
Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical II VM
2025年09月30日

フォクトレンダーより発売された『 Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical II VM 』 の実写レビューをご紹介いたします。フォクトレンダーのレンズの中でもF1.5以下の開放F値を持つ大口径レンズに与えられる称号、NOKTON(ノクトン)。今回ご紹介するレンズは「Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM」のリニューアルで、光学系や基本仕様は変わりませんが、レンズ先端部のフィルター取り付け部のデザインの変更や10%の軽量化(347g→322g)を実現。レンズ先端部のフード取付けバヨネット形状を変更したことで、専用フードLH-14・LH-15を収納時にリバース装着可能になり、取り回しの良さがさらに進化しました。多くのユーザーから厚い支持を受けている銘玉は、最新ボディとの組み合わせでどんな写りをするのか。『M11-P』に装着し撮影してきました。ぜひご覧ください。
萩のトンネルで長く垂れた萩にフォーカスして撮影。F1.2開放絞りのピント面は極薄ですが、たっぷりとボケる背景と相まって、立体感のある画です。

少し絞って小川の流れる水を撮影してみたのですが、流れていく水の描写はもちろん、岩の表面の凸凹を精細に描く解像力の高さに驚かされました。

赤、青、黄色、緑。1つ1つの色が、鮮やかでクリアに描き分けられていて見事な色再現性。水面が太陽の光を反射してキラキラと輝く様子や、ボールの濡れた質感も、非常にリアルです。

さらに絞って撮影してみました。案山子が1列に並んでいる面にフォーカスして撮影をしましたが、ピントを合わせた案山子の列から、奥に干された稲穂、そして背景の木々まで、シャープに写してくれました。

少し絞るだけでも周辺光量落ちが軽減され、全体的にスッキリします。拡大してピント面の中央部を見てみると滲みが消え、開放絞りに比べシャープで解像感が高くなったのが一目で分かります。ただ、その滲みが「味」としての表現力を持っているので、あえて開放絞りのカットで撮るという方も多いと思います。

さっきのカットよりさらに少し絞ってみましたが、コスモスの輪郭をしっかりとシャープに描いてくれます。前ボケが出来るように撮ってみたのですが、F2でも主題を引き立ててくれるキレイなボケになりました。シャープな写りと豊かなボケを両立させることが出来るレンズです。

教室の外からカーテンと窓がある奥を狙って撮影しました。やはり開放絞り時の「没入感」がたまりません。ハイライト、強い白色ではパープルフリンジが発生します。ただこの辺りは、F1.2の明るさなら出てくるものと想定内の範囲です。

明るい窓から、暗い手前の机の影まで、ハイライトの白から漆黒の黒まで。モノクロームで撮影すると、レンズが持つ階調の豊かさがより一層際立ちます。

今回のカットてJPEG撮って出しをリサイズしたものばかりですが、ここではRAWデータからシャドウを持ち上げましたカットをご紹介いたします。光が強く当たってしまう段はやはり白飛びしてしまいますが、窓から差し込む光が階段の1段1段ごとに色を変えていく様が面白くて撮影した1枚です。


開放絞りの描写が柔らかめ、というのは総じての感想としてあるのですが、こんなキレのいいカットを見せられてはまだまだ深堀りが足りないと認識を改めさせられます。非常に立体感のある写りを見せてくれました。前ボケになっているドアが奥行き感をさらに演出してくれています。


ガラス越しにコップのふちにピントを合わせて撮影。ピント面がとてもシャープでコップの質感もしっかり描写されています。

近接撮影時でも解像感が良く、国旗の布の縫い目の隙間がはっきり見えるほど、写してくれました。この柔らかい雰囲気、とても素敵です。

薄暗い室内、照明ランプに立体感を与え、壁に貼られた地図に当たる光は、肉眼で見るより、さらに印象的に写りました。撮ってみないと気づけなかった光。『 Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical II VM 』の光に対しての感受性の高さを改めて認識させられました。

最短撮影距離は70cm。開放絞りでは、その描写の柔らかさがより際立ちますが、不思議と嫌ではありません。むしろこの柔らかさが、このカットを採用した理由にもなりました。空は曇天。太陽は雲に隠れ、雲間からたまに光が射しこむ程度で、窓から少し離れた席に入る光は微量。そんな繊細な光をアーティスティックに描写してくれました。


夜間でも灯りがあれば、ISO感度を上げることもなくスナップ撮影が楽しめます。ネオンやスポットライトの強い光を受けても、それぞれの色が滲んだり飽和したりすることなく、驚くほどクリア。夜の街が持つ、多彩な光の色を忠実に描き出してくれました。
伝統の標準大口径がリニューアル
リニューアルを予定していたからか「Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM」が2024年に一度販売終了となるアナウンスがあったとき、再販を希望する声がとても多かったということですが、それも納得の写りでした。先代から受け継がれた光学性能はそのままに、デザインの変更・軽量化やフードの取り回しが良くなり、より使いやすさが向上した『Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical II VM』。キレのある描写も、情緒的な表現も撮れる銘玉をぜひお楽しみください。
Photo by MAP CAMERA Staff