878: 誰もが魅了される超大口径『Voigtlander NOKTON 35mm F0.9 X-mount』
2023年08月08日
フォクトレンダーから「FUJIFILM Xマウント」用にまた魅力的なレンズが登場しました。今回ご紹介するのはなんと開放F値が「0.9」の超大口径標準レンズ『Voigtlander NOKTON 35mm F0.9 X-mount』です。「FUJIFILM Xマウント」用レンズは本レンズを含めて現在5本のラインナップですが『NOKTON 35mm F1.2 X-mount』『MACRO APO-ULTRON 35mm F2 X-mount』に続き35mmレンズ3本目になります。先のレンズどちらも個性がしっかりと分かれているので、本レンズがどんな描写をするのか非常に楽しみにしながら撮影に行ってまいりました。日中から開放絞りで撮影したかったのでボディは最速1/180000秒でシャッターを切れる『X-H2』を採用しました。結論だけ先に言ってしまえばものすごく「そそられる」レンズでした。フォトプレビューをぜひご覧ください。
さっそく高速電子シャッターの恩恵にあずかり、開放絞りで日中から撮影しました。シャツのしわの具合やピント面に非常に立体感があって気持ちのいい写りをしてくれます。空の青、自転車の青、ボートの青。おまけに言うならば車の赤までそれぞれの色ノリも良好です。太陽の位置で周辺減光の影響もかなり変わってきます。
先の2本の標準レンズと比べると寄りは控えめで最短撮影距離は0.35m。とはいえ標準レンズとしては十分すぎる接写性能です。後ボケも非常に綺麗で、網でごちゃごちゃしているところのボケも騒がしくならないのでアウトフォーカスの処理もとても優秀ではないでしょうか。
酷暑でこころなしか外を歩く人も少なく感じます。F0.9の開放絞りで中間域にピントを合わせて撮影しましたが、中望遠で抜いたような立体感のある写りを見せてくれました。開放絞りではピント面が非常に薄いので基本的にフォーカスチェックをしながら撮影していたのですが、いざという時にはマニュアルフォーカスの細かな力加減でジリっとピントを合わせられます。
F1.4まで絞ってみると僅かな滲みがスッと消えて、よりシャープに解像してくれます。とはいえ開放絞りで、すでにメリハリのある描写をしてくれるので、被写界深度を深く取りたいときに使い分ければいいでしょう。開放絞りで撮影するのが楽しすぎるのがいけません、このレンズは。
このくらいの距離感であればF4に絞ることでほぼパンフォーカスの感覚でいけるようです。周辺減光もほぼ解消されます。
逆光ではフレアゴーストもしっかり出てきます。しっかりという言い方も妙ではありますが、このレンズにとってはむしろ無くてはならない要素ではないかなと思います。
モノクロで絞れば、キリっとコントラストの高い画を見せてくれます。太陽がある方へレンズを向けてもフレアゴーストも発生しません。歩道橋の光が当たったところのモノクロのグラデーショントーンがとても良い感じです。
まさに今から陽が射しこんで夕暮れ時を迎えようとするその少し前の時間帯。パステルカラーに染まる世界を繊細なトーンで見事に再現してくれました。強い光が射す日中の間の写りも良いと思っていたのですが、このレンズの真骨頂はこの時間帯でこそ発揮されるのではないかと紹介するのが楽しみだったカットです。繊細な色とトーンに惚れ惚れします。
夕陽が射しこんできて、いよいよクライマックス!という感じになってきました。これだけ強烈な逆光でも開放絞りで撮影できるのが非常に嬉しい。冒頭でもこの逆光のカットは紹介させていただいているのですが、フレアが美しいというのもこのレンズの特徴でしょう。このレンズを手にしたらぜひ逆光に向けて撮ってみてください。柔らかいからこそ表現できる光の美しさをぜひ。
ビルのフェンスにピントを合わせてはいるのですが、どちらかというと注目してほしいのは信号機の滲んだ光です。開放絞り特有の滲みもぜひ表現の要素として活用してみてください。
照明などほぼない夏まつりでもシャッタースピードを確保したままISO感度を抑えた撮影ができるのもF0.9の明るさがあるからこそ。夜のスナップ・ポートレートで使うのも楽しみな一本です。
誰もが魅了される超大口径
日中から夜まで撮影をしてみて、その間にどれだけの表現と表情を見たのだろうと。撮影者が組みたい表現をレンズが汲み取ってくれるので非常に使い心地が良く楽しいレンズでした。今までの「FUJIFILM Xマウント」用レンズとしては大きめな体形ですが、だからこそなのかピントリングと絞りリングの操作感がとてもスムーズだったのが気に入っています。フードも逆付けが可能なので持ち運びもあまりサイズが気になりません。大口径でサイズが大きめといったものの重量も500g未満なので気になるほどではないでしょう。『NOKTON 35mm F1.2 X-mount』とも『MACRO APO-ULTRON 35mm F2 X-mount』ともまた違う魅力を持つ『Voigtlander NOKTON 35mm F0.9 X-mount』。ぜひこのレンズが捉える光の美しさを体感してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff