数多いカメラの中で『フラッグシップ』と呼ばれているプロフェッショナル向けの機種が存在します。過酷な撮影シーンに耐えうる堅牢性と、突然のシャッターチャンスに対応できるレスポンス性を兼ね備え、決定的瞬間を逃さない高性能な最上位機種。今回は一眼レフの歴史をリードしてきたニコンが満を持して登場させたフラッグシップモデル『Nikon D6』をご紹介いたします。 世界中の報道カメラマンやフォトグラファーから絶大な信頼を得ているニコンの一眼レフ。1959年に登場した『Nikon F』から現代に続くフラッグシップの系譜は、その時代の最高技術と性能を取り入れて作られてきました。今回の『D6』ではフラッグシップモデルの肝とも言えるAFシステムを一新し、1つのフォーカスポイントを縦横3列ずつのAFセンサーで被写体を捉えるトリプルセンサーを採用。105点のフォーカスポイントが従来機『D5』と比べて約1.6倍の高密度で配置されているというのですから驚きです。さらに新開発のAF専用エンジンを搭載し、約14コマ/秒の高速連写中でも被写体の動きを演算する事によってピント精度が飛躍的に向上したとの事。フラッグシップモデルに求められる“信頼性”を第一に強化してきたところが実にニコンらしいと思いました。今回はその『D6』を携え、海沿いの街へ撮影に出かけました。写真から本機の魅力を感じていただけたら幸いです。
崖の中腹で羽を休めるトビを捉えた一枚。出発の際、望遠ズームを『AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8E FL ED VR』にしようか迷ったのですが、野鳥などの被写体も考え400mmまでカバーできる『AF-S NIKKOR 80-400mm F4.5-5.6G ED VR』を選んで正解でした。トビの表情や羽毛の質感はもちろん、ザラザラとした岩肌まで緻密に写し出しているのがわかります。
ジリジリとした暑さを感じる季節になってきました。写真は砂浜で遊んでいた少年が海へ飛び込んだ時を捉えた一枚。飛び散る水しぶきが涼しげで、とても気持ち良さそうです。
海から移動中の一コマ。光の捉え方が絶妙だなと感じた一枚です。
今回撮影した中でもお気に入りの一枚。浮かび上がるような木目と金属の質感表現に思わず鳥肌が立ちました。様々な機材で撮影する機会が多い私ですが、このような写りをするカメラはなかなかありません。35mmフルサイズで2082万画素というと控え目な数字に聞こえますが、表現力はトップクラスだと言えるでしょう。
鳥居のある洞窟に入ると壁に弁財天が彫られていました。光の少ない状況ということもあり、ISO感度はなんと25600です。ざらりとした岩肌も相まって、ノイズを感じさせない一枚に。昔から高感度に強いニコンのフラッグシップでしたが、『D6』がここまで優れた高感度耐性とは驚きました。
夕日に染まる水面を撮りたいと思い、再び海辺へ。景色が美しい色に包まれる最高の時間帯です。
最後は帰路に撮影した駅の一枚。電車のライトに浮かび上がる線路と枕木のトーンが絶妙です。
ニコン一眼レフの集大成
今回の『Nikon D6』の撮影で、改めて一眼レフの素晴らしさを実感することができました。まずニコンの代名詞とも言えるファインダーの良さとシャッター音。どんなに細密になったEVFでも、空気までも見えるような『D6』のプリズムファインダーには敵わない領域があると感じます。そしてミラーアップが織りなすカメラらしいシャッター音。メリットでいえばミラーレス構造や電子シャッターが有利かもしれませんが、シャッターを切った感触や、撮る気持ちにさせてくれる音など、感覚的な情報が多い分、いい意味での緊張感を与えてくれると感じました。これは被写体と向き合う上でとても重要な事では無いかなと思います。 全ての性能をフルに活かせる撮影までとはいきませんでしたが、画作りの良さを確かに感じることができた撮影でした。どうしても連写性能やAF性能ばかりに目が行きがちになるフラッグシップモデルですが、画作りの良さはカタログやスペックシートでは語れません。『D6』は風景からポートレートはもちろん、スポーツやスタジオ撮影など全ての撮影シーンに高いレベルで対応できる最高の機種です。素晴らしい一台でした。
Photo by MAP CAMERA Staff