シグマから大口径広角単焦点レンズが4本発売されます。うち3本については既にそれぞれ記事で紹介しており、今回は最後の1本『SIGMA Art 24mm F1.4 DG DN L-Mount』のフォトプレビューを掲載します。シグマの「Art」ラインと言えば会津が生み出す最高峰のレンズ。そんな「Art」のF1.4を日常使いするという贅沢を当レンズにより体験できるのです。描写性能を求めればヘビーになりがちで、常用レンズというポジションからは離れていってしまうのが常です。しかしそこを見事なバランス感覚でまとめ上げたのが当レンズというわけです。画質や携行性などどこをとっても”ジャスト”で、且つ、さまざまな撮影シーンを受け入れる懐の深さも持ち合わせています。ロックバランシングという石を積むアートがありますが、まさにそれを彷彿とさせる「日常使いできる星景レンズ」という新たな分野に鎮座します。フォトプレビューをぜひご覧ください。
ビルの屋上に芝生が敷かれています。こうした緑化は温暖化などの対策になっているだけでなく、人々に安らぎをもたらしてくれます。そこを小鳥が歩いていました。野鳥には詳しくありませんが、都会でチョコチョコ歩いている小鳥といえばハクセキレイだと聞いたことがあります。野鳥は望遠レンズで撮るものと思いがちですが、こうして周囲と共に写すことでその独特な歩きを想起させ、生態が伝わりやすい写真になったように思います。
丸い吹き抜けから空が見えました。たまにこういう場所がありますが、見上げる度に「井の中の蛙」というフレーズが頭を過ります。「井の中の蛙大海を知らず」は視野が狭いことを揶揄する言葉ですが、その後に「されど空の青さを知る」と続けた人がいるとか。広い世界は知らないけれど、その分狭い範囲を深く知っているという意味なのだそうです。
ひとつ上の写真の石の壁を角度を変えアップで撮ったのがこちら。こうして見てみると石が思いのほか尖っていることが見て取れます。照明が反射してキラキラする角度を探してシャッターを切りました。
それぞれの行き先に続く通路が交差する地下街。メタリックな素材と蛍光グリーンのアクセントカラーが近未来的です。無機質な中を血の通った人間が行き交うのが面白いと感じながら撮りました。
ホルダーに吊り下げられたたくさんのワイングラスや、ずらりと並ぶ蓋の空いた酒瓶は、透明感があって面白い素材です。斑に落ちた光がそれを照らしたり照らさなかったりすることで視界はさらに複雑になり、面白みが増していきます。それを捉えてくれる度量のあるレンズです。
オブジェに開けられた丸い穴から、円の向こうを覗きます。奥の方ではドライアイスなのか煙なのか白いものがモクモクと立ち上がっていて神秘的です。円内の景色が手前の金属のオブジェに反射し、青みがかった光も相まって、さながら宇宙を漂う旅客船の食堂といった風情です。
特筆すべきデザインではないものの、薄暗い中にわずかに当たる光が生み出す「照り」が妙に色っぽく思え、見たときの印象に合わせ露出を抑えて撮影。新品とは違う円熟味を増した質感が、開放F値1.4のとろけるボケ味にマッチします。
陽がだんだんと低い位置へ降りてきました。強い光が高速道路の橋脚に反射して、まるで第二の太陽かのように筆者を照らします。目を細めながら赤い屋根のガラス張りの建物に視線を送ると、かつてレストランか何かだったのが現在は空き家となっているように見え、斜陽との組み合わせにノスタルジックに思えました。
“余裕のあるジャスト”が心地いい
使っていて「丁度いい」と感じるレンズです。ジャストだけれどそれは決してギリギリではなく、伸びた身長に合わせて少しならズボンの丈を出せるような、ちょっとした余裕があるのがポイント。開放F1.4は高感度に頼ることを忘れさせてくれますが、もしこれがF0.95だったら質量に難が出てくるでしょう。そのバランス感覚が秀逸です。そしてもちろんシグマ最新の「Art」レンズですから、贅沢かつ適切なレンズ構成で諸収差は打ち消され、フレアやゴーストは徹底的に抑制、スーパーマルチレイヤーコートとナノポーラスコーティングにより高い耐逆光性能を持ち合わせます。優れた光学性能と使い心地が両立されることで、幅広い撮影に携行したくなる「撮影者に選ばれるレンズ」のポジションに収まるのです。最高のバランサーをぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff