799: 日常に極上を『Voigtlander MACRO APO-ULTRON D35mm F2 (Z-Mount)』
2022年09月15日
フジフイルムX用マウントとして発売された大口径の標準マクロレンズ『Voigtlander MACRO APO-ULTRON 35mm F2』がZ-Mountにもやってきました。最大撮影倍率1:2のアポクロマート設計、新しい時代に誕生した「APO-ULTRON」。X-mountで既にご紹介したレンズではありますが、『Nikon Z fc』と組み合わせて撮影してまいりました。使えば使うほど、新しい魅力を発見できる一本。ぜひご覧ください。
基本的に解像感のある画を見せてくれる『MACRO APO-ULTRON D35mm F2』ですが接写ではほんの少しだけ柔らかい描写もあります。今回はその柔らかさのおかげで非常に色気のある写りになってくれたこのカットをご紹介させていただきます。見せたいポイントはしっかりと見せつつ、うっとりするようなボケ感です。
前のカットの滲みや柔らかさとはまた違う、鮮鋭な解像力を見せてくれました。個人的にはこれぞ『Voigtlander MACRO APO-ULTRON D35mm F2』というカットです。硬め、軟らかめの光の違いをしっかり描き分けてくれるとても優れたレンズだと思います。
よく見ると丸いボケが散りばめられた一枚。X-mountでも同じようなシチュエーションで撮影しましたが、今回はピントを奥にして前ボケの感じを見てみました。このレンズに対してのボケの印象がだいぶ変わりました。ちょっと「外した」写し方も楽しいのではないでしょうか。
F4.5に絞って撮影。四隅までしっかり、クリアな描写に。波立つ水面やちょこんと飛び出た尾びれ。どれもこれも素晴らしいの一言です。
F10まで絞り込んで撮影。拡大して見てみると細かいひび割れが確認できます。凸凹の立体感や塗装の剥げなど、とてもリアルに再現してくれました。
夕方の眩しい光による濃い影。シャドウトーンの違いがしっかりと表現出来ています。ピントはやや手前、絞りをF7まで絞り込みましたがタイルの描きこみなど密度のある画になりました。
どの電球にしようか、ボケ量はどうしようかとファインダーを覗き、ピントリングと絞りリングを操作しながら戯れました。試行錯誤の末、最終的に先頭から3番目の電球にピントを合わせボケ感と解像のバランスを取ってF4.5に絞って撮影。電球のなかにも空のグラデーションが映りこんでいて、とても魅力的です。
夕焼けに染まる大きな橋を渡る2人分のシルエット。今までマクロレンズだから寄った画を、と無意識に肩に力が入ってしまっていました。寄って撮れるという選択肢は贅沢に、ここぞという時に使えばいいのです。
日常に極上を。
X-Mountにこのレンズが出たときに思った「他のマウントでも出たらいいのに」という秘かな願いが叶いました。純正レンズに『NIKKOR Z MC 50mm F2.8』もありますが『Z fc』などAPS-C機で組み合わせるには、標準域&ハーフマクロの使い勝手はやはり便利です。ファインダーを覗きながら絞りリングを操作する動作があまりに自然にできたことが少し嬉しかったり。初めてマニュアルフォーカスレンズを使うという方でも『Z fc』はフォーカスポイントが合ったタイミングで緑色に点灯して知らせてくれるので、とても使いやすくなっています。
被写体の様々な表情を一本で表現できる『Voigtlander MACRO APO-ULTRON D35mm F2』。「APO-ULTRON」が気になっていたZユーザーはもちろん『Z fc』から初めてカメラを手に入れたという方にもおすすめしたい一本です。ぜひ極上の写りをお楽しみください。
Photo by MAP CAMERA Staff