“ヘリアー”と聞けば、オールドレンズファンには気になる方も多いだろう。旧ドイツはフォクトレンダー社が1900年に設計・生産した銘レンズとして名高い1本である。戦前の6×9判カメラの銘機”Super Bessa”には3本のレンズがラインナップされていたが、その中で”ヘロマー””スコパー”の上、最上位ランクとして搭載されていたのがこの”ヘリアー”であった。
今回使用したのはフォクトレンダーブランドの創立250周年の記念モデルとして発売された1本、沈胴式のボディデザインと輝くクロムメッキが美しい1本だ。最新技術により現代に蘇った銘玉”ヘリアー”、その描写をぜひご覧頂きたい。
1枚目、2枚目ともに像の瑞々しさが目を引く。繊細で色彩も美しい、ただ周辺に若干の収差が見られる。ここがこのレンズの味であり個性であるのだが、それについては後の写真でお話ししたい。
ピント面は実にシャープだが、その後ろの点光源のボケの形に注目して頂きたい。これが見たいが為に撮ったカットでもあるのだが、このレンズの個性が見受けられる。
ピントピークは十分にシャープである。色抜けも良い。しかし前後のアウトフォーカスに何やら滲みや結像のゆらぎが見える。この現代的な面とクラシックな面の相反しているところがこのレンズの最大の見せ場であり魅力な点であろう。ただクラシックなだけではない、ただ優秀なだけではない、こうしたレンズは使いこなしがいのある1本である。
トロリとした質感描写の魅力的な描写だ。夕暮れ時のマジックタイム、その青みがかった光も美しい。
市場には色鮮やかな作物が並ぶ、その色彩も新鮮に描き出す。ハロウィーンが近いせいか、カボチャが良く売れているようだった。
F2あれば、夜間のスナップもかろうじてこなせる。ここは微妙なラインだが、大きな境界線だ。夜の街は魅力的な被写体にあふれている。
今回使用したのは総クロームメッキのきらめく様に美しいレンズだ。今や沈胴式レンズを生産するのは技術的に難しいと聞くが、カッチリとしたその動作は信頼感の有るものである。フロントリムにバヨネットが切ってあり、そこにフードを装着する仕様だ。このレンズはこの他にブラック仕様もあるが、そのレンズもクロームとのコンビネーションの美しい1本である。想像以上に個性的なこのレンズ、限定生産品で単体で見かける事は少ないが、ぜひ使ってみて頂きたい往年のスピリットを現代に感じる1本である。
Photo by MAP CAMERA Staff