前回、既にSONY-Eマウントでご紹介させていただきました『SIGMA Contemporary 65mm F2 DG DN』。今回はLマウントの実写レビューをご紹介いたします。今回はSIGMAの新生「Iシリーズ」ということでまさにジャストフィットな『SIGMA fp』での組み合わせにしました。
光に透けた硝子素材は肉眼でもはっきりと分かる美しさなのですが、その魅力を取りこぼすことなく表現してくれました。65mmは写真画角としては珍しい部類に入ると思うのですが、もしかしたら自分の普段の目の使い方は65mmに似ていたのかもしれない、と思うくらいスンナリと馴染みました。f5.6に絞るとピントを置いた主題の周りがボケすぎず、全体的に見せてくれました。
最短撮影距離55cmでほんの少しだけ絞った画。被写体を引き立たせるためのボケ量としては充分かと思いますし、こういう風に切り取れるほどの寄りが出来るのは強みです。
店外から漏れる自然光を頼りに撮影しました。あえてカップの黒潰れの部分はそのままにしていますが、ハイライトからシャドウに至るまでトーンがしっかり残っていて、このカフェラテのように素晴らしい写りです。
シャツのボーダーにモアレが出ているように見えますが実寸サイズの画像を確認したところ、しっかりとボーダーが解像されていることを確認いたしました。開放絞りでその解像を実現させていることに驚きを隠せません。中遠距離においてこのレンズの解像を心配する必要はほぼ無さそうです。
窓越しに沢山のジーンズが吊られている様が画になっていたのでガラス越しに撮影しました。前ボケは想像通り、ほんのりと写っている丸ボケも嫌な印象がありません。
日も傾いた時間帯の光を真正面から受けたシーンとはいえ『SIGMA Contemporary 45mm F2.8 DG DN』で撮った時と同じ、あえて「オールド」の雰囲気を残した描写がこの「Iシリーズ」にあるように感じました。筆者はこういった描写が好物なため大歓迎です。
開放絞りのピント面の解像と周りのボケ加減が最適なのか、写真をみた時にスッと被写体が入ってくる感覚があります。65mmという画角がそうさせるんだと思うのですが、標準域レンズとしても中望遠レンズとしても使える絶妙な画角だと思います。
林の奥で光を浴びて輝く植物を発見。願うような気持ちでピントを合わせましたが、またもや開放絞りの解像力を思い知らされる結果となりました。これだけゴチャゴチャした空間でも被写体がどこにあるのかが分かります。
一心同体
手に持った感触なのですが、ひんやりとした金属の質感がたまりません。たまにレンズと衣服の金属部分などに擦れてしまったとき「シャキーン」とした音が鳴るのですが、筆者はその音さえカッコよく聴こえます。肩から掛けても全くストレスのない重量で、歩きながらついついカチカチ鳴らしてしまう絞りリング。せっかくのオートフォーカスレンズなのに、わざわざじっくり合わせたくなるピントリング。ユーザー視点からしても「正直、やり過ぎじゃないか」とコスト面の心配をしてしまうくらいの完成度の高さです。
「Art」ラインがともに最高の芸術作品を作り出す相棒だとするなら、この「I」シリーズはどんなときも一緒にいる自分の分身のようなものでしょうか。確かにこの「I」シリーズなら片時も離れることない写真ライフを送れることでしょう。『SIGMA fp』ユーザーだけではなくコンパクトなレンズを望んでいた全ての方にぜひ使っていただきたいレンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff