の有り難さを感じた一枚です。
使用機材:FUJIFILM X-T30 + XF16-80mm F4 R OIS WR
思わず見上げて写真を撮ってしまう東京駅のドーム天井。この時も多くの方が天井にカメラやスマートフォンを向けて撮影をしていました。八角形の支柱には干支のモチーフが描かれいたり、3階のテラス下には月の満ち欠けが表現されていたりと、知れば知るほど奥が深い東京駅は被写体としても建築物としてもお気に入りです。ISO感度を800に上げたものの、切ったシャッタースピードは1/20秒。ここでも本レンズの強力な手ブレ補正が効いてくれました。
また、この写真を見て「何か細かい模様が見える」とお気づきでしょうか。これは鳩避けの網が写っているのです。開放F4の描写の良さと、フルサイズでは得られない被写界深度の深さは、ボケ過ぎで画を崩すことなく撮影することができます。
使用機材:FUJIFILM X-T30 + XF16-80mm F4 R OIS WR
使用機材:FUJIFILM X-T30 + XF16-80mm F4 R OIS WR
洋館のサンルームに差し込む日差しを撮影した一枚。白と黒の市松模様の床タイルをより印象的にしたいと思い、影やコントラストを強調したモノクロームのフィルムシミュレーションであるACROSで撮影しました。写真左側にあえてドアノブを写し入れることで、ドア窓越しに自然に覗き込んだ雰囲気を残しています。洋館の撮影は屋内からのものや、建物そのものを撮ることが多いですが、こうして屋外から一部にフォーカスした撮影も楽しいものです。
使用機材:FUJIFILM X-T30 + XF16-80mm F4 R OIS WR
洋館を背景に今が見頃を迎えている秋バラを撮ってみました。こうした被写体では大口径レンズを使用してボケ味を強調した画作りもありますが、主役であるバラを写しつつも背景にある洋館の雰囲気を残した絵作りにするのであれば、本レンズのようなF4始まりのズームレンズもおすすめです。胸のすくような青空のもと、暖かい陽光に照らされた庭園の雰囲気を表現したく、ほんの少し露出はオーバー寄りに振っていますが、淡い色のバラも白トビせず美しく写真に収めることができました。
軽快に撮影できる、XFレンズの新しいスタンダード
35mm判換算で24-120mm相当の『XF16-80mm F4 R OIS WR』。5倍ズームのレンズとはいえ、写りに妥協はなくボケ味も自然、レンズ自体の造り込みもしっかりしていながらコンパクトで軽量と、描写力と高品質を兼ね備えたXFレンズらしいズームレンズです。広角から望遠まで使用し様々な被写体を撮影しましたが、思いのままに切り取れるズーム域が本レンズならではの魅力だと感じました。X-T3やX-T30などXシリーズのボディはコンパクトで軽量なものが多いですが、それを損ねることなく軽快に持ち出すことができます。旅行先での作品撮りや、登山を兼ねた撮影など、荷物を減らしつつも描写に妥協したくないシーンで活躍してくれそうな1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff