Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical VM
2022年10月31日
今回はフルサイズMマウントセンサーに最適化したフォクトレンダー史上最高性能の準広角レンズ『Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical VM』をご紹介いたします。アポクロマート設計やF2.8とF5.6、F16でも円形になる特殊形状をした12枚絞り。ライブビュー機能を活用して、最短撮影距離0.5mでの撮影が可能です。『Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM』の撮影をして以来すっかりアポランターの虜になってしまった筆者、同じ冠をもつこのレンズを使える日を楽しみにしていました。色鮮やかなコスモスが咲き乱れるファーストカット、筆者の期待感に応える申し分ない一枚です。様々なシチュエーションで撮影してきました、ぜひご覧ください。
広大なコスモス畑にたどり着き感動していると、地元の保育園児でしょうか。背の高いコスモスで姿は見えずとも、わいわいとはしゃぐ楽しそうな声が聞こえてきます。写真を撮っていると後ろから走ってくる音が聞こえたので、ピントを置いてファインダーに飛び込んできたタイミングを見計らいシャッターを切りました。ほぼ運任せの撮影ですが、レンジファインダー機を手に取ると、いくら勝率が低かろうともこういう撮影に果敢にチャレンジしたくなるのが不思議です。
普段は人通りの多い道でのポツンとした一瞬。思い立ったらすぐにシャッターを切れるのはレンジファインダーだからでしょうか。はっきりした明暗差、ビルの反射など多様な光が一枚に込められています。フワっと風に持ち上がったコートなどまさにこの時、という一枚になりました。もう見慣れた街の光景のなかにさえ、写真は今でも一つのドラマを見せてくれます。
また少し場所を変え、閑静な住宅街の中にある名建築の庭園でのワンカット。なんと上品な描写をしてくれるレンズだろうと驚きました。肉眼では見えなかった『Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical VM』の眼が写す美しい世界を見せてくれました。
とてもシャープな解像ですがこれでも絞り開放。周辺になるにつれ形状はややレモン型になりますが、ボケの美しさや立体感のある描写などアポランターの称号を冠するにふさわしい素晴らしいレンズです。
絞り開放で見受ける周辺減光について。筆者はレンズの個性だと好意的に捉えていてあえてその癖を解消しようとはしませんが、F4くらいまで絞ったこのカットではかなり改善されました。どうこのレンズと付き合っていくのかを決めるのも楽しみの一つだと思います。
ライカの撮って出しは時折、調整や補正では真似できない見事な写真が生まれます。
『Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM』で撮ったときの光の美しさを、『Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical VM』もまた表現できるレンズだろうかという期待と不安の混ざった感情は、見事に昇華されました。標準レンズとはまた違うアプローチ。その場全体の雰囲気を取り入れつつ、光が生み出す立体感も見事に描写しています。やはりアポランターは素晴らしいレンズです。
波にさらわれる砂の間に反射する夕焼けを強調したくホワイトバランスを調整しました。前後のボケや周辺減光が写真への没入感を引き立ててくれた一枚。一見すればネガティブに感じてしまう点さえ個性や魅力の一つだと感じるのは筆者だけではないはずです。
きっとあなたが求めていた準広角
本当はこの日は海に行くつもりはなかったのですが、ビルの高層階からくっきりと見える富士山を見つけ、もう夕暮れを迎えそうな時間帯にもかかわらず海方面への電車に飛び乗りました。海での撮影も含め今回様々なロケーションで『Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical VM』を使いましたがどれも期待以上で、当時『Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM』で撮ったときの感動が甦りました。自分にとっての35mmのレンズを探す旅、このレンズはその求めていた答えかもしれません。アポランターで50mmと35mmを揃えて記録する、きっとそれだけで満ち足りるほど。フォクトレンダー史上最高性能の名は伊達ではありません。ぜひお手に取ってみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff