Nikonから新しい高倍率ズームレンズ『NIKKOR Z 28-400mm F4-8 VR』が発売されました。2020年7月に発売された高倍率ズーム「NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR」と比べ、広角端が4mm狭くなったのに対し望遠側が倍の400mmまで拡張。望遠レンズが活躍する乗り物やスポーツ、動物撮影がより便利になりました。
ズーム幅が広がったことでレンズ交換の必要がなくなり、シャッターチャンスの機会が増えたのはもちろん、これまで複数本持ち出していたレンズが1本で済むようになったことで持ち運びの負担軽減にもつながります。これからのゴールデンウィークや、夏の行楽シーズンにもにもおすすめの1本。まずはその描写力をご覧ください。
まずは望遠向きの被写体を求めて空港へ。コンパクトで持ち運びしやすいものの、レンズ自体は少々暗めの設計で焦点距離を200mmにズームした段階で開放F値は8になりました。今回は運良く好天に恵まれましたが、動体撮影の際はシャッタースピードに注意が必要です。とは言え、カメラの高感度耐性も大幅に向上しているのでさほど心配することはなさそうです。
描写は開放からとてもシャープで離陸する飛行機をクリアに捉えてくれました。ひと昔の望遠レンズで見られたような画像の荒さも無く、機体に描かれた小さな文字までしっかり認識することができます。
空港から見えた滑走路脇の公園の桜が見事だったので公園まで移動しました。これも軽量レンズによるフットワークの良さの賜物。重い超望遠レンズを持参していたらこんな思いつきで移動なんてありえません。
公園では桜を目一杯に取り込んだ広角端で撮影をしました。雲ひとつない青空に飛び立つ飛行機と、桜と飛行機を撮影にきた人たちの賑わいを細かく収めることができました。
本レンズの使用で一番驚いたのが近接での撮影です。広角端28mmならレンズ先端から約4cmまで近接することができました。近接から得られる質感描写も凄いの一言です。
撮影に夢中になってしまうと思わず被写体に触れてしまう距離感ですから、撥水・撥油コートを採用した汚れの拭き取りやすいフィルターがあると心強いです。バンパーとしても活躍する付属の角形フードも付けっぱなしを推奨します。
空港側の公園では、桜並木を歩いていると丘の影になってしまい飛んでくる飛行機を目視できません。なので飛行機と桜をバランスよく収めるにはいかに素早く構図とピントが決められるかが重要になります。使用したカメラ「Z9」に搭載された飛行機の被写体検出機能がここで活躍。桜にピントが合っていても飛行機を認識すると瞬時にピントが移動し、鮮やかな機体を鮮明に捉えてくれました。
コンパクトで便利な反面、機能面で劣るイメージのある高倍率ズームレンズですが、Nikon Zシリーズはどの組み合わせでもそれぞれの性能を最大限に引き出してくれるので安心です。そして本レンズは高倍率ズームレンズの悪いイメージも払拭してくれました。
公園から駅へ戻るバスに乗ると途中にお不動様で有名なお寺の前を通過。ここでもフットワークよく急遽の途中下車です。長い石段を登る途中に狛犬を発見。どんな状況でも素早く構図が決められるのが高倍率ズームのメリットです。お不動様の狛犬は迫力も違います。
先に発売された「NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR」のスペックと見比べた際、本レンズから無くなっていたのが「アルネオコート」の記載。フレアやゴーストの低減に大きな効果を発揮し、レンズの透明感にも影響を及ぼすアルネオコートの不採用が気になっていましたが、好天の青空を見上げた撮影でもこれだけ鮮明にカラフルな三重塔を捉えてくれました。これは嬉しい誤算でした。
秋の紅葉が綺麗なことでも有名なお不動様の庭。モミジの青葉が日の光を浴びて綺麗に輝いていました。光のグラデーションはもちろん、葉の薄い質感もしっかり捉えてくれました。
お堂の入口を塞ぐ大きな扉。地味な被写体からも歴史ある質感が感じ取れます。
電車で都内に戻ってきました。桜の名所は既に葉桜となっており、都心と郊外での気温差を感じます。そんな一方で牡丹が見頃を迎えていました。
桜の花に似た色使いの花にカメラを向けると、花びらの薄い質感はもちろん、花びらに乗った小さな水滴まで綺麗に捉えてくれました。
水の透明感など、あらゆる被写体の質感を忠実に描いてくれます。
動物園にも立ち寄りました。首をクルクル回すフクロウは鳥の瞳AF性能を試すのに最適な被写体です。
開放F値が大きいため柵の側にいる鳥を狙ってしまうとボケで柵を消すことができずAFもなかなか定まりません。しかし柵から離れた鳥ならば瞳AFはスムーズに反応。フクロウの首振りに合わせて左右の目のピントも瞬時に変わりました。
ガラス越しならば近接でもAFはスムーズに合焦しました。幅広いズーム域のお陰で虎の迫力あるカットを抑えることができました。
望遠端の400mmを持ってしてももう少し寄りたいと思うシーンがあります。そんな時はカメラ側のDXクロップを使用して1.5倍相当にすれば解決です。画素数こそ少し落ちますが、フラミンゴの鮮やかな朱色や柔らかな羽毛の質感をしっかり描いてくれます。
超望遠撮影時に頼りになるのが強力な手ブレ補正機能。ボディとのシンクロVRならば5.5段分の効果が得られるのは心強い限りです。
600mm相当の望遠から28mmの広い画角まで、レンズ交換無しでこなしてくれるので本当に頼りになります。広い景色のカットでも歪みなくこれだけ細かく細部まで捉えるのですから性能に疑いはありません。
便利すぎる超高倍率ズームレンズ
望遠側が大幅に強化された高倍率ズームレンズ。望遠端の400mmまで引き出すとレンズの全長も約24cmまで伸びて望遠ズームと同じくらいのサイズ感になります。それでも重さは725gというのですから驚きです。
そして35mmフルサイズ用で約14.2倍というズーム比。この桁外れな倍率を実際に目にしてZマウントの登場時のカタログに書かれていた「レンズの設計自由度が広がり、かつて無かった焦点距離のレンズも実現可能になる」という言葉を思い出しました。レンズの明るさだけではなく、焦点距離までもNIKKOR Zレンズは想像を超えるラインナップを揃えてきました。幅広いズーム域を持ちつつ高性能。本レンズ1本あれば他のレンズは必要なしと言いたくなりますが、いずれも個性豊かなレンズ群なので1本に絞りきれないのが悩ましいところ。でもこれだけははっきり言えます。このレンズ凄く便利で、持ってる、持ってないで安心感が違います。ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff