小さく、軽く、コンパクト、それでいて高い描写力を持ち、所有する喜びを満たしてくれる。そんなカメラがあれば夢の様だが…そんな希望に迫る、新しい1台が登場した。『SONY a7R』、3640万画素フルサイズ・ローパスレスセンサーを搭載した待望のミラーレス一眼の登場である。
姉妹機の『SONY a7』と比べてフォーカスはコントラスト方式のみになるが、その分高画素化がはかられ、精密細緻な描写では一線を画す仕上がりが期待出来る。またセンサー周辺まで集光効率を上げる様マイクロレンズの角度に変化をつける等、内面的な違いは大きなものだ。外装に関してもマグネシウム合金を多用し、信頼感のある質感の高いその仕上がりは手にして頂ければお分かり頂けるだろう。
それでは、まずその描写をご覧頂ければと思う。今回は1カットを除いて全て同時発売の『Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA』を使用している。先鋭かつ濃厚な色乗りはさすがはZEISS、夕焼けの微妙な色合いも鮮やかに描き出してくれた。
反射の強い白はすぐに飛んでしまいやすい、質感を感じさせにくい難しい色だが、センサーサイズの余裕も有るのだろう、光の陰影の微妙な調子まで、しっかりと描き出すその描写力はさすがである。柱の部分もしっかりとご覧頂きたい、微妙な表面のエンボスまで描き分けるその精緻さは『SONY a7R』ならではと言えるのではないだろうか。
ここで、少し趣向を変えてオールドレンズを装着してのカットも掲載する。フルサイズでミラーレスとくれば、アダプターを使っての撮影も楽しみにされている方は多いのではないだろうか。この描写を見て頂ければ、”オールドレンズであれば低画素機で十分”というのが当てはまらない事もお分かり頂けるだろう。ギターの板目の反射、石材の時代を感じさせる陰影。オールドレンズの芯にある優れた描写力も『SONY a7R』は描き出してくれた。周辺光量落ちに配慮したセンサーといい、アダプター使用のベースとしても非常に魅力的な1台である。
かなりハイキーに振ったカットでも、描写の線が腰砕けにならないのは嬉しいポイントだ。
こういった何気ないカットで、ボケによる自然な遠近感が表現出来るのもフルサイズ・センサーの魅力だろう。被写体を自然と浮かび上がらせる事で、カメラマンの目線を感じさせるカットになる。
コントラストAFのみの『SONY a7R』だが、近接域でもフォーカススピードは素早い仕上がりである。ストレスを感じさせない俊敏な作動感は撮影していても気持ちよいものだ。
微妙な陰影や、深みの有る色彩にはめっぽう強い。夕暮れの難しいカラーバランスの中でも美しい再現だ。こうしたカットでも、磨りガラスの微妙なエンボスまで立体感が有るのはさすがのものだ。
ガラス質の、艶やかな被写体の陰影や繊細な輝きが実に美しい。大仰なボディでは場の空気を壊しかねない場合でも、このコンパクトサイズは活躍する。それでいてご覧頂いているこの描写力なのだから…手放しで褒めて良い仕上がりでは無いだろうか。
機材が軽いと、ついつい遠くまで足を伸ばしてしまう。信頼出来る描写であればなおさらだ。このコンパクトさと描写力の両立は、革新的とすら言って良いだろう。
少々クラシックな”一眼レフ”スタイルの外観だが、そこに秘めているポテンシャルは驚くべきものである。グリップは大きく肉厚で指がかりが良く、コンパクトながらハンドリングはすこぶる良い。使用頻度の高い露出補正ダイアルが大きく単独で配された操作系も使い勝手は良好だ。またセンターに配置されたEVFも、その位置からか違和感無く使用する事が出来る。視野も広く、チラツキや青かぶりの少ない完成度の高いファインダーは撮影する気分も盛り上げる『SONY a7R』の大きなポイントだろう。
まさに新時代を予感させる様なポテンシャルを秘め、登場した『SONY a7R』。発表されている交換レンズ群を含め、今後の展開に大いに期待してしまう完成度だ。
Photo by MAP CAMERA Staff