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【特別版】 写真家:舞山秀一 『私の視点』

【特別版】 写真家:舞山秀一 『私の視点』

2023年02月01日

 

写真は衝動。きっかけはいろんな場面で発動する。友達との会話、映画、絵画、小説、TVニュース番組、散歩、舞台鑑賞、音楽ライブ、感動する出来事、悲しい出来事、見知らぬ地への旅、私にとって写真は、些細なきっかけによって起こる衝動を形にしている事象みたいなもの。

写真とは、観たままが写っているようで、本当はフォトグラファーが感じたことが写る。同じ場面で同じシーンを数名のフォトグラファーが撮影したとしても他人と同じ写真にはならないように、人それぞれ感じ方と持っているテクニックが違うから、それぞれの視点で個性を育んで描きだされる。それを理解して自分の個性を早く見出せた人が、その個性を磨くことで、人に伝わる作品作りに生かされるようになる。しかし個性を磨けば磨くほど、協調性を失ったり社会性に欠けたりと、疎外感を感じるようになることも否めない。

私が考える写真の絵作りに必要なのは第一に「構図」で、35mm50mm75mmの単玉ならフレーミングは被写体を見ただけで切れるので、カメラを構えずアングルを探し、好きな構図を見つけるためにひたすら足で稼ぐ、風景もスナップもポートレートも、そのせいか三脚を使って撮影することはほとんど無い。アングルが見つかれば、カメラを構えそのままシャッターを切るのだが、そこで2番目に必要なのが被写体の「表情」なのだ、表情は構図に命を吹き込んでくれる。風景もスナップもポートレートでもそれは同じで、構図と表情が合わさった時に作品の完成度も上がる。

今回の撮影は、雪の風景。それも吹雪いている風景。

撮りたくてここ数年何度もトライしているのだが、その都度天気が良く、雪の降っていない白銀の美しい世界ばかりで本当に出会いたい激しく吹き荒ぶ雪を撮れてない。そのことが心残りで、今回の作品を撮るにあたっては天気予報を小まめにチェックし、天候が崩れるのを狙って撮影日を決め、そのタイミングでモデルに連絡したところ偶然にもスケジュールが合い、念願の吹雪風景と吹雪ポートレートを撮ることができた。 

 

絞り:F4 / シャッタースピード:1/60秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M35mm F1.4 ASPH.

 

絞り:F4 / シャッタースピード:1/250秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M35mm F1.4 ASPH.

 

絞り:F2.4 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M35mm F1.4 ASPH.

 

絞り:F2.4 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M35mm F1.4 ASPH.

 

「吹雪で戯れる」雪深いところで育った人々には、私のような感覚は浮かばないかもしれないが、吹雪いている風景が心底美しく荘厳に見える。撮影は吹雪の中車を走らせ、刻々と変化する風景の美しさに感動しながら撮影を行った。雪は次から次へと風景に白い化粧をしていくように道路についたタイヤ痕もあっという間に真っ白に覆い隠し、生活感のある標識や看板、車など、あらゆるものが白いベールに包まれる。表情変化の速度が半端なく、感動のため息を何度ついたか分からないくらいだ。
そんな表情豊かな風景に人物を立たせることで、構図を再構築する。人の存在感が風景という表情をより豊かにしていく。風景の表情だけではなく、そこに立つ人の表情も大切で、楽しい風景になったり辛い風景になったり、写真に物語を語らせるのは写真家の妙技。人は声を掛ければ表情が変わるが、風景は待てば表情が変わる。 

 

絞り:F2.8 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M35mm F1.4 ASPH.

 

絞り:F4 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M35mm F1.4 ASPH.

 

絞り:F2.8 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M35mm F1.4 ASPH.

 

絞り:F4 / シャッタースピード:1/2000秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M35mm F1.4 ASPH.

 

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/4000秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M35mm F1.4 ASPH.

 

人物を撮影する機会が多いから浅いフォーカスの開放で撮影することが多いのだが、今回はそれを撮りつつも奥行きのある風景を捉えたいと思い被写界深度が深い写真もおさえてみた。フォーカスの深度で雪の奥行き感を表現できたことで、被写体と背景という2Dの世界から3Dの空間感を感じる写真へと変化した。そして深度を深くする為にシャッタースピードを遅くしたことによって、激しい風に流れる雪はブレた軌道がそのまま写真になって吹雪の激しさを表現できたりもした。吹雪狙いで引き続き何度かトライして作品が纏まったら是非どこかで写真展でも開催したいと思う。 

 

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M50mm F1.4 ASPH.

 

絞り:F1.7 / シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M50mm F1.4 ASPH.

 

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/2000秒 / ISO:64 / 使用機材:LEICA M11 + ズミルックス M50mm F1.4 ASPH.

 

私の発表している写真は、モノクロ作品が多い。なぜなんて考えたこともないが、モノクロだと構図が作りやすく、カラーでは世界に表情が多すぎて整理できないから感覚的にモノクロで描いているのかもしれない。

今回使用したカメラは、LEICA M11 + ズミルックス M50mm F1.4 ASPH. & ズミルックス M35mm F1.4 ASPH. 得意な撮影スタイルが確立しているLEICAのM型カメラだ。長いことLEICA M9で作品や仕事をこなして来たので当然馴染み深い。使いこなすには一癖も二癖もあるカメラなので、そのもどかしさが良いところでもある。しかしLEICA M9と比べると遥かに使いやすく、撮り心地という感覚的な魅力も格段に上がっている。

吹雪は白く全てを覆い隠すように、風景も人も包み込んでしまう。全ての輪郭が滲み、形も奥行きも消し去ってしまう。風は一度舞い降りた雪も再び空へ舞い上がらせる。普段見えない風が、雪で形を描き、まるで生き物のように駆け巡る。五感で感じる感覚で挑む撮影も悪くない。 

 
写真・文 : 舞山 秀一
model : 大谷 麻衣 (月の羊) https://www.moon-aries.net/contact

 


 

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