Thypochから「Simera」に続く新レンズが登場しました。その名も『Thypoch Eureka 50mm F2』。古代ギリシャの学者アルキメデスからインスパイアされたという「Eureka」シリーズは、ヴィンテージ・イメージのスタイルを探求するデザインになっているそうです。そのスタイリッシュなデザインはフルフレームに対応したコンパクトな造り。撮影欲を刺激されるメーカーの紹介文を読んでいると、その中で「Eureka 50mmは44mm x 33mmフォーマットをカバーし、最大100メガピクセルの高画質を保証します」というコメントに目が留まりました。一度気になってしまったらもう撮らずにはいられません。ということで今回は43.8mm×32.9mmのイメージセンサーを持つ「FUJIFILM GFX100S」に装着して撮影してみました。どんな写りを見せてくれるのか、少年心をくすぐられる組み合わせに撮影前からワクワクが止まりません。
というわけで最初にご紹介するのはこちら。スクーターのメタリックカラーの赤が目を引きます。そして驚くほどにシャープ。手前に入れた手すりの前ボケも良い感じです。フィルムシミュレーションは「クラシックネガ」を使用しましたがとてもマッチしていると思います。気になる周辺減光ですが、ご覧いただいた通りもともと周辺が暗い状況ならあまり目立ちません。それでは色んなカットと絞りで見ていきたいと思います。
F4まで絞ってみました。開放絞りでも十分にシャープだと思っていたのですが絞るとさらに解像感が高くなります。素晴らしい写りです。
開放絞り&最短撮影距離で客席の先端にピントを合わせました。最短撮影距離は0.9m。驚いたのはこのシャープな写り。近接でもピント部はきっちり写ります。ボケもまろやかに溶けるとまではいいませんが、ざわついているわけでもありません。個人的には絶妙に好ましいボケ感で、写真に勝手にストーリーを付けたくなる写りです。
F8まで絞ることで周辺減光をほぼほぼ解消することが出来ます。隅のほうはどうしても暗くなってしまいます。レンズフードを装着するとさらに減光が目立ってしまったので、今回はレンズフード未装着としました。
このカットは35mmフォーマットモードで撮影をしました。周辺まですっきり写ります。これでも約6,000万画素で撮影できる「GFX 100S」の画素数には驚きです。そして35mmフォーマットモードではアスペクト比が「3:2」に変更になります。そこで考えました、ではクロップしないで「4:3」ではなく「3:2」にしてみたらどうかと撮ったのが次のカットです。
「3:2」(11648x7768pixel)での開放絞りと少し絞ったカットです。周辺減光はもちろんありますがF8まで絞ったときでも残る四隅の影は見えなくなります。開放絞りだとそもそも四隅の影は周辺減光で覆われて見えないので気にする必要はないとも言えるのですが。フルフレームのアスペクト比は基本的に「3:2」なのでそこだけ合わせて撮ってもいいかもしれません。周辺減光がどう影響して、どうすれば解消するかを考えての実験でしたが、ユーザーの許容範囲でお好みに撮るのが一番だと思います。個人的には気になるときだけは「3:2」にしてあとは「4:3」でいいかなという感じです。
実験的なことはこのくらいにして、また色々と撮ってみます。このピント面の立体感やたるや。オールドレンズチックなボケ味なのに煩さはありません。そしてこのカットは開放絞りなのに周辺減光のクセがあまり出ていません。
フィルムシミュレーションを「PROVIA」にしてみました。相性の良さから「クラシックネガ」をベースにして撮影していましたが、スタンダードでも綺麗な発色です。
撮影日が曇りだったので、次の機会があれば晴れの日の顔も見てみたいです。ただ曇りの日でもこんなに楽しく撮影できるくらい「Eureka 50mm F2」の写りは好みでした。中判フォーマットのカメラを持っている方もスナップ用に一本いかがでしょうか。
マウントアダプターには「SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/フジフイルムGFXボディ用 LM-FG IV」を選びました。IV型ではロック機構がついており、より安心して使えるようになっています。組み合わせたときのメカっぽさも気に入っています。指先が少し触れただけで絞りがずれてしまうこともあったので開放絞りにこだわりたいという方は少しだけ気にかけていただくといいかもしれません。アスペクト比を変えたり絞りを変えたりして撮影を行ってみましたが、周辺減光はあるけれど、それも味。どうしても気になる、なくしたい場合はF8まで絞ったりアスペクト比を3:2に変えてみたり35mmフルフォーマットモードで撮影すればOKという結論です。100メガピクセルの高画質を保証する、というのも信じられるほどの高い解像力を見せてくれました。手のサイズによると思いますが個人的にはフォーカスレバーが動かしやすくて撮影は非常に楽しかったです。撮影が終わったあとのポジティブ・ネガティブどちらの要素も加味したうえでも、この組み合わせで撮る「ワクワク感」は撮る前と変わりません。久しぶりにチャレンジングな撮影ができて非常に楽しい撮影体験でした。もちろんフルフレーム機での使用にもおすすめです。Eurekaには(探していたものが)見つかった!という意味があるそうです。もしかしたら『Thypoch Eureka 50mm F2』がその運命的なレンズだったりするかもしれません。ぜひいちど使ってみてください。