2020年2月に発売されたCanon EOSシリーズのフラッグシップモデル「EOS-1D X Mark III」。あれから早いもので4年以上の月日が経過、高い信頼性と耐久性をもった高性能一眼レフカメラからミラーレスカメラへと生まれ変わりました。新たに開発された映像エンジン「DIGIC Accelerator」と裏面照射積層CMOSセンサーを組み合わせた新たな映像エンジンシステム「Accelerated Capture」を搭載したミラーレスEOSのフラッグシップモデル『EOS R1』が遂に発売となりました。
プロフェッショナルの現場で活躍するモデルだからこそ重宝する、EOSシリーズ最高輝度を達成した約944万ドットの新開発電子ビューファインダーを搭載。デュアルピクセルCMOSAF初となるクロスAFにも対応し、電子シャッター時 最高約40コマ/秒で狙った被写体を確実に捉えてくれるプロの高い要求に応えてくれるモデルに仕上がっています。そんな究極のEOS最新モデル『EOS R1』でさっそく撮影して参りましたのでぜひフォトプレビューをご覧ください。
次世代AFである「デュアルピクセル Intelligent AF」はトラッキング中でも、最大約100%×100%エリア内すべてにおいてクロスAFを実現。測距エリア全域で安定した被写体捕捉が可能になったとのこと。テレ端でもジャンプするイルカを素早く、的確に捉えてくれました。またこのカットはISO25600で撮影をしていますが、高感度でのノイズ処理が非常に優れていると感じました。Jpeg撮って出しで高感度撮影時のノイズ低減は「標準」に設定しています。『EOS R1』には16点分離を行う新開発のGDローパスフィルターを搭載。輝度モアレや偽色を抑制しつつ、高い解像感のバランスをハイレベルで実現しているとのことですが、納得の写りを見せてくれました。
水面からジャンプしてくることが予想できたのでそのポイントを見ながら瞬間を待ちます。「EOS R1」では次世代AF、デュアルピクセル Intelligent AFを搭載しており、「EOS R3」を上回るトラッキング性能を実現。飛び出した瞬間からまた水中に戻るまでの間を粘り強く追従してくれました。さらに「EOS R1」ではサーボAF特性をシンプル化。従来の[Case 1/Case 2/Case 3/Case 4/CaseA]が[Caseオート]に集約。今回の撮影は全てその[Caseオート]設定で行っています。
イルカが回転して水を纏うように上昇する様子がまるで魔法のようで最も好きな瞬間です。以前別の機材で撮影したときにこの水しぶきにAFが反応してしまうということがあったので不安だったのですが、全く惑わされることなく追従してくれました。『EOS R1』は電子シャッター時の幕速がEOS R3より高速化 。コマ速がアップしながらも、EOS-1D X Mark IIIのメカシャッター撮影時と同等レベルにローリングシャッター歪みを抑制した撮影を可能としています。
小さい爬虫類の瞳にも瞳AFが反応してくれました。『EOS R1』はボディー内5軸手ブレ補正を搭載。協調制御ではRFレンズ使用時で中央8.5段、周辺7.5段の補正効果を得ることが出来ます。またマグネシウム合金製外装、防塵・防滴構造というフラッグシップ機らしいガッチリした外観からは想像できないほどの軽さに驚きました。横位置、縦位置ともに持ちやすい、新しいクロスパターンのグリップデザインでカメラのハンドリング性能も大きく向上しています。
今回同時に発売された『RF70-200mm F2.8 L IS USM Z』で撮影を行いました。「非球面レンズ」3枚、「スーパーUDレンズ」2枚を含む15群18枚の光学設計により、画質劣化の原因となる諸収差を低減することで、「RF70-200mm F2.8 L IS USM」と同等以上の高画質を実現しているということですが、ガラス越しでもクラゲのプツプツした表面まで鮮明に解像してくれて非常に驚きました。またホワイトバランスはオートホワイトバランスに設定。AEの細分化やディープラーニング技術による検出性能、新アルゴリズムによりオートホワイトバランスの精度が向上し、カラフルに変化する水槽も高い精度で合わせてくれました。
