946:落ち着いた色味と柔らかいボケ味『Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical (ソニーE用/フルサイズ対応)』
2024年07月16日
Canon RFマウント、Nikon Zマウントに続き『Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical』のSONY Eマウント用(フルサイズ対応)がシリーズに加わりました。Zマウント用が登場した際は、ピントリングのローレット加工がよりクラシカルなデザインに変更されていましたが、RFマウントと同じダイヤパターンに戻されています。デザインの好みは分かれますが、指がかりよりグリップ力に優れたピントリングは一定の速さで操作したい動画撮影などに向いており、動画ユーザーの多いSONYマウントをしっかり意識して作られている印象です。そんな新レンズはαシリーズのボディとの組み合わせでどのような画を見せてくれるのか。αシリーズの高画素モデル「α7RV」で撮影してきましたので、どうぞご覧ください。
SONY Eマウント用のフォクトレンダーレンズは超広角の10mmから中望遠マクロの110mmまで既に11種がラインアップされており、いずれも使いやすく高画質で人気の高いモデル。12本目となった本レンズもこれまでのレンズと同様で、まさに安定の高性能レンズでした。
そして、さすがは中望遠の大口径単焦点レンズ。ファインダーを覗いた瞬間から大きなボケが楽しめました。お祭りの雰囲気を残したいけど人物に配慮をしなくてはならないというシーンではボケ量のコントロールが重要です。絞り操作はレンズ側での調整になる(カメラのコマンドダイヤルでは不可)ので操作に少し戸惑いましたが、絞りリングを回す毎に変わる印象に驚きました。また回している際に伝わるクリック感がまた気持ちの良いこと。せっかくの大口径なのですから開放で撮りたい気もしますが、いろんな絞り値で撮りたくなるレンズです。
12枚もの絞り羽を使用しているため、絞っても点光源は綺麗な円形を保っています。他のマウントを試した時も感じていましたが、さすがはNOKTONレンズです。光源の捉え方が上手で電球やLED、風鈴に反射する光など、いろんな色の光を綺麗に描いてくれます。
目に鮮やかなオレンジ色のほおずき。正直もっと派手な色で描かれるのかと思いましたが、とても自然な発色で階調も豊かです。質感も伝わる高い解像感で描いてくれました。
橋の上から真下を通過する水上バスを狙いました。被写体認識のAFならカメラ任せで簡単に撮影できるシーンもマニュアルレンズではそうはいきません。近づくにつれスピードが増す感覚もあり慌ただしくシャッターを切りましたが、グリップの効いた大きなピントリングのおかげで素早くピントを合わせることができました。
本レンズの最短撮影距離は55cm。近接時のピント面はとても薄く、こちらもピント合わせに苦労するかと思いましたが、ファインダー像の拡大機能が想像以上に便利でスムーズに距離を詰めることができました。先の動体撮影の時といいピント合わせの不便さはさほど感じません。フレアを纏ったかのようなボケも綺麗です。
上野の不忍の池では早くも蓮の花が見頃を迎えていました。構図的にもう少し寄りたいと思わせるシーンですが、大きなボケのおかげでしっかりと狙った花を浮き立たせることができました。画質に余裕のあるカメラとレンズの組み合わせならトリミングで如何様にもアレンジ可能。焦点距離の域を超えた楽しさも味わえます。
池の近くの洋館にも訪れました。これまで訪れた際は広角寄りのレンズを持っていくことが多かったため、中望遠で切り取る画はとても新鮮に感じます。柱や避雷針の装飾など、部分部分を切り取ることで今まで気づかなかった発見もあり、焦点距離を変える楽しさを再発見した感じです。
照明の灯りとステンドグラスが取り込む外光。光の広がり方が僅かに異なる2つの灯りの様子もしっかり描いてくれました。
夜の撮影も得意とするNOKTONレンズだけあって少し影があるシーンも上質に描きます。暗部も潰れることなく、植物、石、水と異なる質感のものが混在しているカットでも一つ一つ綺麗に再現してくれました。
落ち着いた色味と柔らかいボケ味
大きなボケを持つレンズだからこそコントロールのしがいがあるレンズをぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff