これはSONY α7RⅢを、軽量性だとかAFだとかを無視して古いレンズの母艦機として運用している筆者の日記です。
母艦機とは本来燃料や航空機などを輸送する船のことを指す言葉ですが、カメラボディに対してこの言葉を使う場合は「レンズを使うためのボディ」という少々ややこしい意味を持ちます。
フランジバックの問題でレフ機ではアダプターがなく楽しめなかったあのレンズもこのレンズも、ミラーレスならすべて楽しめるというわけです。
大昔の聞いたことがないレンズから一度は耳にしたことがあるレンズまで、α7RⅢに付けて楽しんでいきたいと思います。
今回使用したSummarは製作者を以てして「失敗作」と言わせしめた一本です。
前玉の硝材(ガラス)が非常に柔らかく拭くだけで傷ついてしまう点、そして開放ではおよそ使い物にならないボケ玉としてそう言われたそうです。
時は流れて21世紀、その”写らなさ”が良いのだと密かにブームが再燃しつつあると言う訳です。
バリエーションとしては通常のシルバークロームとニッケル鏡筒、鏡筒先端部のみ黒い通称「先黒」、固定鏡筒の「ひょっとこ」、前玉を1枚増やした南国仕様の「トロッペン(トロピカル)」等が存在します。
歴史的な視点から言うと、ライカの銘玉ズミクロンの先祖にあたります。
ライカで初めて50mm F2のレンズとして発売され、現代のアポズミクロンまで脈々とその系譜を紡ぎ続ける一本でもあります。
今回はそんなLeica Summar L50mm F2とお届けします。
思ったよりしっかり写る個体だな、というのが第一印象でした。
全体的にふんわりとはしているものの、ピントの芯ははっきりして開放のわりにボケも汚くないです。
この手のレンズの面白い所は個体により写りが全く違うというところでしょうか。
先述の前玉の傷の大小や経てきた年数故の内部の曇り、ガラスのヤケ等で千差万別十人十色。とにかく写りの質が違います。
パッキリした写りの物もあれば、ぼやぼやでどうしようもない個体もあったりします。
中には山崎光学研究所で再研磨とコーティングを行った、山崎ズマールという物も存在します。
詳しくはコチラからどうぞ。
中央部の解像力だけが異常に高く、そこから外れると一気にボケていく個体のようです。
前玉に傷一つない為素人の手でも入った再研磨個体かと思いましたが、それにしては像がしっかりしているのでただただ謎です。全体的にコントラストは低めでフレアが出やすいながらも周辺はそこまで暴れません。
この穏やかな周辺減光は刺さる人には刺さるのではないでしょうか。
大自然の中にポツンと一棟だけ建物があるのが気に入りシャッターを切ったのですが、後から見ると絵画的な描写も相まってお気に入りの一枚になりました。
写るズマール、というのも不思議なものです。
写るレンズが欲しければズミクロンを、とよくご案内するのですが、ここまで写る個体ならば味という面からズマールを選択肢に入れても良いかと思います。
フリンジもほぼ出ず、周辺もそこまで大きく流れはしません。
光の滲み方も品があり、個人的には結構好きな描写です。
最後は日陰で一休みする自転車を。
葉の解像感と前ボケの妖しさがお気に入りの一枚です。
さて、今回は製作者を以てして「失敗作」と言わせしめたライカ初のハイスピードレンズ、Leica Summar 50mm F2とお届けしました。
本数だけ写りに違いがあり、ズマールを売って別のズマールを買う方もいる程奥が深く面白い一本です。
是非皆様好みの一本を見つけてみてください。