先日、本サイトで紹介した特徴的な2倍マクロレンズを発売したサイトロンジャパンからまた新たなレンズ、『LAOWA 105mm F2 Bokeh Dreamer』が登場しました。
ボケドリーマーの名の通りボケ味を楽しむレンズは、レンズユニット内に「アポダイゼーション(APD)フィルター」を搭載し、光の透過率をレンズの中心から周辺に向かってなだらかに変化させ、より滑らかなボケ味が得られるよう設計されています。
アポダイゼーションフィルター搭載レンズと言えば、「SONY STF 135mmF2.8[T4.5]」や「FUJIFILM XF56mm F1.2R APD」などがありますが、正直これらのレンズとは無縁だったたため今回初のAPDデビューとなります。早速その効果を体験してきました。
最初に訪れたのは夏の風物詩の風鈴市。全国各地の珍しい風鈴が涼しい音色を奏でています。
透明感の高い描写で、ガラスの透き通る質感をしっかり捉えてくれました。ボケも自然で綺麗です。
絞り:F2(T3.2) / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:400 |
絞り:F2(T4) / シャッタースピード:1/100秒 / ISO:400 |
絞り:F2(T5.6) / シャッタースピード:1/50秒 / ISO:400 |
絞り:F2(T8) / シャッタースピード:1/30秒 / ISO:400 |
綺麗なボケ味は織込み済み。やっぱり気になるのは、本レンズの最大の特徴でもあるAPD効果と言うことで、早速実験開始です。
絞りリングとは別に設けられた光量調整リングにはT3.2/T4/T5.6/T8と4段階分の記載があります。クリック感は無いので数値に囚われず自在に調整できますが、ボディにレンズ情報の伝達が無いため露出補正上、数値通りに合わせた方が使い易い印象を受けました。
絞りは解放F2のままでもT値が大きくなるにつれ周囲のボケが抑えられ、中心部からよりなだらかにボケていくのが分かります。
大きくて柔らかなボケが、風に揺れる風鈴をより幻想的に捉えてくれました。薄い短冊などに見られがちな2線ボケも感じられず、さずが、ボケの美しさを追求したレンズと言ったところでしょうか。
日中でも点光源の輪郭も綺麗な円形で、ふんわりしているのが分かります。
前後共になだらかなボケ味で、その他大勢の中から主役がしっかり引き立ちます。一般的な大口径レンズよりボケの傾斜が弱いおかげで、浮いた感じはなくとても自然な印象です。
ボケ味だけではなく、中望遠レンズとしても優秀です。少し絞れば隅々までとてもシャープな描写です。タワーの細部までしっかり確認する事ができます。青空の抜けも綺麗で、透明感の高さも伝わります。
なだらかなのはボケ具合だけではありません。光の明暗差もなだらかに再現され、木陰から日向にかけてのトーンがとても自然で、美しい立体感を演出しています。
14枚もの絞り羽根を有する大口径レンズは、木漏れ日の点光源も綺麗な円形を披露してくれます。
逆光時にゴーストが発生しました。付属のフードを使用してましたが正面からの強い日差しは少々苦手のようです。
とは言え、透明感の高いレンズは石段の細かな模様までしっかり捉えてくれました。
奥行き深いシーンでも、周辺のボケがなだらかなおかげで、とても自然です。ぼーっと遠くを見つめているときの視界に似ている様に感じます。
水の透明感もさすがですが、柄杓のエッジのキレに驚きます。ボケの中にも強い光の輪郭がしっかり残っているおかげで、柔らかさの中にもメリハリを感じる画になりました。
夕方、マンションの屋上で追加したカットでは、遠景の細部まで捉える本レンズの高い解像力を感じることができました。
APD効果で周辺光量が落ちる様子もなく、ボケを意識した被写体だけではない幅広い用途での活躍が見込めます。
耐久性に優れた金属製鏡筒で質感も上々。通常レンズより操作部分が多いだけに使い勝手は重要です。
描き出される画は最新レンズらしい綺麗な描写で、なによりこの上ない美しいボケ味は、APD効果を十分に堪能できました。
光量調整はボケ味のコントロールだけではなく、動画撮影時等でNDフィルター代わりに利用することも可能で、応用範囲の広さにも驚かされます。
最初は慣れない仕様に多少の戸惑いもありましたが、仕組みを理解するにつれ楽しさと新たな発見を感じることができました。
作品に少しスパイスを効かせたいと考えている方には最適なレンズかもしれません。ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff
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