CanonRF70-200mm F2.8L IS USM
大三元レンズの一本である70-200mm F2.8がついにRFマウントで登場しました。このレンズはRFマウントとして初となるキヤノン伝統の白レンズ。描写性や操作性、堅牢性など最高レベルの性能を持ったLレンズです。RF70-200mm F2.8L IS USMの特徴は何と言ってもそのコンパクトさにあります。一眼レフ用のEF70-200mm F2.8L IS III USMとは違い、レンズの全長が変化するズームタイプを採用した事で重量は約1070グラム(三脚座を除く)、全長は146mmとフルサイズ用の望遠ズームとしてはかなりコンパクトな仕上がりになっています。F2.8でこの持ち運び易さは他のレンズにはない唯一無二のものと言えるでしょう。
ズーム全域で最短撮影距離が0.7mになり、静止画撮影時には高速AF、動画撮影時には滑らかなAFを実現できています。コンパクトになった新しいキヤノンのナナニッパの描写力をご紹介したいと思います。
カメラを持って向かったのは長野県。久しぶりにのんびりと遠出をしてみたく、あまり行き先を決めずに出かけてみました。一枚目は真っ赤に染めあがったもみじの写真です。V字になっている木の幹の間から木漏れ日に照らされている楓が垣間見えていました。楓の赤と影の黒のコントラストがはっきりとしており、透き通った葉の葉脈までしっかりとシャープに描写されています。紅葉は気温の急激な低下により起こる現象であり、私にとっては美しい紅葉を見ると本格的な冬が迫って来ていることを感じさせるサインとなっています。
紅葉の撮影中、川の土手に一羽のサギを発見しました。近くの畑では野焼きが行われており、若干煙たい状況でしたが、飛び立つ瞬間をじっと待って撮れたのがこの一枚。奥に見える山々を背景に、大きな白い翼を広げて飛び去るサギの姿は夕日に照らされており、神々しさと優雅さを感じました。高速AFのお陰でしっかりと追うことができ、翼が一番広がった瞬間をしっかりと狙うことができました。
日も傾き始めた頃、長野市内に戻り散策をしていて見つけた柿。木に葉は一枚も残っておらず、一つの柿だけがぽつんとありました。決して取れないこともない高さにあり、わざと残しているのだろうかその存在の寂寥感がありつつ、色々と考える中で寒色で暗めに撮ることでまとまりました。この日の撮影はここまでにし、早朝の高速バスで東京に戻ります。
東京に着き、その足で都会のスナップ撮影に挑戦。カメラバッグ一つで動き回れるのもRF70-200mm F2.8 L IS USMのコンパクトさのお陰でしょう。実際、普段は標準レンズを入れているスペースにそのまま収納でき、空いたスペースには他の荷物を入れることができました。さて、はじめに向かったのは六本木。ビルの隙間によって作られた光の帯を縦断するように人が歩いていました。赤と緑、黒の三色が見たままに再現されています。
屋外の休憩スペース。机と椅子の並びと人の座っている場所にどこか法則性がありそうに感じた場面でした。床の木目が鮮明に描写されており、画面周辺までしっかりと線で捉えられているのが分かります。
そして、場所を銀座へ。街灯に付けられた雪の結晶を模した装飾。奥には夕日に照らされたビルの外壁が輝いていました。望遠による圧縮効果と綺麗な丸ぼけにより幻想的な雰囲気を作ることができました。
ビルに入り、上層階から地上を見下ろす形で撮影。昨日までは長野でのんびりとしていた分、いつも以上に都会の人の多さに驚かされます。横断歩道を行き交う人々の服装はみな様々で、一人で歩く人、家族で歩く人など見ていて飽きないものです。ぶつかることなく交差していくのも不思議に思えてきます。ファインダーを覗きながら集中して撮れるのも画面端までの歪みのないレンズのお陰だと思います。
交差点の撮影を終え、先程まで見ていた人混みに戻るまでのエスカレーターでの一枚。金属のメタリックな質感はさすが銀座と言わせるような近代的な空間でした。くすみを感じない輝いた銀の柱には東京メトロの看板が連なって写り込んでいました。画面右側の柱にピントを合わせ、向かいから登ってくる人をぼかしてみました。ガラス越しに見える銀座の風景をゆったり眺めている人と、近代的な空間がちょっとした非日常に感じた瞬間でした。
最後に向かったのは日比谷公園でした。強い夕陽の中、花壇に咲く花を見つけ逆光ですかさず撮影。木漏れ日が無数の丸ぼけを作り、花の輪郭には光の膜ができ幻想的なカットを得られました。丸ぼけのハイライト部分に花を入れるか迷いましたが、入れなかったことで花から光が溢れているかのような演出になったのではないでしょうか。逆光でのフレアやゴーストはあまり感じなく、逆光耐性もしっかりしていることが分かります。
新時代の白レンズ
より扱いやすくなった大三元レンズのRF70-200mm F2.8 L IS USM。持っている感覚は少し大きめの標準ズームレンズといった感じですが、実際はF2.8通しの望遠ズームレンズ。はじめはレンズの長さが変化することに違和感を感じる部分もありましたが、撮影しているとすぐに慣れ、小さなEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMを使っている感覚になりました。そして何より、コンパクトであることは歩き回って撮影する私にとってはありがたいことでした。気軽に望遠レンズを持ち歩けることで、瞬間を逃さない高速AFによるスナップ撮影は勿論のこと、動体撮影にも大きな力を発揮するでしょう。
キヤノン製フルサイズミラーレスカメラのこれからを担う望遠ズームらしい素晴らしい1本でした。
Photo by MAP CAMERA Staff