回遊しているアザラシが奥から泳いでくるタイミングを見計らって撮影。タイミング悪く水槽の中が不明瞭になっていたので、アザラシの姿が見えてこなければピントを合わせることも出来ません。そのためシルエットが見えた時点でシャッターを切りました。そしてここでもプリ撮影を使用しています。シャッターボタンを押したタイミングよりも、最大20コマ分さかのぼって連続撮影が可能な静止画プリ撮影機能のおかげで普段なら狙おうともしない瞬間を撮ることが出来ます。
AFエリアはフレキシブルゾーンに設定し、ファインダーを覗く瞳の動きでAF操作が行える、視線入力をほぼ使用していました。EOS R3と比較してセンサーの高画素化および、光源LEDが増加。検出フレームレートがEOS R3の最高約30fpsに対し、約2倍の最高約60fpsに向上したとのことで視線の変化に対して高精度・高追従を両立し、より安定した検出や視線の動きへの追従を実現しました。また水槽を撮影する際にはフリッカーレス撮影も使用しました。フリッカーレス撮影には高周波フリッカーレス撮影の2パターンがあり、様々なシチュエーションに柔軟に対応できるようになっています。
30コマ/秒までは撮影連続撮影中や待機中でもファインダー約120fps表示が可能。高速で動いている被写体を連写しながら、あえて目が入らないように調整しながら撮影しました。0.64型、約944万ドットの新開発電子ビューファインダーは新規設計のファインダー光学系と組み合わせることで、ファインダー倍率0.9倍の広視野を達成。初めてファインダーを覗いた瞬間から広々とした画面と見やすさに感動しました。
ある程度の予測は出来ても、水面からジャンプしてくるイルカをタイミングよく捉えるのは難易度が高くなります。ここで役立つのはやはりブラックアウトフリー撮影&静止画プリ連続撮影。今回時間の関係上、昼と夜の部どちらも一回きりの撮影でしたがシャッターチャンスをしっかり掴むことができたのは間違いなく「EOS R1」の性能あってこそでした。
イルカ達が次々と水面から飛び出してくるシーン、前後合わせて5匹のイルカがジャンプした瞬間を撮ることが出来ました。イルカを目で追って撮るのは至難の技なので、構図を決めて肉眼でイルカが手前側でジャンプしたタイミングを見計らいシャッターボタンを押すというほぼカメラ任せの撮影でも確実な成果を出してくれます。ちなみに[犬/猫/鳥]に加え、EOS R3にはなかった[馬]検出にも新たに対応。瞳や顔、全身などパーツごとの検出ができるため、動きが大きい動物でも安定した追尾が可能。被写体を自動的に追尾するため、予期せぬ動きを見せがちな動物撮影でも高いピント精度を得られるとのことです。今回「検出する被写体」を動物優先で撮影しましたが、主な被写体がイルカでもオートフォーカスの速さ、精度の高さをしっかり実感することが出来ました。
今回時間の関係上、筆者が撮影に使用したのはこの数時間だったのですが、限られた時間内でもしっかりシャッターチャンスを掴むことの出来る『EOS R1』というカメラは全幅の信頼を置ける存在であることを確信しました。全ては「1」から。その1を逃さず、確実に撮ることが出来る『EOS R1』は新たなフラグシップの幕開けを飾るにふさわしいカメラです。
新たなフラッグシップの幕開け
フイルムカメラの初代EOS-1が発売されたのは平成元年のこと。時代はデジタルに移り変わり平成13年にデジタル一眼初のフラッグシップモデルEOS-1Dが発売。気がつけばデジタルカメラにはスチルだけでなく動画性能も求められる時代に。決定的瞬間を逃さない高速連写することができる電子シャッター時 最高約40コマ/秒や新開発の映像エンジンシステム「Accelerated Capture」とディープラーニング技術の融合による、被写体を追い続けるための強化されたトラッキング性能などスチル撮影の性能強化に加え、フルサイズ画角で6K/60PのRAW動画や、4K/120PのMP4動画記録をカメラ内部記録で実現した『Canon EOS R1』。
暗所で動体撮影をした際の驚くべきオートフォーカスの追従性、そして高感度性能。プロフェッショナルの撮影に耐えうるその高い信頼性は今回の撮影でも思う存分体感することができました。ミラーレスフラッグシップという「新たなフラッグシップの幕開け」と言っても過言ではないその究極の1台。究極のEOSをぜひその手に。
Photo by MAP CAMERA Staff