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985:朝も夕も夜も『Voigtlander NOKTON 28mm F1.5 Aspherical Z-mount』
2025年02月20日
本日はフォクトレンダーから発売された 『Voigtlander NOKTON 28mm F1.5 Aspherical Z-mount』をご紹介いたします。専用マウントとなったことで撮影データのExif情報やボディ内手ブレ補正機能、ピント補助機能にも対応し、マニュアルフォーカスでの撮影も快適に行えます。大口径レンズながらマウントからレンズ全長までの長さは57mmとコンパクトで取り回しもしやすく、質量も約360gと軽量。VMマウント用と同じ光学系ながらセンサー前のフィルターガラスの厚みなど考慮し、Zマウント用に最適化もされています。外観デザインはすでに発売されているZマウントシリーズと同じ仕様で、指がかりのいいリングにローレットが施されています。ちなみに機能をフルに使うには、2020年以前に発売されたカメラは最新のボディファームウェアにアップデートする必要があるとのことなのでご注意ください。今回は「Nikon Z8」に装着して撮影を行ってきました。ニコンZマウントではAPS-C用レンズを含めれば10種ほどまでラインナップが揃ってきたフォクトレンダー。1950年代から続く開放F1.5を継承する伝統のシリーズとなります。ぜひご覧ください。
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周辺減光はありますが開放絞りからピント面は非常にシャープです。F2.8に絞ると周辺がパッと明るくなるのですが、被写界深度が深くなることで均一な写りになってきます。今回は中央部分の浮き出てくるような立体感とボケ感を重視して開放絞りのカットを選びました。ちなみに今回のシーンに限れば、絞ることで背景の黒くなっている木や葉の色が見えてくる、というくらい変化するので、スッキリ見せたいカットの時はF2.8、さらに隅のほうまでスッキリさせたいならF3.5かF4くらいまで絞るのがオススメです。
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F5.6で前後の距離があってもパリっとまとめてくれました。実はこのカット、とっさに撮ったものでピントの位置はおおよそです。もちろんパンフォーカスで撮るならF8に絞るのがベターですが、特に撮りたいものが定まっていないとき、シャッタースピードもある程度確保したいときはこのくらいの設定でスナップするというのも一つの手かもしれません。
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ピントの合った「5」の文字の線がクリアで気持ちがよく、手前奥のボケ感もそれぞれの数字が崩れすぎず良い仕上がりになりました。おそらくガラスの小さな汚れがフィルムに付いたダストみたいに見えるのと「ディープトーンモノクローム」のトーンによるものですがレトロな時代の写真に見えてきます。
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少し趣味性の高いカットとなってしまいますが、基本的に色がなく無機質な空間にポツンとある赤に惹かれました。上下の空間をたっぷりと取ることが出来た28mmという画角と、F2.8の絞りによって全体が整いつつ、バイクの立体感がありながら、背面の壁はややボケているという絶妙なバランスによって成立したカット。とてつもない表現力を持ったレンズだと思いました。
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午前中の青空は急な雨雲に遮られてしまいました。天気予報を見る限り、通り雨のようなので雨を避けながら撮影することにします。他マウントと同じく最短撮影距離は0.28m。開放絞りではかなりピント面が浅くなり柔らかい描写になりますが、花の産毛までよく写してくれました。
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曇天でもマーガレットは鮮やかです。せっかく元気に咲いているので次は少し絞って近接撮影をしてみました。先述のとおり少し絞ることで周辺減光が落ち着くおかげで全体的にパッと明るさが出てきます。フォーカスリングの動きが程よく滑らかで、ピント拡大機能を使って緻密な調整をすることが出来ました。
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高速のシャッタースピードで撮りたいと思ったときにでもISO感度を抑えることが出来るのはやはりありがたいです。開放絞りからちゃんと芯も捉えてくれています。
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暖かみのある色味にしたかったので、あえてホワイトバランスは太陽光で撮影しています。適切なホワイトバランスでなければグラスの立体感を出すのは難しいかなと思っていましたが、光沢感のあるグラスの質感をしっかり捉えつつ、立体感もあります。背景に飾られた電球も期待通り、玉ボケになってくれました。
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もうじき日も暮れようという時間帯。F4に絞ってみると木々の細枝だけでなく、その奥にある東京タワーのディテールまで精細に描いてくれました。周辺部まで均一な高い解像性能です。
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奥にピントがきているのが一目で分かりますし、開放絞りの手前から奥につれての優しいボケ感もとても好ましい写りです。
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特に備えもなかったのでカメラを床に置いての撮影です。「Z8」のボディバランスが良いというのもありますが、レンズがも360gと軽いおかげで傾いてしまうこともなく撮ることが出来ました。F11、F16どちらも撮りましたがビルの屋上看板の文字が読み取れるほど解像してくれます。
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余白も程よく、しっかり全体のシルエットを入れることが出来ました。ライトアップのおかげもありますが、ISO感度を上げずに夜間撮影できるのはやはり頼もしいですし、改めて開放絞りからよく写してくれます。
朝も夕も夜も
28mmの画角は人によって、時によって、印象がコロコロと違う不思議な画角だと思います。「28mm」の印象を誰かに聞くと様々な答えが返ってくるので私が問われた場合は一拍置いて「不思議な画角です」と言葉を濁すようになりました。「28mmだから撮れた」という瞬間が確実にあることを身をもって体感しているので、難しさを感じつつもオススメしたい画角でもあるのです。スナップシューターの代表的画角として既に多くの写真家たちがその価値を証明している28mm。朝も夕も夜も『Voigtlander NOKTON 28mm F1.5 Aspherical Z-mount』と共にぜひ素敵な一日を。
Photo by MAP CAMERA Staff