FUJIFILMの大口径レンズ『XF 56mm F1.2 R APD』のご紹介です。 レンズ名を聞いて、あれ?と思われる方もいるかもしれません。『XF56mm F1.2 R』というレンズが2014年2月に既に発売されているからです。派生モデルとして登場した本レンズの最大の特徴は『APD(アポダイゼーション)フィルター』というものが内蔵されている事。これは中心部から周辺部に向けてグラデーションのかかった特殊なNDフィルターの事で、ボケの輪郭を滑らかにし柔らかく美しいボケ味を表現する事のできる機構です。果たしてそのAPDの効果はいかに。ボケ味を生かすため絞り開放で撮影をしてきました。
まず1枚目、植物の蔓など細い被写体のアウトフォーカスはザワザワした印象になりがちですが、さすがAPDと言ったところでしょうか、柔らかく滑らかなボケ味です。 そして2枚目の写真でも分かるように絞り開放から十分にシャープなフォーカス面です。深いボケ味も相まって立体的な写真表現が可能です。
APDフィルターはレンズ構成の中に組み込まれているので、大きさやフォルムは元となった 『XF56mm F1.2 R』と変わりません。最も特徴的なのは絞り値の部分。通常の白字の表記とは別に朱色の数値が刻まれています。 前にも述べましたがAPDフィルターはNDフィルター、つまり“減光”するフィルターです。例えば解放時の被写界深度は白色のF1.2ですが、露出に反映される実行絞り値は朱色のF1.7になるという表記がされています。絞り込むにつれ減光量が変化をしF5.6から被写界深度と実行絞り値は同じになります。シビアにマニュアルで露出を決める際には少し注意が必要かもしれません。
とろけるようなボケ味はモノクローム撮影でも写真の質を変えてくれます。
柔らかいボケ味のレンズと言ってもソフトフォーカスレンズとは違います。フォーカス面はしっかりと解像しますが硬さは感じられず、被写体の質感を上品に表現してくれるレンズです。
イルミネーションを撮影してみました。点光源の輪郭がふわりと滲んでいるのが分かります。
シャープさと柔らかさを併せ持つ本レンズは撮影者を魅了する描写性を持っています。派生モデルでこのようなレンズを作ったFUJIFILMの写真に対する熱意が感じられました。
様々なレンズを試す機会があるのですが、この『FUJIFILM XF 56mm F1.2 R APD』のような均一で滑らかなボケ味を生み出すレンズはなかなか出会った事がありません。ボケ味の好みというのは撮影者によって分かれるものですが、本レンズは全ての人が「美しい」と思える味付けがされていると思います。今回は少し暗い状況での撮影が多かった為NDフィルターは使用しませんでしたが、本レンズのパッケージとしてNDフィルターの8が同梱されています。これはメーカーとしても『開放でボケ味を楽しんでください』という意図があるもの。使用してその自信とこだわりを『FUJIFILM XF 56mm F1.2 R APD』から感じる事ができました。ポートレートのみならず静物写真でも大きな魅力を引き出してくれる本レンズは、全てのXマウントユーザーにその描写力を味わっていただきたいと思える1本でした。
Photo by MAP CAMERA Staff