344:『Carl Zeiss Otus 28mm F1.4』
2016年03月29日
世界最高の広角レンズとしてカールツァイスから『Otus 28mm F1.4』がリリースされました。
これまの55mmや85mmのOtusシリーズの性能を考えれば本レンズの凄さも容易に想像できますが、「世界最高」と謳う実力はいかに。さっそく撮影に出掛けてきました。
フィルター径95mm「280mmの間違いじゃないの?」とツッコミを入れたくなる大きなの鏡筒は重さ1350g。肩に食い込む重さに加え、マニュアルフォーカスによるピントを合わせはスポーツの様な感覚です。
仕上がりは納得の高画質。レンズのトップブランドが語る「世界最高」は伊達ではありません。撮影の労力に見合った素晴らしい解像力を見ることができました。
強い日差しの下での逆光開放撮影。肉眼でも見づらい石垣や木々の様子をしっかり捉えてくれます。贅沢な光学設計は過酷なシチュエーションにも耐える高いポテンシャルを確認することができました。
F1.4の明るいレンズは薄暗い室内でも被写体の質感を見事に捉えます。金色に統一された装飾も高いコントラストのおかげで細部が引き立ち、迫力を増して伝わります。
直線描写も綺麗です。歴史ある建物の重厚感と装飾による上品さをバランス良く表現しています。
結婚式上の入口の置かれたブーケも大きなボケが綺麗に浮き立たせてくれます。しかし、ここまで造花感がでてしまうと良く写りすぎるのも考えものですね。
大きな水瓶の中に飼われていた金魚。瓶の上には日差し除けの板が置かれておりその隙間からレンズの先端だけ近づけて撮影しました。
実際の中はもっと薄暗かったのですが、金魚の色鮮やかな姿を上手に捉えてくれました。水草や水面に落ちた梅の花も上品に描いています。
最短30cmでの撮影では、柔らかい前ボケととろけるような後ろボケを楽しむことができました。シャープなイメージの広角レンズですが、大口径F1.4の威力を改めて感じることができます。
こちらは寺院の御手洗。水面の波紋や反射を綺麗に捉えてくれました。こちらもしっとりと上品な描写で、写真を見ているだけで水の流れる音が聞こえてきそうです。
先の金魚の水瓶と同じ透明な水が被写体ですが、その時々の様子がしっかり印象に残ります。
ビルの隙間から溢れる日差しがスポットライトの様にレンガのビルを照らします。明暗差が大きなシーンでもレンガの目がしっかり確認できる高い解像力です。
F1.4の開放でもさほど気にならなかった周辺光量減ですが、F2.8まで絞るとその気配は全くなくなります。画面全体で光のコントラストを綺麗に再現してくれました。
続いてカメラボディを『Canon 5Ds R』へスイッチ。晴天時の屋外での開放撮影は1/8000でシャッターを切っても難しい時がありますが、ハイキー気味に仕上がってもとても印象のいい写りをしてくれます。ツァイスレンズらしい高コントラストと高解像力は、ちょっと露出が前後しても画が飛んだり潰れてしまう心配がありません。
Canonボディとツァイスレンズの組み合わせが生み出す濃密な黒。しかしその黒の中にもしっかりと画を写し出しています。
広角レンズといえど、その被写界深度はとても浅いのがこの『CarlZeiss Otus 28mm F1.4』の特徴。ボケを生かそうと近接撮影する際には、本レンズの大きな影が写りこまないようにする注意が必要です。
焦点距離28mmは室内など撮影位置が限られた空間でも活躍してくれるレンズです。コクのある色と写り味は写真のようなアンティークな雰囲気にぴったりとはまりました。
長く伸びた自身の影を構図に組み入れてのカット。レンズの大きさは可愛くないですが用途としては幅広く使用できることでしょう。
ツァイスレンズは被写体の魅力をより強調して写し出す”力”のようなものがあると私は感じているのですが、本レンズもまさしくその1本です。超がつくほど高い解像力と味わい深い描写力を併せ持っています。
モノクロ表現もいいですね。ハイコントラストでビターな写り味はこの写真のような被写体との相性がとてもいいです。
中判写真に匹敵する質感と描写力が味わえるというOtusレンズはそのサイズ感も中判並み。そしてその期待を裏切らないハイパフォーマンスを披露してくれました。
カールツァイスを含め、他にも魅力的なレンズが揃う28mmですが開放F1.4となるとライバルはライカのズミルックスだけ。一眼レフ用としては唯一無二の存在です。
まさにこのレンズでしか撮れない画があります。世界最高のキャッチフレーズに偽りなし。一度味わったら他に戻れない魔性のレンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff