昨年11月、幕張メッセで行われた国際放送機器展『Inter BEE 2015』へ取材に訪れた際、サイトロンジャパンブースで見つけた「LAOWA」レンズに触れたことを覚えていらっしゃいますでしょうか?
その内の1本『LAOWA 60mm F2.8 Ultra-Macro』がKasyapaチームに届きました。外観は少し地味なデザインですが、接写能力に優れた本レンズは等倍から2倍のマクロ撮影が可能になっています。カタログを見るとAPS-C用と記載されていますが、マクロ撮影時はフルサイズ機でも使用可能との事なので、より大きなボケ味を求めボディは「Nikon D5」チョイスして撮影に出掛けてきました。
独特なピントリングは、最短指標の0.185mに合わせると1.5倍のマクロ撮影に。さらに奥に回す事で2倍のマクロ撮影にシフトします。
まずは1.5倍の位置に合わせて花の中を覗いていみました。レンズ自体の長さが約10cmありますので、前玉から4~5cmで合焦します。花弁に触れないよう注意しながら撮影すると、花粉まで見える見事なクローズアップの世界が楽しめました。大きなボケも綺麗です。花弁の模様もうっすらと残っており、フワトロの優しい描写となりました。
少し下がって花全体を捉えます。被写体までは約50cm程。APS-C用レンズのため少しケラが生じるかと思いましたが、若干の周辺減光を感じる程度に収まりました。花びらの質感も上手に捉えています。
さらにシビアな2倍マクロの世界に挑戦です。ご覧の通りピント面はとても薄く、屋外で風に揺れる花を撮影するのに少々苦戦しましたが、蕾の薄ピンク色がとても上品に写りました。
2倍で捉えた花の蕊は1.5倍の時よりさらに迫力を増します。見えすぎて逆に怖い印象も。
ピント調整で最短に達した後、ズームでもう1段拡大するような独特な動きは、ファインダー内でも迫力満点。マクロの世界を十分に味わうことができました。
マクロ撮影を堪能した後は、少し引きの画も試してみました。
F5.6位でも少し周辺光量減が感じられますが、フルサイズでも4隅までしっかり描写しいているのが分かります。
少しオールドレンズぽい雰囲気の描写感もありますが、噴水の水しぶきも綺麗に捉えました。初夏の眩しい日差しの様子も伝わり、中望遠レンズとしても上々の解像力と言えましょう。
カメラの高い解像力のおかげで、質感描写は驚くばかりです。
水面い浮かぶ薔薇の花弁も遠目にはゴミのようにも見えますが、ギリギリまで寄ることで、しっとりとした質感や水の光沢が際立ち鮮やかな画になりました。
自宅の金魚水槽では光量が足りず、LEDライトと高感度に頼ることになりましたが、水に靡く薄い尾びれの様子を綺麗に捉えることができました。梅雨の季節は、室内でも楽しめるマクロレンズは重宝することでしょう。
ピント面の薄いマニュアルレンズはピント合わせに少々難儀しますが、重めで遊びの少ないピントリングは、狙った場所でしっかり止まります。すばしこく泳ぐメダカも餌にピントを合わせておけばご覧の通り。水面ギギギリで約1.5倍の撮影に成功です。
無限遠でのF2.8撮影でも4隅までしっかり捉えているのが分かります。
シーンによって若干周辺光量が落ちるようですが、今回の撮影ではフルサイズ機でも問題なく使えるイメージを持ちました。
大きなボケも楽しめますから、フルサイズ機でもどんどん使っていきたいレンズです。
逆光時にはかなり強いフレアが発生しましたが、効果としては面白さを感じました。
本レンズはピントを無限寄りに動かすことで前玉が鏡筒の中に沈んでいく構造になっており、ピント位置によっては鏡筒自体がフードのような働きをします。足りない部分はハレ切りなどをしながら撮ると新たな発見があるかもしれません。
無限遠での逆光では鏡筒フードのおかげで、フレアも軽減。霧のかかったような効果と2個になった太陽で面白い画になりました。マクロ撮影以外の楽しみもある奥の深そうなレンズです。
Nikon D5に装着するとアンバランスなデザインですが、金属製の410gのレンズはしっかりした作りで耐久性は高そうです。
何でD5と思われるかもしれませんが、ピント面が薄くよりシビアなピント操作が必要だっただけに、ファインダーの明るいD5は逆に正解だったかもしれません。明るいファインダー又はライブビュー拡大が必要です。
少し癖のあるレンズですが、2倍マクロに加え14枚の絞り羽根を採用するなど、スペック的には魅力溢れるレンズ、ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff