以前は、85mm以外の明るい中望遠・望遠単焦点レンズがあったのだが、大口径ズームレンズの登場で特殊効果レンズ以外姿を消している。中望遠・望遠の単焦点レンズはキレの良さや単体の軽さが魅力であっただけに残念だ。
今回とりあげるサムヤンの「135mm F2.0 ED UMC」はF2.0というフルサイズデジタル一眼のズームレンズにはない明るさをもつ大口径レンズだ。重さは800g前半で大口径ズームレンズより遙かに軽く、一日使っていても疲れることはないだろう。
135mmという焦点距離は望遠レンズとしては短く、用途的に”使いづらい焦点距離”と考えられがちだ。ところが200mmや300mmのような限定的な用途がある望遠レンズより応用範囲が広いレンズなのである。
広角レンズ的な使い方にF2.0という浅い被写界深度を組み合わせることで、広い風景を写し込みながらピント位置で意図するモノを描くことができるのだ。135mm F2.0 ED UMCを使うことで、ミニチュアフォトのような世界にしっかりと太陽の光の加減も閉じ込めることができた。
近距離でのピント合わせは浅い被写界深度ゆえにシビアだが、ファインダーでしっかりと確認できるので被写体を追いながらしっかりとピント合わせをすることができた。
ほんの数cmで大きくぼけるため、水のつぶを立体的にとらえることができた。絞り開放時のこのヌケの良さが素晴らしいと感じた。
驚きの絞り開放時の描写性能だが、絞り込むとさらに鮮鋭感が増す。細かい壁面や木々、電線、写真に詰まった情報が洪水となって押し寄せてくるようだ。肉眼ではここまで細かい部分までみることができないことから、あらためてレンズとデジタル一眼の解像度に驚いた。
最短撮影距離は80cmで85mmレンズよりは大きく被写体を切り取ることができる。ちょっとしたマクロ撮影もこなせる。引いて良し、寄って良しの良い塩梅の焦点距離だ。
絞り開放時は現代的な解像感の高さとコントラストの高さをもつが、一方で周辺は大きく減光する。これをどう感じるかだが、筆者は非常に好意的に受け止めた。なぜなら独特の光学的な効果として、撮影するたびにハッと驚かされるからだ。
近接撮影時には、ファインダーで被写体を大きく捉えることができるためピント合わせがしやすいと感じた。ピントリングはしっとりとした重さがあり微妙に調整できるのが良い。
スナップ撮影は広角レンズで写真ならではの世界を構築することができるが、135mmという焦点距離で景色を切り取るというのもまた楽しい。
サムヤンの「135mm F2.0 ED UMC」はF2.0という数少ない明るい望遠単焦点レンズだ。望遠レンズでありがながらスナップ撮影にも使える絶妙な焦点距離であることがその特徴であるとも言える。
このF2.0という浅い被写界深度は、スナップ撮影に明確な意図を埋め込むことができる。さらに絞り開放時の周辺減光もアクセントとして使っていける。もちろん絞って正確無比に世界を切り取ることもできる、実に頼もしいレンズだ。
荷物を多くしたくないときは、このレンズと広角撮影用のコンパクトデジカメがあれば十分であると手応えを感じた。135mm F2.0 ED UMCは撮影結果に満足いける結果をもたらしたが、それ以上に絞り開放時の描写に毎回ワクワクさせられた。写真好きにオススメしたいレンズだ。
Photo by MAP CAMERA Staff