70周年を迎えたレンズメーカー、タムロン。2020年も、開放F値2.8スタートの高倍率ズーム「28-200mm F2.8-5.6 DiIII RXD」や気軽に300mmまでの超望遠撮影を行える「70-300mm F4.5-6.3 DiIII RXD」など、フルサイズミラーレス専用設計によって高い描写力と小型・軽量を両立し撮影の幅を広げる素晴らしいラインナップを展開してくれたことが記憶に新しいです。
本日は、2021年の第1弾に相応しいレンズ『TAMRON 17-70mm F2.8 DiIII-A VC RXD』をご紹介します。
APS-C専用設計の本レンズ。フルサイズ換算で25.5mm-105mm相当をカバーしながらF値2.8通しというのは、なんと世界初!
使用頻度の高い広角から中望遠までを明るく切り撮ることが出来るのです。もちろん、ボケ量で言えばフルサイズセンサー機に比べればやや控えめですが、この明るさは暗所での使用やシャッタースピードを稼ぎたい時に大いに役立ちます。さらに、レンズ内手ブレ補正を搭載し静止画・動画共に撮影時の手ブレを抑えます。これだけのスペックを有しながら販売価格で約8.5万円という破格のコストパフォーマンス。もうこの時点で驚きが止まりません。
その分、写りはトレードオフなのでは…?と思われる方も多いと思いますので、さらにもう一度驚いてもらうべく『SONY α6600』という頼もしい相棒に当レンズを装着し、撮影を行ってきましたのでぜひご覧ください。
広角端は25.5mm。歪みもなく、広角らしいダイナミックな画を存分に楽しむことが出来ます。奥行きのある通路に、等間隔で切れ目のある屋根から入り込んだ光の模様が面白かったのでローアングルで影と光のパターンを写しました。アンダーな露出で撮影していますが影の落ちている部分もしっかり道の凹凸を感じることが出来ます。
ピクチャースタイルをモノクロにして階調を確かめてみましたが、立体感のある描写に大満足。影の濃い部分、薄い部分のグラデーションも伝わってきますし、何よりスナップ的に「パッ」と撮ったにもかかわらずブレを感じさせない事にも感動しました。タムロン独自の手振れ補正機構「VC」はより強化されているようです。今回は静止画ですが、当機能は動画撮影時により効果的との事なので、動画でも試してみたくなりました。
さらに、最短撮影距離は広角端で0.19mという事で「寄りの実力も試してみよう」と思い立ち、規則的に絞められたボルトにググッと寄って、寄って…まだピントが合う!驚きました。もうフードが当たるんじゃないかという所まで寄ってみたのですがいかがでしょう。ピント部分の鮮明さは言わずもがな。APS-Cセンサーらしからぬ豊富なボケ量も見逃せません。またボケも騒がしくなく、自然にボケていくのも見事です。
こちらは望遠端での寄り。絞り気味にして背景の物語をなくさないようにしてみましたが、望遠という事もあってこちらもボケはたっぷり出ています。これだけ色々出来てしまうと、どんな撮影をしようかとアイデアが湧いてきます。
さて、なじみ深い真っ赤の塔へやって参りました。撮影のために足元まで来ることはあるのですが、今日は展望台まで登ろうと決めていました。上まで行くのはなんと小学校の修学旅行ぶり、見上げた時の興奮をこの一枚に閉じ込めました。どんな景色が目の前に広がるのだろう、という胸の高鳴り。では、行ってみましょう。
人生初、トップデッキから見下ろす東京の景色。思わずため息が出てしまいました。お台場方面のビルの喧騒と広大な海の対比は本当に美しい。F9まで絞ることで緻密に描いてくれています。空のグラデーションも繋がりよく移り変わっていて、ソニーらしい色合いは純正レンズと遜色ありません。
日も暮れて、高層ビルの間の道に目を落とすと地面にもう一つの東京タワーが横たわっているではありませんか!縦構図で30秒の長秒露光に挑戦してみましたが、綺麗に撮ることが出来ました。遠景側は少し甘さも感じますが、難しい条件の中でここまでしっかり写っている事にまたも驚かされました。
夜になると、提灯に明かりが灯りなんともにぎやかしい雰囲気に。暗い場所でも開放F2.8に助けられ、高感度に頼り切ることなく撮影が可能です。どうやら、この提灯のひとつひとつには子供たちがイラストを描き込んでいるようで、柔らかい明かりも相まって見ているだけでほっこりとするような安心感に包まれました。
どんなシーンも鮮明に。
このレンズの一番の良さは「シーンを選ばない」という事でしょう。開放から良く解像し、広角から中望遠まで広い焦点距離をカバー。そして広角端、望遠端ともにかなり寄っての撮影も可能と、使える場面を考えていたら枚挙に暇がありません。今回は街撮りや展望台からの風景撮影を行ってみましたが、逆光耐性も高くレンズ内手ブレ補正も優秀で「もっとこうだったら…」と思うことが全くありませんでした。70周年の集大成に、素晴らしいレンズをお披露目してくれたタムロンへの感謝の思いが止まりません。『SONY α6600』を含めた「α6000 シリーズ」で、何か良いズームレンズがないかと探されている方!決して後悔させませんので、このレンズをぜひ試して頂きたいと思います。
Photo by MAP CAMERA Staff