

今回はSAMYANGの中望遠レンズ『SAMYANG AF 85mm F1.8 P FE』をご紹介いたします。ラテン語で「最初」と「重要」を意味する「Prima」からインスピレーションを得た、サムヤンの「Prima シリーズ」。「AF 35mm F1.4 P FE」に続く第2弾目の「Prima シリーズ」ということで「SAMYANG AF 16mm F1.8 P FE」と同時に発売されます。本レンズは重量272gという中望遠レンズとしては驚きの軽さを実現しています。3枚のEDレンズを採用した光学設計によるシャープな描写と、F1.8の明るい絞りによるなめらかでクリーミーなボケ味。コンパクトな設計ながら、AF/MF切り替えスイッチも実装されています。外装には独自に開発した高強度エンジニアリングプラスチックを採用しており、SAMYANG内部テストによるIP5相当の防塵性能も備えており、日常のホコリや軽い水滴からレンズを保護してくれるとのこと。今回はSONY α7RVに合わせて、静止画の描写性能を確認してまいりました。ぜひご覧ください。

やはり開放絞りでスナップを。と考えていたところ、目の前に現れた林立するクレーンと、複雑に絡み合う鉄骨。これは絞って撮るべきだと、シャッターを切りました。一番手前のクレーンのワイヤーから、遥か奥のビルの壁面まで、画面全体が驚くほどシャープに解像してくれました。

高層ビルの、ガラスと鉄骨が織りなす幾何学的な美しさ。画面中央付近にピントを置いていますが、ガラスパネルの1枚1枚、窓枠のシャープな直線、そして複雑に映り込んだ向かいのビルのディテールまで、とてもよく写っています。

猛暑が続く、今年の夏。日差しを浴びた温度計は40℃に迫る暑さを示していました。このレンズの最短撮影距離は0.8m。開放絞りでぐっと寄りましたが、温度計の目盛りや木の質感をシャープに捉え、しっかりとした解像感を感じさせます。近接撮影が得意というわけではありませんが、日常の中でふと気になったものにレンズを向ける、そんな使い方にも応えてくれる懐の深さがあります。

長く続く廊下、その中ほどを歩く人物にピントを合わせました。このレンズの魅力は、こうした構図と相性の良い、前後ともに滑らかなボケ味にあります。手前の柱や看板のボケが自然で、視線が一切邪魔されることなく、奥へとスゥーっと抜けていくような心地よさが生まれます。立体感のある、非常に気持ちのいい写りだと感じました。

窓ガラス越しに眺める体育館。手前の柵やガラスの映り込みを前ボケとして取り入れ、奥の壁に掛けられた時計にピントを合わせました。ピント面はシャープでありながら、空間全体はどこか柔らかい光に包まれているようです。硬いものは硬く、柔らかいものは柔らかく。被写体の質感を素直に描き出してくれました。

ピントを合わせた本の背表紙。くっきりとシャープなタイトル文字と、そのすぐ上、本棚に手書きされた「理科・算数・社会」という文字の柔らかなボケ。このシャープさとボケの対比が不思議な心地よさを生み出しています。もちろんレンズの高い解像感があってこその描写ですが、それ以上に、場の空気感まで写し取ったような「良い写り」だと感じます。

中望遠らしい大きなボケと、点光源が柔らかく滲む描写が美しい1枚です。ピントを合わせた電球は、ガラスの輪郭から内部のフィラメントまで非常にシャープ。正直なところ、開放絞りではもう少し描写が甘くなっても仕方ないと考えていたので、この予想を裏切る解像感の高さには、素直に感心させられました。

今までのこのレンズの描写が好印象だったので、逆光シーンでは少し意地悪なテストをしてみました。やはりここまで光を取り込もうとすれば、フリンジは出てきますが、円形の虹色ゴーストは非常に美しく、むしろ逆光の雰囲気を魅力的に演出してくれています。

凛とした空気が流れる静寂の空間。奥の部屋から縁側、そして庭へと続く深い奥行きを、中望遠レンズならではの自然な圧縮効果が、より一層静かに見せてくれました。肉眼で見たときの床に反射した光も忠実に再現してくれています。

無数に並ぶ招き猫の中から、目の合った奥の一匹にピントを合わせました。こちらが覗いているのか、それとも、あちらから覗かれているのか。手前の猫を大きくぼかして、遠近感を圧縮することで生まれる遊び心のある演出は、まさに中望遠・望遠レンズの得意とするところです。

オートフォーカスは、特筆するような目立った機能こそないものの、非常に信頼性の高いものです。何気ない街角のスナップでも、シンプルかつスピーディーに合焦してくれます。超高速で動く被写体までは未知数ですが、このレンズの主戦場であるポートレートやスナップ撮影においては、十分すぎるほどの性能を発揮してくれるでしょう。
最初の中望遠
筆者が写真に本格的にのめり込んだのは中望遠85mmのレンズがきっかけでした。広角や標準レンズでは得られない圧縮効果と立体感とボケ量。ファインダーに映るすべてのものが新鮮で、85mmを夢中で使っていました。当時の85mmのレンズといえば個性がハッキリしていて、開放絞りでフワフワした写りになるのも当然のことだと思っていました。シャープな解像感と柔らかい写りをバランス良く撮れる『SAMYANG AF 85mm F1.8 P FE』は最初の中望遠レンズとしても、中望遠を好んで使うユーザーにもおすすめできる1本です。「はじめてのレンズ」、そして「いつも手にしたくなるレンズ」を目指しているというサムヤンの新ラインアップPrimaシリーズ『SAMYANG AF 85mm F1.8 P FE』は中望遠レンズの楽しさを色んな角度から楽しめる1本だと思いました。ぜひ使ってみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff