「新境地」を迎えたニコンのミラーレス一眼、Zシリーズ。地の使い勝手が向上し、カメラとしての高い信頼を勝ち得た「Z6II」に続いて、まさにZのリーダー的存在として先日発売された「Z7II」など、元来のニコンユーザーのみならずカメラ愛好家全体から高い評価を受けています。
さて、そのまばゆいスポットライトを共に浴びつつ、より軽量で十分な性能を携えることから脚光を浴びているのが今回の主役である『Nikon Z5』です。 マウントアダプターという愉しみ方を考えた時、この一台は必要かつ最低限を網羅したベストチョイスであると言えます。堅牢性と軽量化を両立したマグネシウム合金製ボディからくる撮影の安心・安定感。しっかりとした持ち応えがあるのに一日撮影しても疲れを感じません。装着したいレンズがレンジファインダー用などコンパクトなものが多い所で、ボディの方が存在感が強くてはナンセンス。明瞭なEVFはマニュアルでのピント合わせを助け、手振れ補正と高感度耐性が撮影を強力に支え被写体を逃しません。
そんなボディの相棒として選んだのは『Leica Summarit M75mm F2.5』です。75mmという中望遠の焦点距離は実に絶妙。「ここが美しい」「ここが面白い」という部分を生き生きと切り撮る事が出来ます。際立った輪郭が被写体を立体的に見せ、ポートレートやスナップにおいて無二の描写を与えてくれます。 ライカらしい滋味あふれる写真を軽妙に楽しむことが出来ましたので、是非ご覧下さい。
連続して並ぶ蛇口の一つにフォーカスを合わせました。前ボケ、後ボケ共に自然で柔らかく、奥行きをふわりと表現してくれています。また、開放での撮影ですがピントの合った蛇口の金属がざらついている様も見受けられます。周辺減光はレンズの味、より視線を誘導してくれています。
この写真の違和感に目を止めて下さった方がいるなら、嬉しい所です。時計を鏡の反射を利用して撮影し、文字盤と針が逆になっています。レトロな空間に、隠し味の様に「奇妙」を紛れ込ませてみました。僅かにですが、鏡の縁に生まれた玉ボケが美しいなと後で気付きました。ISOをやや高めに設定しましたが、この辺りではノイズは全く感じません。
画角を整理しながら立ち回れる75mm。時代を感じさせる自転車の前輪に、ロゴをあしらった飾りを見つけました。錆びることでその歴史の重みを増す金属の表情を、飾らず救い上げる『Leica Summarit M75mm F2.5』の写りに感嘆の息が漏れました。ややアンダーな露出が雰囲気を引き締めています。
魅力的なイラストに引き込まれる黄色の缶にピントを合わせましたが、写したかったのはリフレクションする夕陽の美しさです。向かい合っているビルの壁面を潤沢に輝かせる夕陽の眩しさを、間接的に切り撮りました。ビビットな黄色とナチュラルな黄色のコラボレーションも狙っています。
自然が織りなす造形に、胸を締め付けられるような感覚を覚えることがあります。複雑に、そして乱雑に伸びているように見える木の枝が折り重なっていき、無秩序な線が何かを描いていきます。そのフォルムに集中するためにここはモノクロを選びました。
普段は、露出ダイヤルをMモードにして撮影することの多い筆者ですが、今回は絞り優先のAモードにして一日撮影を行いました。『Nikon Z5』に身を任せて、軽快にシャッターを切っていく感覚は非常に快適。また『Leica Summarit M75mm F2.5』の操作感の良さも相まって使えば使うほどに愉しみ深い組み合わせでした。
最新鋭の機材が各メーカーから発表されるたびに、新機能や尖った特徴に色めくこともありますが、「カメラの本質」を味わうことは忘れたくないなと常々思います。ピントが合えば心は喜び、シャッターボタンを押す指が躍れば、自ずと会心の一枚は付いてきます。写真撮影の原初的快感を強く残す「Zシリーズ」は、まさに世界を代表する歴史ある光学メーカーとしてのニコンの誇りなのでしょう。そして、互いを高めあうように競ってきたライカと魅せる相乗効果は、予想をはるかに超えて素晴らしい物でした。日も短くなり、寒い日が増えてきましたが冬の空気の中でしか出せないカットをこの組み合わせでまた撮っていきたいと思います。
Photo by MAP CAMERA Staff