Voigtlander HELIAR 40mm F2.8 Aspherical VM
2022年03月30日
フォクトレンダーより発売されていた『HELIAR 40mm F2.8 VM』という沈胴式レンズをご存知でしょうか。VMマウントながらピントリングが無く、絞り機構のみ付いている摩訶不思議なレンズだったのですが、どのように撮影するのかというと近接撮影用のヘリコイド付きマウントアダプターへ装着し、そのヘリコイドをピントリングとして流用する驚きの使用方法なのです。ミラーレス機での使用を前提にマウントアダプター専用に作られたレンズという大変尖った商品だったのですが、惜しまれつつも2021年11月に生産を完了いたしました。
そして今回ご紹介する『Voigtlander HELIAR 40mm F2.8 Aspherical VM』はその光学系を継承し、新たなVMレンズとして生まれ変わった1本なのです。その見た目はまるでオールドレンズ黄金期に作られた小型と造形美が共存する準広角レンズのよう。古典的なヘリアタイプのレンズ構成に非球面レンズを合わせることで開放から解像力の高い描写が特徴です。新生ヘリアー40mmの描写をぜひお楽しみいただければと思います。
和の写真から始まった今回のKasyapa for Leica。少しお寺を歩いてスナップしていきます。鐘のカットは何気なく一枚だけ撮ったのですが、後で見返した際にその重厚で立体感のある描写に驚きました。これが絞り開放で撮れる本レンズの実力、高い表現力がうかがえる一枚です。
公園の丘をゴロゴロ転がり降りてくる愛娘。周辺がストンと減光し味のある描写だったのでモノクロームで仕上げました。解像感はありながらも少しノスタルジックな雰囲気のある描写は、絶妙な塩梅という印象です。
『Voigtlander HELIAR 40mm F2.8 Aspherical VM』ですが、M型ライカで使用する場合は50mmのブライトフレームが表示されます。フレーム内に被写体を納めておけば切れることはありませんが、四隅は完全に慣れと想像の世界。最初はどのくらい写りこむのかと探り探りの撮影でしたが、不思議と慣れるのがあっという間で思い通りの構図を頭に描いて撮影できるようになります。そもそもレンジファインダーの時点でブライトフレームなんて目安でしかない曖昧なもの。より感覚的に使えるレンズとして40mmの画角は撮影していて気持ちのいいレンズだと感じました。
満開のユキヤナギを最短撮影距離である0.7mで撮影。非球面レンズの採用もあってか近接でもピント面は解像感のある描写です。F2.8という明るさも被写界深度が浅すぎず、どんなシチュエーションでも撮影できるレンズという印象です。
レンズカラーに合わせ、フードの塗装も「ブラックペイント」と「ブラッククローム」に塗り分かれている仕様に。
さらにブラックペイントではフォーカスロックボタン・フォーカスレバー及び無限・近距離ストッパーがニッケルメッキ仕上げになっています。
小さく、美しく。
今回ご紹介した『Voigtlander HELIAR 40mm F2.8 Aspherical VM』。コンパクトで優れた描写力もさることながら、フォクトレンダー製品の魅力を濃縮させたようなこだわりと作りが感じられたレンズでした。古き良き時代に作られたようなヴィンテージスタイルの外観に加え、塗装やメッキ、ローレット加工など細部にわたって作り込み、さらにはバルナックライカにも装着できるL39スクリューマウントまでラインアップに加えるという徹底ぶりです。令和の時代に発売されたレンズが約90年前に登場したフィルムカメラにそのまま装着できるなんてロマンといいますか、コシナの揺るがない物作りへの精神を感じたような気がします。描写、造形、想い、全てが美しいと思える1本でした。
Photo by MAP CAMERA Staff
▽令和の時代にL39スクリューマウントをラインアップさせる心意気、素晴らしいです。▽