現行のライカSシステムのレンズ群の中で、最も望遠のレンズがこの『APO-Elmar S 180mm/f3.5』です。35mm判換算で144mmとしっかりとした望遠撮影と、圧縮効果を生かし被写体を浮き立たせる事の出来るレンズです。遠方のビルでもかなり引き寄せて撮影する事が可能。F値が3.5とミディアムフォーマットの望遠レンズとしては明るいながら、このクラスのレンズには僅かな手ぶれにもしっかりと気をつけて撮影したい所です。
Sシステムのどのレンズの描写でも感じる美点ですが、「解像度を極限迄切り詰めシャープネスとコントラストを優先にしている」というよりも「その場の空気や存在感をしっかりとすくい上げる。」そんな印象の描写です。発光するネオン管という高輝度の被写体ながら、管の丸みも含め実に自然に描写しています。
色収差を取り除くアポクロマート設計の恩恵か、ピント面は実にすっきりとした良い描写です。
180mmともなると、ミディアムフォーマットでもその圧縮効果は確実に出てきます。ビルの間を縫う様に配しても、グッと圧縮して期待通りの画を出してくれました。ただしf6.8でもボケは大きく、100m近く離れた先でも無限遠がボケてしまっています。こればかりはしっかりと絞って三脚で撮影をするべきで、今回は叶いませんでしたがしっかりと絞って撮影した際の画像クォリティの高さは更に素晴しいものになるでしょう。
F値が明るく、防塵防滴仕様で、35mmフルサイズ機と大差のないサイズ。街中を撮影していてもミディアムフォーマット・デジタルという印象は希薄で、ついこういった写真を撮影していましたが考えてみるとやはりこれは凄い事です。
Sシステムでしっかりとした望遠レンズを使いたい時に、この1本。ミディアムフォーマット180mm/f3.5のスペックからすると実に軽量コンパクトながら、その実力は素晴しいものです。そもそも手持ちのスナップで使用するべきレンズでは無いかもしれませんが、そんな悪条件でも十分その実力を見せてくれました。しっかりとした準備を行い撮影すれば、そのポテンシャルは計り知れないものです。
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.