今回はフジフイルムのGFX用の大口径中望遠レンズ『FUJIFILM フジノン GF110mmF2 R LM WR』のフォトプレビューをお届けいたします。35mm判換算値87mm相当で明るい開放絞り値F2による浅い被写界深度と、ピントの合った部分の高い解像力。9群14枚のうちEDレンズを4枚使用しており、球面収差や色収差を極限まで抑えています。インナーフォーカスのAFはスッと合い、合焦時に気づかないほど駆動音もほぼしません。ノンリニアで動かせるマニュアルフォーカスもピントリングは軽すぎることがなく精密な操作が可能です。ポートレートは勿論スタジオやファッション撮影などで活躍が目覚ましい当レンズ、Kasyapaではスナップ撮影を中心にレンズのご紹介をさせていただきますのでぜひご覧ください。
開放絞りで撮影した秋桜。花びらの透明感、柔らかな描写が目を引きますが、ラージセンサーだからこその被写界深度手前奥のボケもうっとりする写りです。
陽射しが差し込むまっすぐ続く道というのが好きで見かける度撮ってしまうのですが、今までに感じたことのない立体感に画面の前でため息が漏れました。F1.0以下のボケの世界は今までも見てきましたが、それともまた違うまさしく別格の描写、肉眼では感じることの出来ないピント面とボケの描き分け。このレンズの中景にピントを合わせた際の立体感ある描写は他では得られないのではないでしょうか。
逆光で明暗差が生まれたウネウネと伸びる樹々の面妖さにギョッとした1枚。苔が生した表面のモコモコ感を伝えるために原寸サイズを掲載しています。フィルムシミュレーションの「Velvia」を当てていますが、ネイチャーフォトにはピッタリの彩度と発色です。
この1枚も「Velvia」を当てています。筆者は「Velvia」のポジフィルムを見ていた時、いつも感じていたパープルの発色がこの画にも表れたことに少し興奮しました。勿論XFシリーズでも感じることはありましたが、ラージセンサーならではの色の深みのおかげか、その感覚をよりリアルに感じました。
この1枚を撮った日は雨が降り出して光もあまり良い環境ではありませんでした。このシチュエーションでもレンズの解像は活きたままなのか、意地悪と興味半分で写してみたのですが驚くような緻密な描写。小さいディスプレイではむしろ目が痛くなるほどの高解像度。縮小サイズですが、十分に解像が伝わると思いますのでぜひ拡大して見てみてください。
公演のない日のステージを見ることが出来るということで立ち寄ってみました。誰もいない客席がずっと続いていく画が面白くて撮ってみましたが、思わぬレンズテストみたいな感じになりました。いかがでしょうか、隅まで均一な写り。ピント面からスゥーっとボケていく様も魅入ってしまいます。まるでバーチャル空間のような、ずっと眺めているとなんだか引き込まれてしまいそうな感覚になる1枚です。
餌の用意をしているのが分かるのか柵から頭を乗り出しこちらを見つめている馬がいました。ぜひ拡大してご覧いただきたいのですが、目元から頭髪にかけての解像感や見事の一言。さらにいうと白飛びしてしまってもおかしくない髪の部分にもしっかりとデータが残っていました。「ACROS+REDフィルター」に設定しましたが程良いコントラストが生まれました。色々と試行錯誤するのが面白いのも「ACROS」の魅力の一つです。
夕暮れ前の牛舎。用務員の方が箒で払った砂埃が逆光を受け、霧のようになった瞬間を撮影しました。大気中の丸いボケは埃や虫だったりしますが、こうして見ると神秘的に見えるのが不思議です。逆光を受けて輝く体毛の一本一本までしっかり解像できているからこそ生まれるシャープさ。当レンズの底力を見た1枚です。
陽が射し込む室内。実は何度も足を運んだことのある場所なのですが、夕暮れ時に来たのは初めてでこんな陽の当たり方をするのかと感動したのを覚えています。光と陰のシルエットが映える順光、思い通りに写ってくれました。
こちらの夕焼けはフィルムシミュレーションの「クラシックネガ」を当てています。「クラシックネガ」はコントラストが上がる印象があったので、この逆光では白飛びしてしまうだろうと思っていました。しかし実際のデータを見てみると逆光のハイライトは白飛びはありませんでした。さすがフィルムメーカー、よく考えられています。それにしても情感たっぷりの描写。このレンズを使っていると本当に撮る事が楽しくなってきます。
もうじき日が暮れそうな時間帯。母親に呼ばれ帰って行く子供たちをパンダの遊具はここから眺めています。ふとパンダの視界を開放絞りで覗いてみたら、優しく美しいボケ味に一目で虜になりました。そしてこのピント面の立体感の厚み、たまりません。
真髄と醍醐味。
カメラレンズに携わっていると伝えたくなる「透明感、立体感、解像感」。このレンズを使ってからよりその言葉を実感しました。ただボケ量が増えるのではなく、空間に厚みが増したような感覚。センサーサイズの大きさはその全ての表現と密接に関係しているのだと思います。中望遠距離で扱いやすく明るく、程良い被写界深度。解像しつつもカドの立たない毛一本一本の自然な描写。今ラージセンサーの魅力を存分に楽しむなら『FUJIFILM フジノン GF110mmF2 R LM WR』が最良の選択であることに疑う余地はありません。ラージセンサーを使う意味、きっとこのレンズがその一つの答えにを出してくれるでしょう。
Photo by MAP CAMERA Staff