『LEICA Elmarit S 30mm/f2.8』、ライカSシステムの5本のラインナップの中で最新のレンズであり、35mm判換算で24mmと広角レンズならではの描写を期待できるスペックのレンズです。その画角とミディアムフォーマットという点を鑑みなくとも、この描写は驚愕すべきものでしょう。『LEICA S2』のレンズラインナップの優秀さはかねてより耳にしていましたが、ここまでの描写とは思いませんでした。周辺すみずみまで描写に破綻が無く、細かいパイプ等も自然な立体感を保って描写されているのはフォーマット故の余裕からでしょうか。前回試写を行った75mmも優秀な描写でしたが、解像感の高さはそれ以上と思われます。
車のヘッドライト、その実に細かい部分まで描写しています。絞り開放でこの写りなのですから参ってしまいますね。ライカといえばレンジファインダーのMシリーズがやはり有名ですが、35mm判一眼レフのRシリーズのレンズはその描写の良さゆえ熱狂的なファンが居たものです。「ライカの一眼レンズは凄い」はSシリーズのレンズにもあてはまるのでしょう。
ミドルフォーマット故、F8まで絞り込んでも遠景がぼけてしまっていますが、中距離、近距離の描写は凄みすら感じさせる怒濤の解像力です。重ね重ねですが、これで元データの1/4。撮影中に背面液晶で確認しているだけで、これは凄いレンズだという事が一目で分かる高画質です。ただし解像力だけを優先してカリカリになってしまう事無く、全体のトーン描写のバランスもとれているのは設計段階でのポリシーに基づくものでしょうか。それぞれの被写体がそれぞれとして、立体感を持って存在しているのはさすがです。
金属の質感、ガラスの質感、細かい部分まで実にしっかりとした描写です。『LEICA S2』はミディアムフォーマット一眼レフとしては驚愕の使いやすさですが、レンズもフォーカシングを含め取り回しの良いもの。ついついフルサイズのデジタル一眼を使用している感覚で使ってしまうのですが…その使い方でも結果を残してくれるというのが『LEICA S2』のパッケージングの素晴らしさでしょう。また、少々雨がふっても気にしないで撮影できるのは試写でも非常に助かった点です。
逆光耐性も良好、試写中にもフレアを感じた事はほぼありませんでした。しかしミディアムフォーマットで30mmともなると、スペック以上に開放感の有る撮影が行えます。
35mmフルサイズと比べれば少々大柄なレンズですが、ミディアムフォーマットで30mm、防塵防滴仕様でF2.8という大口径スペックを考えれば納得のサイズです。大きなフォーマットというのは時にレンズ性能に無理を強いるものですが、このレンズにはそんな心配はいらないでしょう。ライカSシステムの最広角域を担う本レンズ、Sシステムの完成度を更に高める、ライカ銘レンズの1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.