778: ラージフォーマットへようこそ。『FUJIFILM フジノン GF35-70mm F4.5-5.6 WR』
2022年07月20日
『FUJIFILM GFX 50S II』のキットレンズにも採用されている『FUJIFILM フジノン GF35-70mmF4.5-5.6 WR』。レンズ単体でのリーズナブルな価格に加え、日常生活に寄り添う35mm判換算28mm~55mm相当の扱いやすい画角。その強靭な手ブレ補正は『FUJIFILM GFX 50S II』と組み合わせることで最大6.5段に。非球面レンズ1枚・EDレンズ2枚を含む9群11枚の贅沢なレンズ構成でありながら、その重さはわずか390g。バッテリー・SDカードを含んだ状態でさえ約900gの『FUJIFILM GFX 50S II』にマウントすれば、ラージフォーマットであることを忘れてしまうほどの軽快感。そしてその期待を遥かに超える解像力が魅力の1本です。
持ち出しやすい『FUJIFILM GF35-70mmF4.5-5.6 WR』のレビューということで滅多にしない登山へ。早速頂上からの眺めですがいかがでしょう。ワイド端28mm・テレ端55mmという画角は記録写真の役割としては勿論、作品作りにも便利かつ非常に頼りになる1本。エモーショナルな夏空には「Classic Neg.」が最も似合うというのが個人的な意見です。山肌に点在する鉄塔までしっかりと写っているのだから言うことありません。
※今回のKasyapaは拡大写真を8156×6192pixelで掲載しております。高精細・高画質な描写をお楽しみください。
苔や岩石にも「Classic Neg.」を当ててしまいがちです。開放から充分シャープな『FUJIFILM フジノン GF35-70mmF4.5-5.6 WR』ですが、絞ることでますます解像力が向上。岩石の質感や苔が着生するまでの年月が伝わってくるような重さのある描写に思わずため息が漏れます。中央に光が降り注ぐシーンでの撮影ですが、周辺のシャドー部分の粘り具合が何とも言えません。
レンズには相当厳しいはずの逆光もこの通り。目立つゴースト・フレアの発生はなく、ピント面のシャープネスや瑞々しいボケ味が際立ちます。テレ端では絞りが5.6となりますが大きなセンサーサイズならではの立体感が奥行きの演出を助け、ラージフォーマットを選ぶ意味を感じさせてくれます。
丸太に乗るように生える植物に惹かれレンズを向けると背景に光の玉が浮かんでいました。中央は綺麗な円形、右側に若干楕円形のものも見受けられますがネガティブな印象はありません。木の隙間、葉の隙間から差し込む木漏れ日を活かした撮影ができるのも、登山の醍醐味です。「Velvia」か「PROVIA」か。フィルムを選ぶときはつい後者を選びがちだった筆者。ここは「Velvia」だったと後悔することがフィルムシミュレーションのおかげでなくなりました。
山を下りて神社へ。参道で迎えてくれる狛犬と鳥居をワイド端で1枚。オーバーで撮っても、アンダーで撮っても、あらゆる光を余すことなく繊細に描き分けることのできる『FUJIFILM フジノン GF35-70mmF4.5-5.6 WR』。逆光耐性や端正なボケ味、開放からのシャープな写りは控えめに言ってもキットレンズのそれではありません。
忘れてはいけないフィルムシミュレーション「ACROS」。一度終売したものの、その人気の高さから復活した銘フィルムはデジタル写真においても健在です。コントラストの高い本レンズとの相性は良く、締まりと重みのある黒が写真により一層の厚みを与えてくれます。鯉は水面ぎりぎりを泳いでいるため、ピントがしっかりと合うか心配でしたが全く問題ありませんでした。オートフォーカスについてですが、『FUJIFILM GFX 50S II』に搭載された「AFスピードアップ」という機能を使うことでセンサーの読み出し速度を2倍に。動きのある被写体に対しても安心してピントを合わせることが可能です。位相差AFでの使用も可能な『FUJIFILM GFX 100』や『FUJIFILM GFX 100S』との組み合わせでさらなる高速撮影の道が拓かれます。
日本の風景にピッタリなフジフイルムの色。そこにラージフォーマットが生み出す立体感と質感が組み合わされば、怖いものなどありません。緑のある景色を探して長時間持ち歩いていたものの、そのサイズのおかげで荷物になることはなく、その軽さのおかげで身体への負担にもなりませんでした。これだけ気軽に中判写真を楽しむことのできる時代が到来しているのです。この波に乗らない手はないでしょう。
ラージフォーマットへようこそ。
リーズナブルに。コンパクトに。ラージフォーマットをより身近に感じるために生まれた『FUJIFILM フジノン GF35-70mmF4.5-5.6 WR』を手に取って感じたのは中判用レンズとは思えない小ささと軽快さ。これで本当に5,000万画素、1億画素のセンサー全てを活かすことができるのか、筆者の勝手な不安をいとも簡単に吹き飛ばしてくれたのが本レンズです。ラージフォーマットの入口に。GFXという船の乗船券に。一度手にしたら引き返すことのできない世界へと誘う1本、ぜひ一度体感してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff