Nikon AF-S NIKKOR 180-400mm F4E TC1.4 FL ED VR
ニコンから新しい超望遠ズームレンズ『AF-S NIKKOR 180-400mm F4E TC1.4 FL ED VR』が登場しました。ズーム全域でF4通しの超望遠ズームと言えば、既に「AF-S 200-400mm F4G ED VR II」が販売されていますが、その商品名からも分かるように新レンズは大幅な進化(広角側が180mm。蛍石レンズの採用。1.4倍のテレコンバーター内蔵など)を遂げています。
レンズの大きさを考慮し使用したカメラは「Nikon D5」。約3500gのレンズとの合計は、なんと5kgです。普段スナップ撮影をメインに行なっているKasyapaは、今回も手持ち撮影で頑張りました。これまでにない大変な撮影でしたが、新レンズの魅力が少しでもお伝えできれば幸いです。
まずは東京駅のホーム先端から入線する新幹線を狙いました。カーブしながら接近する新幹線が視界に入ってからカメラを構えたものの、フレーム一杯に接近した頃には腕が震えだす状態。そんな体力不足の私を補ってくれたのが4段分の手ぶれ補正と、カメラの揺れにも関わらず、常に車両前面を捉え続けてくれた強力なAF性能です。
ホーム先端の障害物をクリアにすべく、早速新機能の内蔵テレコンバーターを活用しました。400mmからもう1歩踏み込める1.4倍にするテレコン機能は本当に便利です。
これまでテレコンバーターといえば、焦点距離を容易に稼げる反面、明るさと若干の画質低下を覚悟しなければなりませんでした。しかし、レンズと一体化された専用のテレコンバーターは、画質低下をまったく感じさせません。クリアな描写は車両の光沢を綺麗に再現しています。明るさもカメラ側の高感度耐性が強くなったおかげで、十分なシャッタースピードが稼げますから、デメリット無く、テレコンバーターの恩恵にあずかれる印象です。
ニコンカラーの新幹線「ドクターイエロー」に遭遇しました。なかなかお目にかかれない電気軌道総合試験車は、映画「幸福の黄色いハンカチ」にもじって、幸せの黄色い新幹線と呼ばれ、見ると幸せになると噂されています。 とは言え、インターネットで様々な情報が入手しやすいご時世。この日もこの新幹線を目的に集まった人でホームは大賑わいです。普段なら人混みに混じって撮影するところですが、今回の機材は便利な超望遠ズーム。人混みから離れた場所で撮影を楽しむことができました。 ホーム屋根の隙間から強い日差しが差し込む難しい光線状態でも、鮮やかな黄色い車両を綺麗に捉えています。
撮影場所を上野に移し散策していると綺麗な梅の花を見つけました。本レンズの最短撮影距離はズーム全域で2m。F値開放で限界まで近づけばこれだけ綺麗なボケ味も楽しめます。
動物園での撮影でも望遠レンズならではの迫力ある撮影が楽しめます。
日差しの関係で、少しコントラスト高めに映ったフラミンゴもその鮮やかな朱色を綺麗に再現。羽の質感描写もさすがです。
ガラス越しに近づく虎を狙いました。ここでも速くて正確なAFを再確認できます。柔らかそうな毛並みに針金のような髭など、質感描写も素晴らしく、被写体との距離感を見失うような感覚に陥ります。
180mmと広角端が広くなったのも便利です。大きなレンズなだけにレンズ交換も一苦労ですが、幅広い焦点距離をカバーすることで、交換作業自体を減らすことができます。描写も素晴らしく、蛍石レンズを採用した新しい光学設計により、周辺部まで高い解像力を発揮しています。
不忍の池には沢山の水鳥が羽を休めていました。近くにいた人がお弁当を広げたとたん、おこぼれにあずかろうとしたカモメが一斉に集まります。素早い鳥の動きに合わせてカメラを動かすのに苦戦しましたが、速くて追従性の良いAFのおかげで、綺麗に捉えることができました。 また電磁絞りのおかげで、秒間12コマの高速連写でも安定した露出で撮影ができました。
河津桜の中にヒヨドリを発見。望遠400mmで覗いたところもう少し寄りたいと思わせる距離感です。鳥撮影では目を離すと見失ってしまう事が多く、ひとまずシャッターを切って後でトリミングというのがこれまでのスタイルでしたが、本レンズならファインダーから目を離さず1.4倍の560mmにシフトが可能。鳥の表情をより細部まで楽しむことができました。
強い逆光状態だったため露出を2段プラスに補正しましたが、桜の色も綺麗に再現しています。ナノクリスタルコートによるクリアな描写も健在です。
カメラのプレビューボタン付近に設けられたテレコンバーター切り換えレバーのおかげで、ファインダーを覗き、カメラのグリップを握ったままの操作が可能です。
手持ち撮影でもファインダーを覗きならの切り換えが可能です。瞬時に切り換わるファインダ像は楽しく、一見の価値があります。
無謀かと思われた超望遠ズームでのスナップ撮影。移動中はその重さから弱音もでましたが、撮影した画像を改めて見返してみるとその労力に見合った素晴らしい写りを堪能することができました。その画像を大きなPCの画面で確認すれば、驚きと感動で撮影時の疲れなど吹き飛んでしまいます。
そもそも、本レンズはハードな環境にも耐えうるマグネシウム合金製のプロフェッショナルレンズ。180-400mmという焦点距離に、テレコンバーターを内蔵しての3500gはむしろ軽量なのかもしれません。 大きな望遠レンズの中身は十分すぎるほどの高性能が詰まっていました。
数々の進化や新機能が体験できた本レンズですが、筆者が一番感動したのがテレコンバーター機能です。これまで鉄道や飛行機の撮影に出掛けた際、現地でもう少し寄れたらと思うことが度々ありました。とは言え、もう1本レンズを持ち出す余力や、撮影中にレンズを交換する手際の良さもなく消化不良の撮影を続けていたのです。本レンズはそんなモヤモヤをまとめて解決してくれます。高価なレンズですが、素直に欲しいと思えるレンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff
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