「FUJIFILM X20」は、富士フイルムのコンパクトXシリーズX10の後継となるモデルで、光学系は手ブレ補正機能付きの28-112mm F2.0-2.8と同じだが、センサーはローパスフィルター無しの高精細なX-Trans CMOS IIセンサーとなり、フジノンレンズの性能を引き出せるようになった。画素数は据え置きの1200万画素だがEXR CMOSセンサーよりも、解像感が上がりキレのあるコンパクトデジカメとなった。
X10を受け継いだボディーは、新たにシルバーが加わりクラシカルなデザインがより強く打ち出されたように思う。ダイヤルの側面など、シルバーだからこそ見える陰影がある。落ち着いた雰囲気で「塊」感のあるブラックと、パーツのそれぞれの個性が際立つシルバーの2色はなかなか悩ましい存在だ。
X20には新たに光学ファインダー内にデジタルトランス液晶を搭載することで、ファインダー内の絞りやシャッタースピードの表示、さらにオートフォーカスフレームの表示も実現した。これによって、光学ファインダーでのAF撮影がより実用的になった。
さらにこのAFは、センサー内に位相差センサーを搭載する「インテリジェントハイブリッドAF」となり、スナップ撮影が気持ちよくできる強い味方といえる。
AF機能は、思ったところにピタッとピントが合う「オートエリアAF」や、構図の中の任意のポイントにピントを合わせる「エリア選択AF」など撮影スタイルに合わせて使い分けると良いだろう。
X20を使っていて思うのは、枚数を気にせず撮影できるコンパクトデジタルカメラなのにも関わらず、フィルムカメラのように丁寧に一枚一枚撮ってしまう不思議な作法みたいなものを感じた。絞りの制御、露出補正など直感的に操作でき特に難しい要素はないのだが、X20の佇まいが不思議とそうさせているのかもしれない。
程よい重さのあるズームリングの操作も、細かくフレーミングする際に役立ち、電動ズームでは味わえない独特の撮影感覚をもたらしているのだろう。
AF/MFの切り替えもメニューではなく、本体前面のレバーで切り替えるメカニカル式のため直感操作が可能で、瞬時に撮影方法を切り替える事ができる点もX20の良さだ。MF時にはピントのイメージを掴みやすいピーキング表示機能が付いているため、MFによる撮影も楽しく行うことができた。
富士フイルムと言えばフィルムシミュレーションも魅力の一つ。素材としてのスタンダードの仕上がりも良いが、青空や赤や緑を見つけたらついついベルビアモードを試してみたくなる。ベルビアモードの濃い青、空の青は素晴らしい。それぞれの美しい仕上がりをみると、X20がコンパクトデジカメであることを忘れてしまうほどだ。
開放F値2.0~F2.8の明るいズームレンズは、屋内での撮影やぼけを活かした近接撮影などに威力を発揮する。広角端でのマクロモードの最短撮影距離は約10cmだが、スーパーマクロモードに切り替える事で最短撮影距離1cmまでの接写が可能となる。X20の、寄れる広角レンズは撮影が楽しく、ダイナミックな写真表現が可能だ。このように最新のフジノンレンズのボケの綺麗さ、マクロ機能などクリエイティビティーの高い光学系の面と、F2.0~2.8明るさと光学手ブレ補正の実用性も兼ね備えたシステムであると言える。
X20は、手にした時の感触そして細部まで作り込まれたデザイン、Qボタン/Fnボタンなどのアシスト機能や、直感的に操作できる露出補正ダイヤルなど自分の「もの」としての喜びを感じることができるプレミアムコンパクトだ。
Photo by MAP CAMERA Staff